研究課題/領域番号 |
22H00221
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松下 拓 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30283401)
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研究分担者 |
白崎 伸隆 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60604692)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2024年度: 14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2023年度: 14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2022年度: 12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
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キーワード | 土木環境システム / ウイルス / 浄水処理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、外来DNAを封入したウイルス外套タンパク粒子を創造し、室内浄水処理実験に適用することにより、極めて高感度にウイルスの浄水処理性を評価する方法を構築する。この評価系を用い、「培養困難」なためこれまで浄水処理性が評価できなかったノロウイルスに代表される水系ヒト感染性ウイルスの浄水処理性を、実浄水場におけるフィールド調査と室内実験を組み合わせることにより明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、PCR法にて高感度で定量可能な「外来DNAを封入したノロウイルスの外套タンパク粒子(VLPs)」を、あらかじめ作製したVLPsを還元剤の添加によりいったん崩壊させた後、外来DNA共存下での塩化カルシウムの添加によりVLPsを再合成させることにより外来DNAをVLPsに封入し、作製しようと試みてきた。しかしながら、昨年度での検討では外来DNAの封入率が著しく低く、このようなDNA封入VLPsを用いても、計画当初の目標であった「低濃度ノロウイルスの浄水処理性の評価」が困難であると判断された。そこで本年度は、既にVLPsへ封入が高い率にて成功している金ナノ粒子に、あらかじめ外来DNAを修飾し、金ナノ粒子とともにVLPsへ封入する手法を試みた。しかしながら、電子顕微鏡の観察では、明確な封入が確認されなかった。これに対し、カルボキシ-EG6-ウンデカンチオールを用いたコーティング処理を金ナノ粒子に施すと、DNA修飾をしていない金ナノ粒子の封入率が大幅に向上することが分かった。今後、コーティング処理を施したDNA金ナノ粒子複合体を用いて、VLPsへの外来DN A封入を試みる予定である。 一方、浄水処理方式を、通常の浄水処理で行われる凝集-沈澱-砂ろ過処理から、凝集-MF膜処理へと変更した、札幌近郊の2つの浄水場にて、トウガラシ微斑ウイルス(PMMoV)の浄水処理工程における除去率をそれぞれ複数回調査し、変更前の除去率と比較したところ、A浄水場では、通常処理で1.5~3.3 log、膜処理では2.2.~2.9 logであり、B浄水場では、通常処理で3.2~4.7 log、膜処理では2.8~4.4 logであった。すなわち、凝集-MF膜処理でのPMMoVの除去率は、凝集-沈澱-砂ろ過処理での除去率と概ね同程度であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の検討にて、金ナノ粒子に外来DNAを複数本修飾することができることを確認した(5~11 copies/VLPs)。従って、これをVLPsに封入することにより、1つのVLPsに複数のDNAが封入可能であり、VLPsのPCRによる定量感度を大きく向上できる可能性が示され、次年度へ繋がる成果を出すことができた。 また、「浄水場でのPMMoV調査」についても継続してデータを蓄積しており、処理方法を「凝集-沈澱-砂ろ過処理」から「凝集-MF膜処理」へと更新した2つの浄水場でのデータを取ることができた。これにより、同一の水系にて処理法の違いがウイルス除去率に与える影響を議論することができる。 以上より、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
DNA封入VLPsの作製に関しては、DNAを修飾した金ナノ粒子にコーティング処理を施すことにより(既にDNAを修飾していない金ナノ粒子のコーティングにより、VLPsへの封入率が向上することを実験的に確認している)、DNAの封入率を大幅に高め、室内浄水処理実験を行いたい。 一方、実浄水場におけるPMMoVの処理性調査に関しては、季節変動や経年変化を調べるため、近郊浄水場での調査を継続するとともに、他地域の浄水場における調査も継続して行いたいと考えている。また、PMMoV以外に、水系ヒト感染性ウイルスについても知見の集積を試みたい。
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