研究課題/領域番号 |
22H00257
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
多々見 純一 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (30303085)
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研究分担者 |
高橋 拓実 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 機械・材料技術部, 研究員(任期無) (30715991)
飯島 志行 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (70513745)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,810千円 (直接経費: 33,700千円、間接経費: 10,110千円)
2024年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2023年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2022年度: 28,990千円 (直接経費: 22,300千円、間接経費: 6,690千円)
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キーワード | サイアロン / 透明 / 蛍光 / 粉体プロセス / レーザー / 透明化 / SiAlON |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、高い熱的・機械的特性を活かして構造材料として研究開発されてきた酸窒化物であるα-サイアロンセラミックスを対象とし、その中に存在する光の散乱源を限界まで低減することで高透明化を実現すること、希土類添加透明α-サイアロンセラミックスの発光・励起メカニズムを解明すること、および、得られた透明蛍光α-サイアロンセラミックスで世界初となるレーザー発振の可能性を見いだす。これを発展させた本研究の成果は、新たな透明蛍光性酸窒化物バルクセラミックスの開発や、粉体を利用して製造される各種材料の高機能化のための材料設計指導原理の構築などへの波及が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究は、高い熱的・機械的特性を活かして構造材料として研究開発されてきた酸窒化物であるα―サイアロンセラミックスを対象とし、その中に存在する光の散乱源を限界まで低減することで高透明化を実現すること、希土類添加透明α―サイアロンセラミックスの発光・励起メカニズムを解明すること、および、得られた透明蛍光α―サイアロンセラミックスで世界初となるレーザー発振の可能性を見出すことである。令和4年度は、まず、原料として用いる希土類酸化物に着目し、透明性と蛍光性に及ぼす添加希土類酸化物の影響について検討した。その結果、イオン半径が小さな希土類イオンからなる酸化物、すなわち、Y2O3、Ho2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3、Lu2O3を添加した場合、高密度かつ高α―サイアロン率のセラミックスを得ることができた。これらのα―サイアロンセラミックスは粒径が微細であり、その結果、低い光散乱に起因して、高い直線透過率を示した。特に、Ho2O3を添加した試料は、最も粒径が小さく、波長600nmで48%と高い直線透過率となった。さらに、これらの透明α―サイアロンセラミックスは、希土類イオン(Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+またはYb2+)に起因した4f-4f遷移、あるいは、4f-5d遷移に対応した蛍光を示すことも明らかにした。一方で、Ho3+イオンを添加した際に最も高い直線透過率となったことから、複数の希土類イオンを同時添加することでも透明性と蛍光性の同時付与が図れるのではないかとの仮説を立てて実験を行った。その結果、CeO2とLu2O3を原料として用いることで、高い透明性とCe3+の4f-5d遷移に起因した発光を有するα―サイアロンセラミックスを得ることができた。特に、希土類酸化物の粒子径を調製することでより高い透明性を有する試料を作製可能であることも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の1つである散乱源を抑制して透明性の高いα―サイアロンセラミックスを得るために、小さなイオン半径の希土類酸化物の添加が有効であることが見出されたが、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+はガラスやYAG等をマトリックスとしたレーザー媒質の発光中心として利用されているものであることから、今回得られた透明蛍光α―サイアロンセラミックスもレーザー材料への応用が期待される。このようなイオン半径が透明性付与に重要な役割を見出せたことは今後のαーサイアロンセラミックスの材料設計に重要な役割を果たすと考えられる。特に、Nd3+などの比較的イオン半径の大きな希土類イオンも、レーザーや光学デバイス用材料の発光中心として活用することが求められていることから、Ce3+とLu3+の共添加で透明化を達成できた成果をさらに発展させて共添加による透明化のメカニズムを明らかにすることで、光学特性をチューニング可能なα―サイアロンセラミックスの作製のための材料設計指針の一端が得られると考えられる。また、原料粉体の選択も重要な因子であることも明らかとなり、さらなる低温焼結の実験を進めることでより散乱源が極限まで低減されたα―サイアロンセラミックスの実現が可能になると予想される。さらに、(Ce3+、Lu3+)α―サイアロンセラミックスはα線などによる励起での発光も確認されており、新規なシンチレーター材料としての展開も期待される成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度には、令和4年度までに得られた知見を元に、原料粉体、成形プロセス、焼成温度などのプロセス因子がα―サイアロンセラミックスの透明性に及ぼす影響を明らかにしていく。特に、令和5年度に導入した噴霧凍結乾燥造粒装置では、乾式成形において均質な成形体を得るのに有効な柔らかい顆粒が得られることが報告されている。本研究においても噴霧凍結乾燥造粒を実施することで均質で高密度な成形体の作製を試みる。ただし、原料に用いるAlNは水と容易に反応することから、AlNの耐水性の向上、あるいは、非水系での噴霧凍結乾燥造粒を検討する。また、令和4年度に導入した蛍光分光光度計を活用して、より詳細な蛍光特性の評価を進める。さらには、レーザー発振システムを用いて、作製した透明蛍光α―サイアロンセラミックスの発振の可否を調べる。
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