研究課題/領域番号 |
22H00192
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分19:流体工学、熱工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
黒瀬 良一 京都大学, 工学研究科, 教授 (70371622)
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研究分担者 |
PILLAI ABHISHEKLAKSHMAN 京都大学, 工学研究科, 助教 (90887332)
庄司 烈 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (20833172)
立花 繁 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 上席研究開発員 (50358496)
横森 剛 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (90453539)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,030千円 (直接経費: 33,100千円、間接経費: 9,930千円)
2024年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2023年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
2022年度: 20,930千円 (直接経費: 16,100千円、間接経費: 4,830千円)
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キーワード | 不安定燃焼 / 水素 / AI検知 / 計測 / 数値シミュレーション / 水素燃焼 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,化石エネルギーからカーボンフリーエネルギーへの大転換が避けられない喫緊の課題となっている.水素は,その燃焼過程において二酸化炭素を全く排出しない究極のカーボンフリー燃料として,様々な燃焼装置への利用が期待されている.しかし,水素の希薄燃焼は,装置損傷の原因となる不安定燃焼を引き起こすリスクがある.そこで,本研究では,不安定燃焼として特に問題視されている燃焼振動とフラッシュバックに着目し,精巧な実験と高精度の数値解析により,これらの発生メカニズムと詳細特性を明らかにする.また,不安定燃焼の事前察知・抑制を目指し,不安定燃焼が発生する予兆の検知をAIとの連携により実現する技術を構築する.
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研究実績の概要 |
(1) 実験:(Ⅰ)単管燃焼器:フラッシュバックの計測が可能な弱旋回燃焼器及びシステムを設計し,安全装置として,光センサーによる逆火検知と燃料供給自動停止機構,フレームアレスター,ラプチャーディスクを採用した.また,燃焼器出口から上流側の金属壁を石英ガラス管に変更し,フラッシュバック発生時の燃焼器内部における火炎と流速場の挙動の可視化を可能とした.以上の機能を持つ燃焼器を製作し,予備試験としてフラッシュバック発生前後における燃焼器内変動圧,OH*自発光画像,流速場(PIV)の高時間分解能同時計測を実施した.その結果,バルク流速15m/sの水素-空気希薄予混合火炎について,当量比約0.63でフラッシュバックが発生することを確認し,燃焼器の安全装置が正常に働くことを確認した.また,上記3点の計測項目についても,問題なく計測ができることを確認した.(Ⅱ)アニュラ燃焼器:バルク流速5m/s,当量比0.4,燃焼器内壁高さ150~335mm(内壁外径140mm),外壁高さ250~400mm(外壁内径250mm)の試験条件において水素燃料を用いた希薄予混合燃焼試験を実施し,燃焼器内変動圧,OH*自発光画像,流速場(PIV),燃焼器外側の音圧レベル(SPL)の計測を行った.計測の結果,内壁高さ220mm,外壁高さ350mmの条件において,周波数約1300Hz,片側振幅約15~20Paの燃焼器周方向モードの圧力変動を確認した.また,OH*自発光画像とPIV計測の結果から,隣接する火炎の干渉が強く発生していることが明らかとなった. (2)数値計算:実験で設計された単缶燃焼器およびアニュラ燃焼器を対象に,メッシュ作成,および試計算を行った.この結果,単管燃焼器およびアニュラ燃焼器内の乱流燃焼場をインハウスの直交座標系コードFK3を用いたLESにより概ね再現可能であることを確認した.また,水素燃焼に顕著となる選択拡散の効果を考慮可能なフレームレット法を確立し,その有効性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アニュラ燃焼実験に関してはより強い圧力変動が起こる条件を探す必要があるものの,単管燃焼実験,アニュラ燃焼実験ともに,実験装置の基本設計および試行実験は終えており,順調に進んでいる.また,数値計算についても,まだ定量的な比較にまでは至っていないが,定性的には単管燃焼器内のフラッシュバック,アニュラ燃焼器内の火炎の干渉を再現可能であることを確認しており,滞りなく進展している.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 実験:(Ⅰ)単管燃焼器:2022年度に構築した燃焼器を使用し,バルク流速10~25m/sの流速範囲においてフラッシュバック発生前後における①燃焼器内変動圧,②OH*自発光画像,③流速場(PIV)の高時間分解能同時計測を行うことにより,フラッシュバック発生時の燃焼器内部における圧力変動及び火炎と流速場の挙動を詳細に調べる.また,実験を通じて装置の修正点を抽出し,要すれば2024年度に向けた装置の改修を行う.(Ⅱ)アニュラ燃焼器:バルク流速4~8m/s程度,当量比0.25~0.4程度,燃焼器内壁高さ150~335mm(内壁外径140mm),外壁高さ250~400mm(外壁内径250mm)の2022年度と比較してさらに幅広い試験条件において燃焼試験を実施し,より強い圧力変動が発生する条件を調べる.強い圧力変動が発生する条件に特に焦点をあてて①燃焼器内変動圧,②OH*自発光画像,③流速場(PIV),④燃焼器外側の音圧レベル(SPL)の高時間分解能同時計測を行う.これにより,燃焼器内の発熱率,圧力,流速変動と同時に,燃焼器から外部へ放出される騒音レベルを高時間分解で取得する.また,2024年度に向けた装置の改修も実施する. (2) 数値計算:上記の実験と同じ条件で単管燃焼器およびアニュラ燃焼器内乱流燃焼場のLESを実施する.また,LES結果と計測結果との定量的な比較を行い,LESの精度検証を行うとともに,単管燃焼器内のフラッシュバック,およびアニュラ燃焼器内の火炎の干渉に関するダイナミクスを詳しく調べる.さらに,単管燃焼器内で起こるフラッシュバックおよび燃焼振動の機械学習(AI)による検知の可能性について検討を開始する.
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