研究課題/領域番号 |
22H00268
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
今井 基晴 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 電子・光機能材料研究センター, NIMS特別研究員 (90354159)
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研究分担者 |
飯田 努 東京理科大学, 先進工学部マテリアル創成工学科, 教授 (20297625)
寺嶋 太一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, グループリーダー (40343834)
高橋 博樹 日本大学, 文理学部, 教授 (80188044)
藤久 裕司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90357913)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2023年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
2022年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | シリサイド / 熱電変換材料 / 半導体 / トポロジカル関連物質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、環境低負荷(資源豊富、無毒)であるトポロジカル関連物質ストロンチウム・ダイシリサイドSrSi2の「電子冷却式温調デバイス」材料としての可能性に着目し、基礎的及び応用的観点から研究を遂行する。具体的には、(1) SrSi2における学術的に未解明な電子状態の詳細な把握、(2)人為的不純物導入制御の実現と電気・熱伝導の精密制御についての基礎的な知見の獲得、(3) デバイス化を志向した素子構造作製とプロセス要素開発、を行い、将来的な実用化推進に資する挑戦的取組みを実施する。
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研究実績の概要 |
本年度は、高品質SrSi2試料を作成するために、55‐100at.%のSi濃度範囲で Sr-Si相図の再調査を行った。再調査したSr-Si相図から得られた知見をもとに、高品質SrSi2試料を垂直ブリッジマン法により合成し、その試料の電気抵抗率、ホール係数、磁化等の物性を決定した。 相図の再調査は、アーク溶融法を用いて55‐100at.%のSi濃度範囲で試料を作成し、その試料を誘導結合プラズマ発光分析、電子プローブマイクロ分析、示唆熱分析、粉末X線回折することによって行った。従来、SrSi2はα-ThSi2型構造(正方晶)を持つ高温相とSrSi2型構造(立方晶)を持つ室温相があるとされていたが、SrSi2型構造を持つSrSi2のみが存在し、SrSi2は融点1121℃で直接溶融することを明らかにした。従来、高温相として報告されていたα-ThSi2型構造を持つSrSi2は、実はSrSi2-x (0.05 ≦ x ≦ 0.13)であり、その結晶構造はSi原子が規則的に欠損したα-ThSi2型構造の超構造(単斜晶)であることことを明らかにした。この結晶構造は初めて発見された結晶構造型である。さらにSrSi2-xは包晶反応により生成されることが明らかにした。 これらの結果は、高品質SrSi2試料が溶融凝固で合成できることを示している。垂直ブリッジマン法を用いてSrSi2-xを含まない高品質SrSi2試料を作成した。この試料の電気抵抗率は、2Kから温度を上昇させると約100Kまで増加し、それ以上の温度では減少するという温度依存性を示した。ホール係数測定によりキャリア密度の温度依存性を決定した支配的なキャリアは正孔であり、キャリア密度は100Kまでは一定で、100K以上では温度と共に増加することを明らかにした。 また、SrSi2のSr原子をCa原子に置換することによる熱電特性への影響を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、(1)高品質SrSi2の多結晶・単結晶合成プロセス開発、(2)高品質SrSi2多結晶試料、単結晶試料を用いた基礎物性評価、(3)SrSi2の熱電特性向上のための元素置換・不純物添加要素技術開発、(4)SrSi2の熱電変換デバイス作製の要素技術開発を行う。 本年度は、55‐100at.%のSi濃度範囲で Sr-Si相図を確定し、それをもとに高品質アンドープSrSi2試料を合成した。以上のように項目(1)は達成された。現在このように合成された試料を用いて、項目(2)SrSi2の基礎物性評価が進行中である。項目(3)においては、SrSi2のSr原子をCa原子に置換することによる熱電性能指数への影響を調べている。このようにSrSi2の熱電特性向上のための元素置換・不純物添加要素技術開発に関する研究も進行中である。項目(4)においてはp型SrSi2にオーミック接触する低接触抵抗な金属電極の探索に関する研究を準備中である。以上のように、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、アンドープSrSi2において2ミリ角程度の単結晶グレインを持つ高品質試料の合成が可能となった。今後はこの単結晶グレインを切り出し、結晶の方位を決定した試料を作成し、磁気抵抗における量子振動の結晶方位依存性を測定し、フェルミ面に関する情報を得る。また、高圧下での電気抵抗Rの温度依存性を測定することにより、体積収縮によりRがより金属的になるか、半導体的になるか、を調査し、SrSi2の電子状態解明に資する知見を得る。 更に、SrSi2焼結試料の高性能化を目指し、元素置換・不純物添加焼結試料の合成のための条件出し、その試料の熱電特性測定を行う。原料Sr、Si、置換元素、ドーパント元素を原料とし、アーク溶融炉を使用してSrSi2を合成し、このアーク溶融試料から焼結試料をパルス放電焼結(PAS)法により作製する。この焼結試料の低温での熱電特性を物材機構において、室温以上での熱電特性を東理大において測定する。元素置換、不純物元素・欠損添加により、SrSi2(p型熱電材料)の電子状態、格子熱伝導率を最適化させ、熱電特性の向上を目指す。 また、PAS法により実ペルチェデバイスと同等程度の熱電素子(2x2x5~3x3x7 mm3)を作製し、電気抵抗率(ρ)、ゼーベック係数(S)、熱伝導率(κ)を室温から200℃程度の範囲で測定し基礎熱電特性を調査する。SrSi2多結晶焼結体母体について、ペルチェデバイスの性能を決める重要なパラメータρとκを支配する材料要因はこれまでのところ未特定である。熱電特性向上への支配的要因が、結晶粒内特性由来か、結晶接触粒界由来かを明らかにしながら、作製する熱電素子の結晶粒径を最適化する具体的な結晶粒径指針を得る。最終的にp型/n型SrSi2で熱電変換素子の作製プロセス条件を抽出する。またオーミック接触する低接触抵抗な金属電極の探索についても行う。
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