研究課題/領域番号 |
22H00290
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三輪 真嗣 東京大学, 物性研究所, 准教授 (20609698)
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研究分担者 |
坂本 祥哉 東京大学, 物性研究所, 助教 (50868114)
野本 拓也 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (60804200)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2022年度: 34,190千円 (直接経費: 26,300千円、間接経費: 7,890千円)
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キーワード | スピントロニクス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究提案では従来の磁性金属デバイス研究で用いられたFeやCo等の強磁性金属ではなく、トポロジカル反強磁性金属を用いて反強磁性スピン構造の自励発振を世界に先駆けて実現する。これにより強磁性金属では実現できないテラヘルツ発振器を創成する。非振動入力である直流スピン流によるスピン歳差運動の発振現象は、反強磁性スピン構造では不可能と考えられていた。しかし、本研究課題では応募者の基盤技術である原子層成長技術によりバルクと異なる対称性を有するトポロジカル反強磁性金属を創成してこれを可能にする。本研究により反強磁性金属の真の意味でのスピントロニクス応用を実現し、新たな物性研究の局面を切り拓く。
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研究実績の概要 |
初年度である2022年度は分子線エピタキシー法による成膜及びフェムト秒パルスレーザーを用いたスピンダイナミクス測定系構築の実験環境構築を行った。 MgO(110)基板上にW(211)をエピタキシャル成長させ、その上にMn3Sn(1-100)を成長させる最適化を行った。Mn3Snは分子線セルを用いたMnとSnの共蒸着により行い、基板の成長温度、Mn3Sn膜厚、下地層の膜厚をパラメータとしてMn3Snの結晶性及びエピタキシャル歪を制御した。エピタキシャル歪の評価をX線回折と電気測定により行い、X線回折からは格子定数の違法性を、電気測定では異常ホール効果の角度依存特性から一軸磁気異方性の増強を確認した。歪を加えたMn3Snは磁気特性が通常と異なる可能性もあったため、磁気特性の評価を行った。超伝導量子干渉磁束計による磁化測定では本研究で用いるような薄膜反強磁性体の磁化は感度が足りず評価できないため、Mn-L端のX線磁気円二色性分光を行った。結果として薄膜の表面数ナノメートルに敏感な全電子収量法及び薄膜全体の特性を含む部分蛍光収量法の両方において良質な磁気円二色性信号を得た。 本研究課題の研究費を用いて研究開始直後の2022年4月にフェムト秒パルスレーザーを発注した。Yb:KGW結晶をレーザ媒質に採用した高出力フェムト秒レーザーであり、研究室に元々設置されていたTi:サファイアレーザーと比べてレーザー強度が10,000倍大きく、時間分解磁気光学カー効果(TR-MOKE)を用いたポンププローブ測定を強いポンプ光で安定して行うことができる。納品は2023年1月であったが、現在用いている光学系に組み込みを精力的に行うことで2022年度内に測定の構築を一通り完了した。同一基板内で膜厚を変化させたウェッジ膜の測定が容易に可能となるよう、プログラムで自動制御可能なサンプルホルダを設計して導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子線エピタキシー法による歪Mn3Sn成膜の最適化とこれを用いたデバイス作製に成功し、フェムト秒パルスレーザーの測定系の構築も完了した。研究はおおむね順調に進展しており、次年度からは研究課題の目的である自励発振の実験を行う。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り初年度に作製手法を最適化したカイラル反強磁性体薄膜を用いてスピンダイナミクスの実験を進める。実験と並行してスピンダイナミクスの理論モデルの構築も行う。
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