研究課題/領域番号 |
22H00282
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
李 艶君 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (50379137)
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研究分担者 |
菅原 康弘 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (40206404)
村山 徹 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (60583531)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2024年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2023年度: 14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
2022年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / ナノ構造体 / 触媒反応 |
研究開始時の研究の概要 |
金属のナノ構造体(サイズは2~3 nm)を金属酸化物表面に担持すると、顕著な触媒活性を示すことが見出されている。しかし、この触媒活性の発現機構は、電荷移動現象の理解が不十分なため、未解明である。本研究の目的は、様々な環境(室温・反応ガス中、および、極低温・超高真空中)で動作する原子間力顕微鏡を駆使して、金属酸化物表面の欠陥とナノ構造体との間の電荷移動現象を解明するとともに、ナノ構造体の構造と電荷状態が触媒メカニズムにどのように関係するかを原子スケールで解明することにある。本研究により、環境・エネルギー分野で有用な触媒材料の触媒メカニズムが解明され、触媒活性をさらに改善するための指針が得られる。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、以下のような研究成果が得られた。 1)原子間力顕微鏡観察が容易で、触媒機能の明らかな実用触媒の調製 原子間力顕微鏡による観察が容易な触媒材料を調製した。また、実際に触媒として機能中のものであることを明らかにするために、触媒機能の触媒化学的測定も行なった。ここで、金属酸化物材料としてはTiO2やCeO2を、ナノ構造体の構成原子としては金(Au)や白金(Pt)などを取り上げた。 2)新方式のケルビンプローブ力顕微鏡の高感度化・高分解能化・高速化 表面の電荷量とバンド曲がり量を測定できるケルビンプローブ力顕微鏡の観察条件を最適化した。具体的には、静電気力の探針・試料間距離依存性を測定し、数値計算により、様々なカンチレバーの振動振幅に対する力の探針・試料間距離依存性を導出し、この距離依存性に対して最も信号・雑音比の良くなる振動振幅を求めた。 3)金属酸化物表面の欠陥構造と電荷状態の解明 ナノ構造体の担持されていない金属酸化物表面の欠陥構造と電荷状態を解明した。ここで、表面の欠陥としては、表面から酸素が抜けた酸素空孔(Ov)欠陥やOv欠陥に水分子が化学吸着して生じたOH欠陥などを取り上げた。 4)金属酸化物表面上の欠陥とナノ構造体の電荷移動現象の解明 金属酸化物表面において欠陥近傍に形成されたナノ構造体の電荷状態を解明した。具体的には、ナノ構造体の原子種や構造が、局所電荷状態にどのように影響するかを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、まず、原子間力顕微鏡による観察が容易な触媒材料を調製した。また、実際に触媒として機能中のものであることを明らかにするために、触媒機能の触媒化学的測定も行なった。次に、表面の電荷量とバンド曲がり量を測定できるケルビンプローブ力顕微鏡の観察条件を最適化した。さらに、表面の欠陥として表面から酸素が抜けた酸素空孔(Ov)欠陥やOv欠陥に水分子が化学吸着して生じたOH欠陥などを取り上げ、ナノ構造体の担持されていない金属酸化物表面の欠陥構造と電荷状態を解明した。また、金属酸化物表面において欠陥近傍に形成されたナノ構造体の電荷状態を解明した。このように本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)電荷移動現象のナノ構造体のサイズ依存性の解明 ナノ構造体が担持された金属酸化物の触媒活性は、ナノ構造体のサイズに大きく依存する。そこで、金属酸化物とナノ構造体との間の電荷移動現象が、ナノ構造体のサイズにどのように依存するかを解明する。 2)反応ガス中でのナノ構造体の局所電荷状態の解明 ナノ構造体を担持した金属酸化物表面にO2, H2, CO, CO2ガスを吸着させ、ガス吸着に伴うナノ構造体や金属酸化物表面の構造と電荷状態の変化を原子レベルで検討する。特にナノ構造体の中央頂上部分と周縁部分の電荷状態の違いを解明する。また、ナノ構造体の電荷状態が、表面欠陥の生成やナノ構造体のサイズにどのように影響されるかを解明する。 3)金属酸化物表面上のナノ構造体の触媒メカニズムの解明 反応ガス中でのナノ構造体の局所電荷状態(帯電状態や局所双極子モーメントの分布)と反応ガスの局所吸着状態(吸着分子種とその結合状態に関係)、触媒化学的な分析結果と比較検討し、金属酸化物表面上でのナノ構造体の触媒メカニズムを解明する。 4)シングルアトム触媒のメカニズムの解明 担持するナノ構造体を単原子の貴金属にした金属酸化物表面(シングルアトム触媒)に対しての触媒メカニズムを解明する。ここで、金属酸化物材料としてはNiOやCeO2を、担持する単原子としてはAuを取り上げる。 5)ナノ構造体表面上の吸着ガスの局所吸着状態の解明 ナノ構造体を担持した金属酸化物表面に吸着したガス分子(O2, H2, CO, CO2)の吸着状態を解明する。具体的には、ケルビンプローブ力顕微鏡を用いて、吸着したガス分子の表面電位(吸着種とその結合状態に関係)が、ナノ構造体の中央頂上部分と周縁部分とで、どのように変化するかを解明する。
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