研究課題/領域番号 |
22H00213
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
天野 浩 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60202694)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,340千円 (直接経費: 31,800千円、間接経費: 9,540千円)
2024年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2023年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2022年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | GaN / IMPATT / 高周波デバイス / IMPATT格子 / テラヘルツ波 / アバランシェ / マイクロ波 / ハイパワー電磁波源 / Hi-Lo型 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代通信環境において、人と超高速光通信網をつなぐラストワンメーターの無線通信用基幹デバイスとして、GaNを用いたアバランシェ降伏衝突イオン化走行時間(Impact Ionization Avalanche Transit Time: IMPATT)ダイオードの二次元格子であるIMPATT格子構造により、1 Wを超えるパワーで、かつ20 GHzを超える可変周波数帯域を有する基本波1~10 テラヘルツ(THz)コヒーレント発振デバイス実現の可能性を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では6G次世代無線通信用システムのための高周波発振デバイス技術の構築を最終目標とし、製造技術の確立しているGaNのアバランシェ降伏衝突イオン化走行時間(Impact Ionization Avalanche Transit Time: IMPATT)ダイオードを用いて、その高い発振出力と発振周波数のコヒーレンシーを両立するため、光半導体技術であるフォトニック結晶の知見を活かし、二次元格子による共振現象を利用して複数のIMPATTの発振周波数と位相を固定化するための理論構築、およびその理論に基づいた設計及び試作を行う。理論ではIMPATT内およびその周りの空間の詳細な電磁界解析をもとに共振Q値の高い配置を明らかにし、その成果をもとにして専用の電磁界・デバイス設計シミュレータを構築する。実験ではこれまで培った世界唯一のGaNのIMPATT作製技術を基礎として、個々のIMPATT構造を最適化するとともに、GaNナノロッドアレイ形成プロセス技術を融合することにより、最終的にはTHz波長である30~300ミクロンの格子定数のIMPATT格子を形成し評価する。実際の動作では、IMPATTはアバランシェを起こすための高い逆方向電圧および大電流で駆動するため、IMPATT格子では放熱技術が最も重要になる。従来技術では基板の裏にダイヤモンドなど熱伝導率の大きい材料を接合するが、加えてIMPATT格子上にもダイヤモンド薄膜を形成して、上下両面からの放熱構造も検討する。2022年度は、個々のIMPATTダイオードについて、現状のGaNのIMPATTの課題である効率の低さを改善するために、低電圧でアバランシェを起こす箇所Hi層と走行する箇所Lo層を分けるHi-Lo型構造を検討した。設計に基づき作製したところ、従来型の3倍の効率を実現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年の10GHz帯でのIMPATT発振以来出力向上に取り組み、500 Wを超える直流入力電力が実現できたが、直流から交流への変換効率は1%以下であった。ダイオードの負性コンダクタンスが極大に到達する前に過大な入力電力による熱的破壊が観測されていた。そこで今年度は動作電圧を抑えつつ、小電流域での効率改善が見込まれるHi-Lo型構造について検討した。設計は、動作周波数15 GHz、降伏電圧350 V以下のHi-Lo型、Lo層の膜厚はGaNの電子飽和速度と動作周波数から3.7 ミクロンとした。変換効率は降伏電圧 (Vb) に対してアバランシェ領域での電圧降下 (Va) が小さく (Vb-Va)/Vbが高いほどよい。したがってHi層はなるべく高濃度、薄膜で構成する必要があるが、トンネル電流によるリーク電流が発生するため、Hi層のドナー濃度を2×1017 cm-3とし、電流密度の上限を1×10-5 A/cm2に抑えた。次に、Hi層の膜厚及びLo層のドナー濃度に対する変換効率である (Vb-Va)/Vbの振る舞いを計算した結果、Hi層の膜厚を0.6 ~ 0.9ミクロンとすることによって、広いLo層ドナー濃度の範囲で従来型を上回る効率を示す事が分かった。動作電圧を350 V以下とするとHi層厚=0.8ミクロン,Lo層ドナー濃度 2×10^16 cm^-3となり、約1.5倍の効率改善が見込まれる。この設計の基づきHi-Lo型GaN IMPATTダイオードを作製し、このダイオードをピーク電流400 mA、動作電圧395 Vで動作させたところ、14.7 GHzで明瞭な発振が得られ、その出力は29.1 dBmであった。従来のダイオードと比較すると、30 dBm (1 W) 程度の出力を得るのに必要な入力電力が約1/3に低減されており、低入力域での発振効率が大幅に改善された。
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今後の研究の推進方策 |
最終目標であるミリ波~THz波のIMPATTについては、現状その周波数帯の評価システムが研究室内で整っていないため、2023年度は2022年度に作製したGaNによるHi-Lo型マイクロ波用IMPATTを格子状に配置し、複数のIMPATTによる高出力化および位相整合の可能性を検討する。複数のIMPATTがお互いに放射する電磁波の届く範囲内に存在するとき、IMAPTTダイオード自身がアンテナとしても機能し、それぞれの発振特性が影響を受けて周波数および位相が揃うかどうかの検討が必要である。電磁界解析ソフトを用いて、電磁波輻射を受けた際のIMPATTダイオード内部の電磁界解析を行い、その結果をもとに高周波デバイスシミュレータを用いて、IMPATT特性のシミュレーションを行う。通常IMPATTは、アバランシェ降伏直前の逆バイアス電圧を印加し、そこに微小高周波信号を重畳させることによって発振させる。その際、アバランシェ降伏によって電子正孔対が生成し、電子と正孔が走行する際、衝突イオン化によって増倍し、電子がドリフト層を走行することにより、デバイスから高周波電磁波が放射される。周波数は、おおよそドリフト層の厚さと電子の飽和速度によって決まる。電気回路的な高周波信号に代わって外部からの電磁波によってアバランシェ降伏が制御できれば、それぞれのIMPATTの発振周波数および位相が揃って、周波数雑音および位相雑音が大幅に低減する可能性がある。シミュレーションでは、外部からの電磁界強度とアバランシェ特性の関係を詳細に検討する。その後、各IMPATTの格子位置と電磁波特性の関係を詳細に検討して、周波数と位相が揃い、かつマイクロ波強度が増大する格子が存在するかどうか、可能性を検討する。
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