研究課題/領域番号 |
22H00293
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
平原 徹 東京工業大学, 理学院, 教授 (30451818)
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研究分担者 |
秋山 了太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40633962)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2024年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2023年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
2022年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
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キーワード | 物性実験 / 原子層物質 / 強磁性 / 磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造 / ホール効果 / 表面界面 |
研究開始時の研究の概要 |
磁性とトポロジカル物性の協奏現象である量子異常ホール効果(QAHE)では、無磁場下で無散逸な伝導が生じ、低消費電力デバイスへの応用が期待される。それを実現しうる物質として二次元原子層磁性体がある。我々はこれまで、トポロジカル絶縁体内部に磁性原子層Mnを埋め込むことで原子層磁性体の開拓と物性評価を行ったが、QAHEの発現温度は1.4 Kにとどまり物理的な基本特性もよく分かっていない。そこで本研究では磁性原子層としてVを用いてこれまでよりも高いTcを持つ原子層磁性体を開拓して微視的にQAHEの発現条件を検証することで、液体ヘリウム温度以上でのQAHEの実現を目指す。
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研究実績の概要 |
まず前年度から取り組んできたVBi2Se4/Bi2Se3およびVBi2Te4/Bi2Te3磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造の作製を目指したが、残念ながらVはMnと違ってBi2Se3およびBi2Te3の内部にはインターカレートできないことが分かった。よって理論で予言されているヘテロ構造の作製は難しいと結論づけた。理論計算はあくまで試料形成後の再安定構造について議論しているが、実験ではその作製過程まで気を配る必要があり、Vの場合はトポロジカル絶縁体の内部にインターカレートするよりも表面上にVSe2およびVTe2を形成するのがよりエネルギーを低くすることができるということである。
そこで本研究のもう一つの目的である、in situでの磁化特製評価手法の開発に本格的に取り組んだ。まず既存のin situ輸送測定装置用にバイポーラー電源を購入し、PC制御できるようにして高速で±0.5Tの範囲内での磁場掃引を可能にした。そしてMnBi2Te4/Bi2Te3/Si基板に対してホール効果を測定したところ、磁化を反映した異常ホール効果が15Kより低温で観測され、この系のキュリー温度が15 Kであることが分かった。これはこの系に対してX線内殻磁気円二色性(XMCD)測定では6 Kに冷やしても明確に強磁性のシグナルが観測できなかったことを考えると、in situ測定だからこそ分かった事実と言える。興味深いことにSi基板とBi2Te3の間にBi原子を一層挿入することで9 K以下でBiがない場合と異なる異常ホール効果のデータが測定され、磁化以外の起源による異常ホール効果が存在することが分かった。現在この起源を同定するために、理論家と議論を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新物質の開拓は難しいことがわかったが、in situでの磁化特製の評価が順調にできたのでこのように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、MnBi2Te4/Bi2Te3/Si基板でSi基板とBi2Te3の間にBiを原子一層挿入した場合に観測された、磁化以外を起源とする異常ホール効果に関して、そのメカニズムを解明したいと考えている。さらにBiをMnBi2Te4の上に蒸着した場合などでも同様の効果が検出できるかなど、in situでのホール効果測定によってこれまで議論されてこなかった表面界面における異常ホール効果に関して新奇な現象を理論・実験両面から解明していく。 さらに昨年度、スペインの放射光施設ALBAでのpreliminaryなXMCD測定によって様々な方向に外部磁場を印加して、微弱な残留磁化のシグナルを精度よく測定できることが分かった。そこで今年度はMnBi2Se4/Bi2Se3/Siに関して、そのキュリー温度および容易化軸を精度良く測定し、そのバンド構造との対応を再検討する予定である。具体的にはこれまで実験・理論ともに面直磁化が容易化軸であると考えてきたが、これが本当であるか否かを高分解能測定によって明らかにしたい。
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