研究課題/領域番号 |
22H00243
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分24:航空宇宙工学、船舶海洋工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 直嗣 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (40380711)
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研究分担者 |
小菅 佑輔 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (00700296)
桑原 大介 中部大学, 理工学部, 准教授 (60645688)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
2024年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2023年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2022年度: 24,700千円 (直接経費: 19,000千円、間接経費: 5,700千円)
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キーワード | 異常輸送 / ホールスラスタ / プラズマ乱流 / プラズマ計測 / 原動機・推進 / 電気推進 |
研究開始時の研究の概要 |
オール電化衛星の成功により、宇宙の推進装置にも電気エネルギーを推進力に変換する電気推進を採用する流れが加速している。オール電化衛星の推進系には、推力電力比が大きいホールスラスタが有力候補であり、ホールスラスタ開発の鍵となるのが、推力電力比向上を阻害する電子の異常輸送の抑制である。この異常輸送を引き起こす要因として、プラズマ乱流の寄与を示唆する結果が得られた。しかしながら、このプラズマ乱流が「どのような」乱流で、「なぜ」異常輸送に寄与するのか、ブラックボックスのままである。そこで、本研究では、先に確立した計測技術を拡張し、揺動の時空間構造を計測して、プラズマ乱流の物理機構を解明する。
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研究実績の概要 |
これまでの成果をもとに、改良した揺動計測システムを用いて、新規に開発したレーストラック形状のホールスラスタ内部のプラズマ揺動の観察を行った。具体的には、数値解析の結果で得られた最適な形状のアンテナを3Dプリンタにより造形した、製作したアンテナの性能を評価するために、単体での作動実験を行い、数値解析通りの波数領域が計測可能であることを確認した。しかしながら、実実験に近い状況として、テフロン板をプラズマと見立ててホールスラスタ内部での空間分解能の確認を実施したところ、数値解析と比較して、劣る結果が得られた。しかしながら改良前よりも改善されていることが確認されたため、これを用いてレーストラック型ホールスラスタ内部の揺動計測を行い、揺動特性の取得に成功した。 数値解析においては、電場に起因する不安定性(イオン音波等)を中心にモデルの構築を進め、第一原理数値計算との比較を進め、成果としてまとめた。また、第一原理計算の改良を進め、これまでポスト処理で算出していた物理量の算出をリアルタイム処理に変更し、細かい時間間隔での変動を追えるように変更した。これにより、これまで1Dでしか表現できない事象が2Dで細かい時間間隔で追跡できるようになった。さらに、これまで1 MHz以上の揺動しか観察できなかったところを100 kHzの揺動まで観察できるようになり、分解能の問題ではっきりしないが、数百kHzのピークを持つ揺動が存在している可能性を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、レーストラック形状の加速チャンネルを持つホールスラスタの開発に成功した。また、マルチアンテナ化によって、これまで20㎜×20㎜であった空間分解能が6 ㎜×6 mmまで向上したことを確認できた。さらに、この計測システムを用いてプラズマの密度揺動計測に成功した。数値解析に関しても、実験との比較のために必要な100 kHzの揺動がみられるようになった。 以上の理由により、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
スラスタ内部計測において、数値解析で得られた分解能よりも大きく劣る結果が得られた原因を追究し、空間分解能の向上を引き続き目指す。具体的には3Dプリンタで作られたアンテナの表面粗さやマルチチャンネル化、セラミックの空隙率が空間分解能低下の原因を考えられるため、切り分けて空間分解能工場を目指す。具体的には開発したアンテナを電解研磨やニッケル及び金メッキ等の追加工を行い、指向性が向上するかの検証を行うとともに、同形状のシングルアンテナを新たに作成し、比較検討する。さらに、セラミックの影響調査も行う。 並行して、様々な条件下で揺動の特性がどのように変化するかを調査する。これまでは固定としていた推進剤の流量、放電電圧や推進剤の種類を変更し、網羅的に振動特性を調査する。とくに、揺動出現の境界や、パラメータでのヒステリシス、また揺動間の相関がどのように変わるのかを計測していく。測定には昨年度開発したレーストラック型ホールスラスタを用いて行う。マイクロ波干渉計での密度揺動だけではなく、電流揺動や静電プローブを用いた浮遊電位の揺動を計測するとともに、推力や排出イオン量も計測し、性能と揺動の定量的な関係を明らかにする。 また乱流モデルの改良にも取り組む。ケルビンヘルムホルツ不安定性の検討とともに、中性粒子密度不均一ではない、Gradient Drift Instabilityと中性粒子の相互作用を考慮したモデルにアップデートし、現在注視している数百 kHzの揺動が記述できるか検討する。合せて、イオン流速シアや中性粒子の効果を取り入れたモデルを構築し、モデルが語る乱流の出現条件や周波数等のパラメータ依存性を実験と比較検討し、揺動の同定を目指す
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