研究課題/領域番号 |
22H00285
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
川井 茂樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, マテリアル基盤研究センター, グループリーダー (30716395)
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研究分担者 |
HILL Jonathan 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, グループリーダー (30421431)
石川 敦之 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (80613893)
松本 道生 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 独立研究者 (90843110)
Custance Oscar 国立研究開発法人物質・材料研究機構, マテリアル基盤研究センター, 上席研究員 (00444555)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2023年度: 21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
2022年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
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キーワード | 表面化学 / 走査型プローブ顕微鏡 / グラフェンナノリボン / 表面反応 / 磁性 / 原子間力顕微鏡 / 走査型トンネル顕微鏡 / 炭素ナノ構造体 / 単分子 |
研究開始時の研究の概要 |
走査型トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡の探針を一酸化炭素などで終端することで表面に吸着させた分子の骨格解析が実現され、表面化学の研究に大きな転機を迎えた。また、本計測技術とともに発展してきた表面化学反応は有機合成化学の常識を超える化合物を実現させ、その物性探求が可能となった。しかし、新奇炭素ナノ構造体の合成に必要な素反応の開発は、十分とは云えない。本研究では、構造体の自在制御に繋がる超精密表面化学反応を開発し、そこに潜む物性を開拓する。原子レベルで制御された機能的な炭素ナノ構造体は、磁性を利用したナノ材料への展開が期待でき、本研究はそれらを合成・評価するための学術と技術を創生する基盤研究である。
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研究実績の概要 |
本年度は、磁場中で動作する極低温超高真空走査型トンネル顕微鏡・原子間力顕微鏡システムへ装置改造のため、11Tのマグネット内に挿入できる顕微鏡ヘッド・搬送システムの一部・試料ホルダーなどを設計・制作した。また、本装置が設置するために必要なピットも研究室内に製作した。今後、顕微鏡の配線・真空チャンバーの設計製作・真空システムの導入を行う予定である。 研究計画テーマ1の逐次反応の開発とヘテロ構造体の合成に関して、本研究課題の開始前に既に実現した1次元ブロックコオリゴマーの合成を更に発展させ、2次元への拡張を目指した。その結果、合成されるアセチレンリンカーの柔らかさに起因して、生成した構造体の自由度が高く、2次元に大きく拡張できないことが分かった。一方で、脱水素を伴わないラダーオリゴマーの合成を実現した。 研究計画テーマ2の局所化学反応による自在合成に関して、ラジカル部位の精密制御を行った。特に、付加反応の確立に向け、非弾性トンネル電流による脱ハロゲンで生成したラジカルの電子状態や構造を極低温超高真空走査型トンネル顕微鏡を用いて解明を試みた。その結果、3つの異性体構造を探針で制御することに成功した。また、トンネル電流の大きさを制御することで、エネルギー的に不安定なラジカル種を実験的に生成できることを見出した。自動化ブログラムを作成することで、この分子構造操作の再現性を向上させた。 また、スピンを有する分子を用いて、金表面上に生成したインターカレーション膜との影響に関しても知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
磁場中で動作する極低温超高真空原子間力顕微鏡・走査型トンネル顕微鏡システムの立上に関して、本年度で導入する予定の物品はすべて完了することができた。また、その受入として実験室内にピットの設置も完了し、順調に進展している。 逐次反応の開発とヘテロ構造体の合成に関して、残念ながら高い周期構造を有する2次元膜を合成することができなかったが、表面反応に関する有益な知見を得た。一方で、2年目に行う予定であった、脱水素を伴わないラダーオリゴマーの合成に成功し、既に論文報告を行った。 局所化学反応による自在合成に関して、ラジカル部位の精密制御を実現した。当初予想してなかったジラジカル部位の合成や、スピン状態の検出や単分子レベルのチャージなど非常に興味深い実験結果を得ることに成功した。この研究結果は、本研究課題の主要な研究成果となると考えている。それ以外に 1)ホウ素を導入したグラフェンナノリボン上でのスピン制御、2)アルキル基を有する分子と臭素元素を利用した自己組織化膜の構造評価、3)ケイ素を導入した二次元COF膜の実現、 などの研究成果を得ることに成功した。研究計画より、早いペースで進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
先年度に実現したラジカル部位の精密制御に関して、論文を執筆・報告する予定である。現在、理論研究者と共同研究を行っているところであり、本年度中の投稿を目指す。この研究でラジカル部位の構造制御が可能となったため、今後、異種分子の接合を試みる。 表面化学反応の高精度化に関して、磁性原子のCoを炭素ナノ構造体への導入を試みる。また、既に実現したCF3基を用いた表面反応以外にも、ヘテロ構造に展開できる表面反応も開発する予定である。 炭素ナノ構造体の磁性計測・操作技術の確立に関して、今後、真空チャンバーの設計・製作、更に、真空排気系の導入などを行う。また、これまでに開発したプロトコルができる試料作製機構も開発する。
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