研究課題/領域番号 |
22H00200
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平田 拓 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (60250958)
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研究分担者 |
安井 博宣 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (10570228)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
2023年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 電子スピン共鳴 / 腫瘍 / 酸素分圧 / 細胞外pH / イメージング / スペクトル / 可視化 / pH / 細胞外酸性化 / 電子スピン |
研究開始時の研究の概要 |
固形腫瘍において、低酸素状態による治療効果の低下と細胞外酸性化によるがんの進行や転移を克服することが、がん治療の大きな課題となっている。これらのことから、悪性腫瘍において酸素が供給されている状態と細胞外酸性化を定量的に可視化することができれば、腫瘍の悪性度の評価や、抗がん剤や放射線照射に対する治療効果の早期予測が実現できる。酸素分圧と細胞外酸性化(pH)の可視化技術を飛躍的に向上させるために、電子スピンによるセンシングの共通技術である四次元スペクトル空間イメージング法の空間分解能を格段に向上すると共に、悪性腫瘍の治療効果を予測する数理モデルを開発する。
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研究実績の概要 |
2023年度に取り組んだ項目毎に研究実績を説明する。 (1) 酸素分圧イメージングとpHイメージングの計測精度向上に取り組んだ。この課題の本質は、各ボクセルにおける電子スピン共鳴分光スペクトルを如何に正確に再構成できるかである。これまでに、4次元データの代数的逐次近似再構成(ART)の計算コードを改良し、数値ファントムによる数値実験および水溶液サンプルによる実データの4次元画像再構成により、再構成の精度を評価した。 (2) 酸素分圧とpHの画像をMRIによる腫瘍組織の画像と重ね合わせることを目指した。酸素分圧とpH画像の前に、電子スピン共鳴画像とMRIによる形態画像の重ね合わせが実現できれば、酸素分圧とpH画像の重ね合わせは容易である。位置合わせマーカーを用いる方法により、独立に得られる電子スピン共鳴画像とMRIによる形態画像の重ね合わせを行う計算コードを改良した。また、腫瘍モデルマウスの後肢に作製した腫瘍の形状を変えずに電子スピン共鳴イメージング装置とプロトンMRI装置とで測定できるような共通ジグを作製した。 (3) マルチハーモニック検波法を用いて分光装置の高感度化を実現した。スペクトルの吸収線幅を超える大きな磁場変調と高次の高調波信号を受信するマルチハーモニック検波法を構築していたものの、磁場変調の振幅が吸収線幅の2倍を超える状態で正確なスペクトル再構成ができなかった課題を克服した。 (4) 酸素分圧とpHのイメージングにおいて空間分解能の改善を目指した。具体的には、ART法による画像再構成の空間分解能を制限しているパラメータを検討し、改善法を模索した。3次元の水溶液サンプルを用いて、空間分解能の評価を行なった。1 mmの空間分解能に達したが、4次元スペクトル空間イメージングでの空間分解能については、今後の考察が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、主に4つの課題に取り組んだ。上記の研究実績でも述べたが、(i) 計測精度向上、(ii) 電子スピン共鳴画像とMRIによる形態画像の重ね合わせ、(iii) マルチハーモニック検波法を用いて分光装置の高感度化、(iv) 酸素分圧とpHのイメージングにおいて空間分解能の改善に取り組んだ。(i) 計測精度向上の向上については、一次微分吸収スペクトルの線幅の評価を行ない、4次元画像再構成の精度を改善した。(ii) 電子スピン共鳴画像とMRIによる形態画像の重ね合わせについては、概ね、正確な重ね合わせができる目処が立った。(iii) マルチハーモニック検波法を用いて分光装置の高感度化については、感度向上を妨げる原因を特定できたことから、これまでよりも大きな磁場変調振幅に印加を可能にした。(iv) 酸素分圧とpHのイメージングにおいて空間分解能の改善ついては、信号強度の3次元マッピングについては、空間分解能を1mmに改善した。酸素分圧やpHの可視化に必要な4次元マッピングについては、空間分解能の評価を行なっているが、改善にはさらなる検討が必要である。 これらの状況から、各項目において前進しており、一部の定量的目標は達成されていないが全体として「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
3年目となる2024年度は、(1)酸素分圧およびpHイメージングの空間分解能向上に注力する。また、(2)前年度までの研究で、電子スピンによる酸素分圧とpHイメージング、プロトンMRIによる形態画像とのマルチモーダルイメージングの目処が立ったことから、画像重ね合わせの手法を実用的なものに改良する。合わせて、(3)腫瘍モデルマウスによるマルチモーダルイメージングの実証試験を行う。 これらの目標を実現するために、次の課題に取り組む。(1)4次元スペクトル空間イメージングの空間分解能を評価するとともに、空間分解能を向上させるために計測パラメータの最適化を行う。空間分解能の評価は、数値ファントムによる計算実験と、水溶液サンプルによる実験的評価の二つのアプローチを採用する。(2)酸素分圧、pH、形態画像の画像重ね合わせを簡便に行うマルチモーダルイメージングのソフトウエア開発を進める。これまでも位置合わせマーカーを用いた電子スピン共鳴画像とプロトンMRIの重ね合わせを実現しているが、三種類の画像を自動的に重ね合わせる実用的な試験は行われていない。水溶液サンプルによる試験を行ったのち、腫瘍モデルマウスの場合でも簡便に画像の重ね合わせを行えるか検証する。(3)腫瘍モデルマウスにおけるマルチモーダルイメージングの実証試験を進め、腫瘍に放射線照射や薬剤を投与した場合について、複合的なパラメータ(酸素分圧、細胞外pH)の変化が可視化できるのか実験を進める。
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