研究課題/領域番号 |
22H00265
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 (2024) 大阪大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
藤本 愼司 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 校長 (70199371)
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研究分担者 |
廣本 祥子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究センター, グループリーダー (00343880)
土谷 博昭 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (50432513)
宮部 さやか 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (50584132)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2023年度: 18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2022年度: 12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
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キーワード | インプラント / 表面皮膜 / カソード反応 / 数値モデル / バイオ・メカノケミカル / 電気化学プロセス / アニオン / 金属酸化物皮膜 |
研究開始時の研究の概要 |
摸擬生体環境での摩耗を伴う繰り返し変形時の、金属酸化物皮膜上でのカソード反応の解析と制御、およびそれが金属損傷に及ぼす作用を検証する。また、酸化物皮膜改質によるカソード反応制御を試み、インプラント材料の耐久性強化の可能性を評価する。さらに、細胞や硬組織あるいは異種材料との接触を伴う生体環境でのこれらの現象を数値モデル化し、これらの成果を基に、インプラント材質と形状の最適化設計指針を構築する。加えて、応力・摩耗等の機械的負荷と環境からの電気化学作用による、金属材料の「バイオ・メカノケミカル」損傷機構の体系化を目指す。
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研究実績の概要 |
金属製インプラントの耐食性の向上を表面皮膜改質と数値計算に基づくインプラント形状最適設計手法の確立によって実現するために、検討項目を事象解明、表面改質、数値モデル化の3つに大別して研究を行うことにしている。本年度はインプラント上に生成する酸化被膜上でのカソード反応を模擬生体環境中で、研究代表者らが考案した電流制御分極法により評価するとともに、表面改質法として電気化学プロセスのひとつであるアノード酸化法により電解液中の化学種の取り込みによる酸化被膜の電子物性制御の可能性に関して検討した。模擬生体環境中でのアノード酸化によりチタン表面に酸化皮膜を形成して、その表面での酸素還元反応速度を模擬生体環境中での電流制御分極法により評価した結果、模擬生体環境で生成した表面酸化皮膜上では模擬生体環境でない場合と比較して、酸素還元反応が抑制されることが分かった。またホウ酸、リン酸またはモリブデン酸アニオンを含む電解液中でチタンのアノード酸化を行い、アニオンの取り込みによる酸化皮膜の電子物性変化について調査した。電子物性評価には電気化学インピーダンス測定から算出した皮膜の電気容量を用いたMott-Schottkyプロットを用いた。アノード酸化により作製した、いずれの酸化皮膜のMott-Schottkyプロットは正の傾きをもつ直線を示し、アノード酸化によりチタン表面に形成した酸化皮膜はn型半導体として機能していることが分かった。直線の傾きから算出されるドナー密度はアノード酸化電圧や電解液に含まれるアニオンの種類により変化することが分かった。このことからアノード酸化によりチタン表面に形成する酸化皮膜の電子物性を制御できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、電解液に含まれるアニオンの酸化皮膜への取り込みにより皮膜の電子物性を制御できることが明らかとなった。すなわち電子が関与する電気化学反応である酸素還元反応も制御できる可能性が示唆された。また、腐食のカソード反応である酸素還元が模擬生体環境においても表面改質により抑制されることを明らかにしている。これらのことから表面改質の手法としてアノード酸化を中心に検討すれば、カソード反応に着目した「新しい概念」による金属製インプラントの模擬生体環境での耐食性向上の指針を構築できる基礎的検討を行うことができているといえる。アノード酸化により表面改質したチタン表面に関して模擬生体環境下での摩擦摩耗挙動を検討するためのシステムの構築に取り組むとともに、現象の数値モデル化のために必要な計算プロセスに関する検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
生体環境の模擬度をさらに上げた細胞培養下でインプラント材料の摩擦摩耗挙動およびフレッティング腐食疲労挙動を調査するための実験システム構築とその基礎的検討を行うとともに、表面皮膜の組成および構造、それらによって変化する電子物性がカソード反応特性に及ぼす影響を調査し、アノード酸化を中心とした表面皮膜改質によるカソード反応特性制御に関する検討を行う。インプラント上に生成する表面皮膜の組成・構造および物性とカソード反応特性の関連を明らかにして、電気化学プロセスに基づく皮膜改質によるカソード反応特性の制御について検討する。皮膜改質法としてアノード酸化を中心に検討する。これまでの研究により得た知見から、アノード酸化により電解液中の化学種が取り込まれた皮膜が形成し、皮膜の組成・構造が改質されると考えられるため、化学種の種類および濃度、さらに処理時間をさらに広範に変えて表面処理を行う。組成・構造の調査にはXPS, SEM, TEMやEDSなど各種表面解析技術を使用し、皮膜の電子物性には電気化学インピーダンス法・四端子電気抵抗測定法を用いて、カソード反応特性評価には電流制御分極法を用いて実施する。さらに数値計算モデルの構築も進捗させる。
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