研究課題/領域番号 |
22H00292
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 幸雄 東京大学, 物性研究所, 教授 (80252493)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2024年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2023年度: 16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2022年度: 16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 原子層超伝導 / 二次元超伝導 / 走査トンネル分光 |
研究開始時の研究の概要 |
走査トンネル顕微鏡による局所構造評価・分光測定と電気伝導測定を同時に測定することが可能な装置を開発し、単原子層二次元超伝導体をモデル系として、これまで電気伝導測定により探索されてきた種々の現象、例えば異常(量子)金属相に、対して、トンネル分光による局所分光測定を併用することにより実空間分光学的視点からの解明を進めるとともに、局所的構造欠陥やそれに伴う分光的乱れによる影響を本質的な物性から明確に識別することを試みる。
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研究実績の概要 |
走査トンネル顕微鏡(STM)によるステップなどの構造評価とトンネル分光による電子状態評価を、表面電気伝導特性評価と組み合わせて、マクロ・ミクロの両観点から究極の二次元伝導系である表面電気伝導系の素性を解明しようとする研究である。 まずは単原子層超伝導薄膜に着目し、基板上のステップが超伝導特性特に渦糸構造に如何に影響を与えるかをSTMにより評価した上で、微傾斜基板を用いてステップをマクロに導入し、その影響を電子伝導測定により評価することで、ミクロな単一ステップでの現象がマクロ現象を説明することを示した。 さらにこの研究課程において、微傾斜角度をパラメータとすることで、二次元超伝導体に系統的に乱れが導入できることを明らかにし、そこから二次元超伝導体において生ずる超伝導・絶縁体転移やその周辺に存在する(とされる)異常金属相や渦糸液体相などの様々な相に対する乱れの役割を探索することができた。また実際に異常金属相とされる領域でのSTMによる渦糸構造観察から、この状態が従来予想された渦糸の量子揺らぎによるものではなく、渦糸のピニングフリー輸送に由来するものであることを実空間観察により明確に示すことができた。 一方で、STMと電気伝導の同時測定を可能にする装置開発も順調に進められており、走査トンネルポテンショメトリの機能を付与させることにより、ホール効果や表面での温度分布などをナノスケールの空間分解能で明らかに出来ることが見えてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基板上の単原子ステップを乱れとする単原子層超伝導体への影響や、乱れの導入による異常金属相や渦糸液体相の観察など、特異な状態をミクロおよびマクロな測定でともに観測し、評価することができている。 一方で、STMと電気伝導の同時測定を可能にする装置開発も順調に進められており、局所的ホール効果の測定など予備的ではあるが、興味深い成果も得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、STMと電気伝導の同時測定を可能にする装置開発を終えるとともに、二次元超伝導での渦糸が絡む各相でのSTM像を、電気伝導測定により特定しながら観測することで、推測に依らない相の同定を進め、背後にある物理現象の解明を進めたい。 また探針をスピン偏極探針にすることで、スピン偏極流やスピン流に関する情報も得られることから、スピン偏極STM像との対応からのミクロ・マクロ融合を推進したい。
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