研究課題/領域番号 |
22H00287
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
梅津 理恵 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60422086)
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研究分担者 |
千星 聡 島根大学, 学術研究院機能強化推進学系, 教授 (00364026)
福島 鉄也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究チーム長 (00506892)
吉年 規治 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60586494)
赤井 久純 大阪大学, 大学院工学研究科, 招へい教授 (70124873)
真砂 啓 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(地球情報科学技術センター), 技術副主幹 (70510551)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,380千円 (直接経費: 32,600千円、間接経費: 9,780千円)
2024年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2023年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2022年度: 16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
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キーワード | ハーフメタル / スピントロニクス / 電子状態 / 完全補償型フェリ磁性体 / 磁気転移温度 / スピントロ二クス / 反強磁性型ハーフメタル |
研究開始時の研究の概要 |
スピントロニクスの研究分野では、ハーフメタル型の電子状態を有する強磁性体から、反強磁性体(=完全補償型フェリ磁性体)を用いた電子デバイスの研究へと移行している。本研究では、第一原理計算に基づく物質予測により当研究グループが世界で3例目、カルコゲナイド化合物では世界で初めての例となる候補物質を発見したことにより、関連物質において新規反強磁性型ハーフメタル物質の探索を行うと同時に電子状態の直接観測を行い、さらには反強磁性型ハーフメタル物質の普遍的な物質設計指針を確立することを目的としている。
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研究実績の概要 |
スピントロニクスの研究分野では、ハーフメタル型の電子状態を有する強磁性体から、完全補償型フェリ磁性体を用いた電子デバイスの研究へと移行している。本研究では、第一原理計算に基づく物質予測により当研究グループが世界で3例目、カルコゲナイド化合物では世界で初めての例となる候補物質を発見したことにより、関連物質において新規フェリ磁性型ハーフメタル物質の探索を行うと同時に電子状態の直接観測を行い、これら物質の普遍的な設計指針を確立することを目的としている。 令和4年度は、Cr23Fe23S54化合物について熱処理温度の最適化を行うため、熱処理温度を750℃から1150℃まで変化させて得た試料について、結晶構造、相状態、磁気特性等の評価を行った。750℃~950℃熱処理ではNiAs型結晶構造以外にも第2相の存在が確認されたが、その分量は熱処理温度の上昇に伴い減少した。結果、1000℃以上の熱処理とその温度からの急冷によって単相が安定に得られることが判明した。ただし、1150℃からの急冷ではSの組成が2at.%ほど減少し、格子定数もやや増大していた。XRDのピークの強度計算により、Fe,CrがSサイトに置換されたと考えられる。1150℃熱処理によって得られた試料も、1000℃や1050℃熱処理試料と同様に完全補償型フェリ磁性体特有の熱磁化曲線を示すものの、磁化補償温度は大きく低下した。以上より、完全に単相が得られ、磁気特性において再現性が得られるような試料は1000℃~1050℃の熱処理が最適であることが分かった。 (CoV)Sや(Cr,Fe)Se, (Cr,Fe)Te系に化合物系を拡張して物質探索を行ったが、完全補償型フェリ磁性体特有の磁気特性は得られなかった。一方、Cr23Fe23S54化合物において再焼結体の作製を試み、電気抵抗測定が可能な短冊状試料が得られた点では進展があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反強磁性型ハーフメタル物質の有力な候補物質としてCrFeS化合物を報告してきたが、これまでの熱処理条件では完全な単相が得られておらず、磁化特性が必ずしも再現されるわけではなかった。今年度の研究遂行により、確実に単相が得られ、安定した磁化挙動が得られる熱処理条件を定めることが出来たことは非常に重要な成果である。 一方で、特異な電子状態と物性を関連付けて議論するためには輸送特性測定の重要性が指摘されてきたが、その測定には至らなかった。その理由は、焼結して得られた試料が非常に脆く、電気輸送特性の測定が困難であったからである。今年度は様々なプロセスを試み、一度焼結した試料を再度圧粉し、それを再焼結することで短冊状試料を得るに至った。今後はこの試料について測定を行っていくことを計画しており、この点については十分な進展が得られた。よって、総合的に「概ね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ハーフメタル型電子状態を有する完全補償型フェリ磁性体Cr23Fe23S54化合物の輸送特性を調べることを目的とする。これまでの粉末体を焼結した試料は非常に脆く、輸送特性の評価が困難であった。一度焼結した試料を圧粉し、再焼結することで短冊状試料の切り出しが可能な試料が得られた。それを用いて電気抵抗の温度依存性、磁気抵抗、磁気抵抗の角度依存性などの測定を行い、電子状態と関連づけて議論を進めていく。一方で、電子ビームによる蒸着薄膜の作製も試みており、作製出来次第、特性評価を行っていく。 新物質系の探索も引き続き行うことを計画している。第一原理計算では、(VCo)Sや(VCo)Se化合物においてもハーフメタル型電子状態を有することが示唆されている。さらには、同じく第一原理計算で候補物質とされている窒化物の合成も試みることを計画している。それに合わせて第一原理計算による新規物質探索も進め、より候補物質を拡張させることを計画している。
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