研究課題/領域番号 |
22H00294
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 圭 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40335211)
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研究分担者 |
吉村 雅満 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40220743)
原 正則 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40457825)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2024年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2023年度: 16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 探針増強ラマン分光 / 触媒 / 電極反応 / ナノカーボン |
研究開始時の研究の概要 |
液中原子分解能AFM観察と探針増強ラマン分光(TERS)の両方に対応した液中AFM-TERS装置を新規に開発する。また、市販のカンチレバー探針に貴金属薄膜をコーティングし、集束イオンビーム(FIB)加工を施した間接照射TERS探針を設計・試作し、研究期間の前半には大気中のTERS測定により装置・探針の性能評価を行い、後半にはモデル触媒を対象に、電気化学環境下でTERSマッピングを行う。
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研究実績の概要 |
われわれは最近、集束イオンビーム(FIB)を用いて市販のカンチレバーの探針を薄く数百nmの厚さとなるまで削ることで、薄膜状の導波路を形成した薄膜導波路プローブを提案した。このプローブを試料に対して浅く傾けて配置し、ほぼ垂直方向から励起光を入射すると、励起光が導波路へ導波され、間接照射探針増強ラマン分光(TERS)が実現できる。一方、市販のAFM装置の多くはカンチレバーの正面から浅い角度で励起光を入射する仕様となっており、薄膜導波路プローブを用いた間接照射TERSは不可能である。そこで、先端部分にのみ導波路構造を形成した準間接照射プローブを提案・試作してTERS測定を行ったところ、従来の薄膜導波路プローブを用いた間接照射TERSと同程度の信号コントラストが得られた。また、有限要素法(FEM)を用いて探針先端近傍での電界強度を解析したところ、正面から探針先端近傍へ励起光を入射することで、非常に高い電界増強効果が得られることを確認した。 一方、導波路プローブの薄膜導波路にはばね性があり、薄膜導波路プローブの機械的性質は、矩形型のカンチレバーの末端にまた別のカンチレバーが備えられたものと等価であることが予想される。今回、導波路プローブのばね定数を解析的に計算する方法と、実際にそれを校正する方法を提案した。 さらに、FIBを用いて探針増強ラマン分光法用のカンチレバー探針先端の加工を行い先端の曲率を制御し、空間分解能の向上を試みた。探針は、Siカンチレバーに100 nmのSiO2膜を形成した後、100 nmの銀膜をコーティングし、HAuCl4溶液に浸漬して金と銀の合金を形成した。このプローブの先端から2 μmの領域をFIBにより先鋭化し、Au表面上の酸化グラフェン(GO)単層膜のTERS測定を行い、断面プロファイルを解析したところ、17.6 nmの空間分解能が達成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TERSプローブ開発に関しては、導波路プローブと比べて比較的簡単なFIB加工で作製できるTERSプローブの開発が順調に進展している。また、各プローブにおける探針先端電界強度のFEM解析により液中AFM-TERSに適したプローブ構造の最適化を行える環境が整った。また、液中AFMヘッドの開発に関しては、市販のAFM装置の光てこ変位検出系を改造し、カンチレバーの長手方向と垂直な光学面において、斜め方向から変位検出用レーザ光を入射する斜入射仕様のヘッドを設計、試作を行い、大気中および液中での周波数変調(FM)-AFMの動作確認を行った。
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今後の研究の推進方策 |
TERSに対応した液中AFMヘッドについて、斜入射仕様の光てこ光学系ではプローブに対して正面からTERS用の励起光を入射する必要があり、薄膜導波路プローブを間接照射型TERSプローブとして用いることはできない。したがって、薄膜導波路プローブを用いて間接照射TERSを行うための励起光入射方向を設定し、それに応じた新たな光てこ光学系を設計する。また、大気中および液中におけるTERS測定において、導波路プローブおよび準間接照射プローブの探針先端近傍への金薄膜のコーティング条件と得られる薄膜のモフォロジーや膜厚との相関を明らかにし、コーティング方法および条件を最適化する。
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