研究課題/領域番号 |
22H00211
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 達也 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50235967)
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研究分担者 |
三輪 和久 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90219832)
奥田 裕之 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90456690)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,080千円 (直接経費: 31,600千円、間接経費: 9,480千円)
2024年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2023年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2022年度: 18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
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キーワード | 移動知能 / 歩車共存空間 / モデル予測制御 / 人間行動モデル / 判断エントロピー / スモールモビリティ / インタラクション |
研究開始時の研究の概要 |
歩車共存空間という近未来の交通空間で周辺歩行者に配慮しつつ、所定の移動目的を達成する知能を、ここでは「合意形成型の移動知能」と定め、その設計・実装はどうあるべきかを明らかにする。そのため、合意形成型の移動知能のためのアーキテクチャを、認知科学的知見を制御工学的方法論へと還元する視座から新たに創出し、実装する。具体的には、(a)歩行者の(判断)モデルの構築とオンライン学習、(b)判断エントロピー最小化による移動知能アーキテクチャの創出、(c)歩行者の高精度な属性検出と気づきの推定、(d)認知科学的仮説構築とメンタルモデルによる検証、(e)各成果の統合実装と検証の各研究項目に取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究では、学術的問いとして定めた合意形成型の移動知能のためのアーキテクチャを、認知科学的知見を制御工学的方法論へと還元する視座から新たに創出し、それを支える卓越した要素技術群を開発することをめざした。2023年度は2022年度に引き続き、以下の項目に取り組んだ。 (a)歩行者の(判断)モデルの構築とオンライン学習(鈴木): 判断モデル、すなわち離散状態に確率測度を埋め込むことによって、判断のあいまいさを定量的に表現するモデルへと拡張した。さらには、複数の歩行者に適用可能となるよう拡張した。 (b)判断エントロピー最小化による移動知能アーキテクチャの創出(鈴木・三輪):「他者が持つ判断のあいまいさ(エントロピー)」を最小化するよう自己の行動を決定することこそが配慮(利他的行動)であり、他者との迅速な合意形成につながる、との認知科学的着想のもと、評価関数に判断のエントロピーを組み込んだモデル予測制御を構築した。結果をプロトタイプ機に実装し、基本的な合意形成能力を確認した。 (c)歩行者の高精度な属性検出と気づきの推定(出口):画像認識とその系列情報に基づく詳細な歩行者属性検出とそれを活用した周辺歩行者の気づきの推定を行った。 (d)認知科学的仮説構築とメンタルモデルによる検証(三輪):利他的行動と利己的行動の融合という認知科学的にも挑戦的な視座から合意形成に対する新たな仮説構築を試みた。仮説構築のため、マルチプレーヤー型の歩車共存空間シミュレータを開発して、歩行者と移動体が共存する典型的な交通環境を仮想的に再現し、行動データを取得した。さらには、認知科学における人間のメンタルモデル(対象についての脳内モデル)測定の概念を具現化して、判断エントロピー最小化に基づく合意形成型移動知能の「歩行者にとっての受容性」を定量的に評価した。 上記の各項目に対し、おおむね所定の成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初立てた4項目のうち、6割程度は達成したと考えている。特に「(a)判断モデルの構築」においては、判断モデル、すなわち離散状態に確率測度を埋め込むことによって、判断のあいまいさを定量的に表現するモデルへと拡張し、加えて、複数歩行者への拡張を実現した。さらには、ベイジアンネットワークを用いることで視線情報(認知情報)を付加したモデルへと拡張する足掛かりを得た。この成果は国際会議でも高く評価され、Best paper Award Finalist に選出された。また、研究分担者の三輪との間の協議も順調に進み、当初提案した判断エントロピーに加え、妨害度指標と呼ばれる新たな認知量を見出し、歩車間のインタラクションにおいて重要な役割を果たすことを確認した。これらの成果に加え、出口らによる気づき推定と統合した実時間のモデル予測制御を実装するためのアーキテクチャの検討も順調に進んでいる。現在はプロトタイプ機を用いた検証実験に取り組んでいるが、5名程度の歩行者とインタラクションする状況下においても他者と合意形成をとりながら行動できるスモールモビリティを実現している。これらを総合的に勘案して「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初掲げた4項目のうち、特に項目(d)「認知科学的仮説構築とメンタルモデルによる検証」に力を入れる。利他的行動と利己的行動の融合という認知科学的にも挑戦的な視座から合意形成に対する判断エントロピー最小化を拡張した新たな仮説構築を試みる。仮説構築のため、マルチプレーヤー型の歩車共存空間シミュレータを開発して、歩行者と移動体が共存する典型的な交通環境を仮想的に再現し、行動データを取得する。さらには、認知科学における人間のメンタルモデル(対象についての脳内モデル)測定の概念を具現化して、判断エントロピー最小化に基づく合意形成型移動知能の「歩行者にとっての受容性」を定量的に評価する。 また、(a)(b)(c)の各成果の統合実装と検証にも力を入れる。特に計算量と制御性能のトレードオフについて定量的な議論を深堀りする。さらには、並行して様々な歩行環境を想定して本研究で提案する移動知能アーキテクチャを実装したスモールモビリティの有用性を検証する。現時点では学内での走行実験を想定しているが、可能ならば学内に留まらず、将来的には病院やショッピングモールでの検証実験を行っていく予定である。そのために近々、企業との協議を始め、連携して社会実装を目指す。結果として、この分野における研究開発をアカデミアの立場から先導する。
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