研究課題/領域番号 |
22H00227
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
勝見 武 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (60233764)
|
研究分担者 |
遠藤 和人 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島地域協働研究拠点, 室長 (10353533)
肴倉 宏史 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環領域, 室長 (70331973)
乾 徹 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (90324706)
保高 徹生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (60610417)
高井 敦史 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30598347)
加藤 智大 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (80943612)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2024年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2022年度: 12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
|
キーワード | 自然由来重金属等 / 発生土 / 吸着層工法 / 溶出試験 / 低濃度汚染土 |
研究開始時の研究の概要 |
大規模建設事業に伴い、自然的原因で重金属等を含む低濃度汚染土が大量に発生している。資源の有効利用に向けて、これらの土を道路盛土などの一定の管理下で活用することが期待される。そのためには、溶出する汚染物質の挙動を的確に精度良く把握しつつ、その下部に設ける吸着層等の有効性を明らかにし、盛土の設計基準を確立する必要があり。本研究では、バッチ式とカラム式の溶出試験によって低濃度汚染土の溶出特性を詳らかにし、実環境で生じうる様々な性能阻害要因の影響を明らかにすることで盛土設計基準を確立する。さらに、激甚災害にも対応しうる強靭性や社会受容性を考慮した、掘削土を適正活用するためのマネジメント方法を提示する。
|
研究実績の概要 |
2023年度は計画した3つのサブテーマについて、以下のような検討を行った。サブテーマ(1)「土構造物中での重金属等の挙動の解明」では、溶出特性の予測に向けた物質移行モデルの確立を試みた。具体的には、地盤内での物質移動を表現するモデルとして、吸脱着平衡と固相内拡散を接続したモデルを提案し実験的に検討した。2種類の土試料と対象物質であるヒ素を用いて、瞬時平衡を仮定した分配係数と、溶液を繰り返し交換したシリアルバッチ試験から固相内拡散係数を取得して物質移行モデルに入力した結果、溶液のヒ素濃度の経時変化を相対誤差77%以下で再現できたことが主要な成果である。並行して、自然由来重金属等の溶出特性のデータベース化に向け、バッチ・カラム溶出試験結果の蓄積を進めた。 サブテーマ(2)「環境安全性と構造安定性を考慮した盛土設計基準の確立」では、自然由来重金属等の対策工として人工的に設けられる吸着層の性能を、環境化学と地盤工学の観点から評価した。2年目は1年目から引き続き土と吸着材を混合したカラム吸着試験を行い、通水溶液に競合するイオンの存在が重金属等の吸着性能に及ぼす影響を明らかにした。また新たに、吸着性能を有する不織布を低濃度汚染土の下部に施工する対策技術も研究し、薄いシート材の上部から上載荷重が与えられた条件下であっても、吸着性能は極端には低下しないことを示したことが重要な成果の一つである。さらに、吸着層工法の他に地盤汚染対策工として考えられる、粘性土を用いた遮水工の性能評価も進められた。 サブテーマ(3)「強靭性/生産性/社会受容性のコンテクストを踏まえた掘削土のマネジメント手法の提案」では、吸着層に用いられる吸着材の性能評価手法の標準化に向けた検討を継続して実施した。具体的には、バッチまたはカラム吸着試験の精度評価試験を実施し、再現性の高い試験の確立を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は計画した3つのサブテーマについて、以下のような検討を行った。サブテーマ(1)では、土構造物中の重金属等の挙動評価について、室内の溶出実験と数値解析によって検討を進めた。具体的には、地盤内での物質移動のモデルを目指して、吸脱着平衡と固相内拡散を接続したモデルを提案して実験的に検証した。試料として珪砂とまさ土、汚染物質としてヒ素を用いて、瞬時平衡を仮定した分配係数と固相内拡散係数を取得してモデルに入力した結果、溶液のヒ素濃度の経時変化を相対誤差77%以下で再現できた。並行して、発生土や建設副産物の種類を広げて溶出試験を実施し、バッチ・カラム試験結果の蓄積を進めている。最終年度の自然由来重金属等の溶出特性データベース化に向けた準備が進められており、2年目の目標は十分達成されたといえる。 サブテーマ(2)では、自然由来重金属等の対策工として人工的に設けられる吸着層の性能を評価した。1年目から引き続き土と吸着材を混合したカラム吸着試験を行い、通水溶液に競合するイオンの存在が重金属等の吸着性能に及ぼす影響を明らかにした。加えて、吸着性能を有する不織布を低濃度汚染土の下部に施工する対策技術も研究し、薄いシート材の上部から上載荷重が与えられた条件下であっても、吸着性能は極端には低下しないことを示した。さらに、吸着層工法の他に地盤汚染対策工として考えられる、粘性土を用いた遮水工の性能評価も進められおり、計画通りの進捗が得られたと言える。 サブテーマ(3)では、吸着層に用いられる吸着材性能評価手法の標準化に向けた検討を実施した。具体的には、バッチまたはカラム吸着試験の精度評価試験を実施し、再現性の高い試験手法の確立を検討した。その結果、例えばカラム吸着試験では5%以下の変動係数が得られ、精度の高い試験を確立できた。以上,2年目の研究として十分な成果が得られたといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究計画で掲げた3つのサブテーマについて、今後の推進方策を記載する。1つ目のサブテーマでは、1年目に実施した土中の環境条件を考慮したバッチ式溶出試験に加え、散水条件下での中型カラム試験の実施を本格化させる。掘削土は一度盛土として供用されると長期間、降雨や乾湿繰り返しに曝露されるため、2年目に実施した固相内拡散の物質移動モデルと組み合わせることで、長期的な溶出挙動の評価を試みる。特に3年目は、環境化学に関わる因子として化学分析の際のろ過工程の影響、土構造に関わる因子では締固め度に着目し、重金属等の溶出特性評価を進める。最終的には溶出特性のデータベース化を目指していることから、pHや共存イオンなどの環境化学特性に加え、通水速度や含水状態といった土構造に関わる因子が有害物質の溶出特性に及ぼす影響の考察も継続し、4年目の研究に繋げる予定である。 2つめのサブテーマでは、地盤汚染対策工の強度変形特性評価と、吸着試験の精度評価を進める。汚染物質に対する遮水壁として用いられるソイルベントナイト混合土を対象にした研究では、セメントによる改質効果の評価を目的に三軸圧縮試験と透水試験を行い、材料の配合と強度変形特性の関係、透水性能の変化を明らかにする。また、吸着層の性能評価では土構造のパラメータに着目し、粒度、滞留時間、混合比率に加え、地盤の変状が吸着性能に与える影響を評価する。 3つめのサブテーマでは、低濃度で汚染物質を含有する掘削土活用シナリオの構築を進める。3年目は特に、低濃度汚染土を使用しうる盛土構造の実現に向け、吸着層工法の性能要件を整理する。
|