研究課題/領域番号 |
22H00261
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
戸高 義一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50345956)
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研究分担者 |
椎原 良典 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90466855)
久保 淳 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (40760335)
光原 昌寿 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (10514218)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2024年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2023年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2022年度: 16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
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キーワード | トライボロジー / 濡れ / 材料組織 / 格子欠陥 / 表面 |
研究開始時の研究の概要 |
工業製品のエネルギー損失の多くは摩擦・摩耗によるものであり,これを大幅に低減する学理と技術の確立が,カーボンニュートラル実現のための喫緊の課題である.研究代表者らは,最近,金属表面における潤滑油の濡れ性が摩擦・摩耗特性と強く相関しており,さらにその濡れ性が材料組織と深く関係するという,従来の常識にはない興味深い示唆を得た.本研究では,潤滑油中の摺動環境下での材料表面における濡れの挙動(ナノスケールの動的挙動)を制御するミクロ支配因子を特定する.また,その濡れの挙動に基づいて,サブマイクロ・マイクロスケールの摩擦と摩耗を制御するマクロ支配因子(吸着膜の剥離等)への影響を解明する.
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研究実績の概要 |
2022年度は,金属における濡れの挙動を制御するミクロ支配因子を,潤滑油分子の極性基と金属表面原子との吸着面における対応の観点から調査した.また,濡れの挙動と潤滑油中の摺動環境下での摩擦・摩耗特性との関係づけを行った. 金属材料組織(材料の先天的・後天的性質)が摺動特性に及ぼす影響を明らかにするため,適切な金属種・合金系を選択・作製し,巨大ひずみ加工・熱処理により材料組織制御を行った.それらの試料について,材料組織と試料表面に形成した吸着膜の電子顕微鏡観察を実施した.微細な材料組織を有する試料では,吸着膜の分布(濡れ)が均一になることが明らかとなった.また,電子顕微鏡内での液中観察を実現するため,特殊観察ステージの開発に着手した. 材料組織制御した試料について,油潤滑環境下摩擦摩耗試験により,潤滑油中の溶存酸素の影響を含む,摺動特性を評価した.微細な材料組織を有する試料において摺動特性が優れ,電子顕微鏡にて観察された良好な濡れの挙動と相関が認められた.また,溶存酸素量が少ない場合に,より良好な摺動特性を示した.この現象を化学吸着膜の形成機構と酸化現象の観点から明らかにするため,第一原理計算により酸化鉄, 初期酸化鉄, 鉄表面上における酢酸分子の吸着特性を評価した.その結果,吸着に望ましい表面状態は 鉄 > 初期酸化鉄 > 酸化鉄 であることが明らかとなり,摩擦摩耗試験の結果と良い整合を示した.境界潤滑の分子レベルでのメカニズムを調査するため,粗視化分子動力学法に基づく潤滑シミュレーションを実施した.潤滑油膜を介して摺動する金属表面間を対象とし,油膜の形成・剥離のメカニズムの検討および時定数の評価を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,金属における濡れの挙動を制御するミクロ支配因子を潤滑油分子の極性基と金属表面原子との吸着面における対応の観点から調査すること,また,濡れの挙動と潤滑油中の摺動環境下での摩擦・摩耗特性との関係づけを行うことを目的とした. 金属材料組織(材料の先天的・後天的性質)が摺動特性に及ぼす影響を明らかにするため,適切な金属種・合金系を選択・作製・材料組織制御した.それらの試料について,材料組織と試料表面に形成した吸着膜の電子顕微鏡観察を実施した.また,電子顕微鏡内での液中観察を実現するため,特殊観察ステージの開発に着手した. 材料組織制御した試料について,油潤滑環境下摩擦摩耗試験により,潤滑油中の溶存酸素の影響を含む,摺動特性を評価した.また,摺動特性に及ぼす潤滑油中の溶存酸素の影響を化学吸着膜の形成機構と酸化現象の観点から理解するため,第一原理計算により酸化鉄, 初期酸化鉄, 鉄表面上における酢酸分子の吸着特性を評価した.さらに,境界潤滑の分子レベルでのメカニズムを調査するため,粗視化分子動力学法に基づく潤滑シミュレーションを実施した. 以上の通り,適切な金属種・合金系を選択・作製・材料組織制御し,系統立てて油潤滑環境下摩擦摩耗試験などを実験的に実施している.また,計算との有機的な連携により,トライボロジー現象のマルチスケールな理解を進めている.これらのことから,当初の計画の通りおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,2022年度の取り組みを継続し,金属における濡れの挙動を制御するミクロ支配因子を,潤滑油分子の極性基と材料表面原子との吸着面における対応の観点から明らかにする.また,濡れの挙動と潤滑油中の摺動環境下での摩擦・摩耗特性との関係づけを行う. 材料組織(材料の先天的・後天的性質)が摺動特性に及ぼす影響を明らかにするため,適切な金属種・合金系を選択し,供試材とする.2022年度に作製したそれらの供試材を活用し,巨大ひずみ加工・熱処理により材料組織を制御するとともに,電子顕微鏡法により材料組織を観察・定量評価する. 組織制御した試料について,多段階の物理的階層で生じるトライボロジー現象をマルチスケールでの実験・解析により調査する.油潤滑環境下摩擦摩耗試験により,潤滑油中の溶存酸素の影響を含む,摺動特性を評価する.試料表面原子と直接的な相互作用を示す添加剤分子の極性基, 炭化水素鎖の観点からも調査する.また,種々の観察・分析手法により,材料表面・吸着膜の特徴・特性を分析・解析する. それらの結果を第一原理計算, 粗視化分子動力学法などの計算機シミュレーションへ展開し,実験・計算の有機的な連携により,トライボロジー現象のマルチスケールな理解を進める.
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