研究課題/領域番号 |
22H00304
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分30:応用物理工学およびその関連分野
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
岩谷 素顕 名城大学, 理工学部, 教授 (40367735)
|
研究分担者 |
上山 智 名城大学, 理工学部, 教授 (10340291)
竹内 哲也 名城大学, 理工学部, 教授 (10583817)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2022年度: 19,500千円 (直接経費: 15,000千円、間接経費: 4,500千円)
|
キーワード | AlGaN / AlN / レーザー / 電子線励起 / 光励起 / 窒化アルミニウムガリウム / 窒化アルミニウムテンプレート / 窒化アルミニウム / 基板剥離 / ミラー / 高品質結晶 / 窒化アルミニウムガリウム混晶 / レーザ / 光励起レーザ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、未踏波長領域である「遠紫外線C波(波長:約205~230 nm)AlGaN系電子線励起レーザ」の実現を目指す。遠紫外線C波レーザ実現のボトルネックである反転分布状態が得られるほどのキャリア注入を実現すること及び良好な光共振器を形成するのが困難という2つの課題を打破し、未踏波長域・遠紫外線C波の電子線励起レーザの実現を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では遠紫外線C波の電子線励起レーザを実現することを目指して研究を推進している。これまでの研究で、AlGaN系材料を用いた電子線励起レーザのレーザー発振現象を捉えることには成功している。今後目標を達成するための課題は、大きな光学利得を得ることと、低い光学的なロスを有する光共振器を形成することが重要であると考えられる。2023年度は光励起法により最適な結晶の作製法や利得が得られるかどうかの検証を行った。作製した基板としては、昇華法を用いたAlN単結晶、特殊で且つ大口径化可能なAlN自立基板、サファイア基板上に作製したAlNテンプレートなどを比較して検討した。また、AlNテンプレートに関してはスパッタFace to Faceアニールしたものや、MOVPE法で作製したものを複数作製して系統的に評価を行った。これらのテンプレート上に電子線励起のレーザー構造を積層し、波長213nmの励起レーザを用いた光励起レーザーの測定を行った。結果としてAlN基板上での誘導放出と思われる特性が得られているが、共振器の形勢が適切でない可能性が確認されたため、今後さらなる最適化が必要であると考えた。 さらに、内部量子効率を見積もると60%を超えるような良好な特性を得ることが確認された。その一方で、発光波長が250nmと遠紫外線C波には到達していないため最適なAlNモル分率の調整などが今後の課題として残された。来年度は、最終年度であることから、目標とする遠紫外線C波の電子線励起レーザーを実現するべく光励起レーザーの最適化を進め、最適な電子線励起法の確立を含めて研究を推進していく予定である。また、合わせて電流注入に向けての検討を進めており、すでに発振しているUV-B領域の半導体レーザーの検討を進め、分極電荷を制御することによってキャリア注入効率の向上が可能であることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要にも記載したように様々なAlNテンプレートやAlN基板上に最適な構造を作製する技術開発が順調に進められていると考えられる。特にAlNに関しては最も転位密度が少ないと思われる昇華法のAlNや不純物濃度が低いと考えられるMOVPE法のAlNテンプレートなど、不順部や結晶欠陥の影響なども含めた学術的な評価が進められるような検討を進め、それによって様々な知見を得ることに成功しており、これらの成果は今後学会で発表する予定である。 また、本グループでは世界で初めて電流注入においてはUV-B領域の半導体レーザーの室温動作に成功しているが、それらの研究成果を発展させ、様々なデバイス構造の開発を検証し注入効率の増大に成功している。さらに、良好な光共振器を形成する上で最も重要な基板剥離技術として加熱加圧水を用いた基板剥離技術など電流注入レーザーや電子線励起レーザーの高性能化に必要な要素技術を多数開発するなどの成果を残してきた。また、これらの成果は学術論文や学会発表での招待講演に選ばれるなど世界的に高い評価を得ることに成功している。その一方で、主目的である遠紫外線C波の電子線励起レーザーを実現には至っていないことなどの課題も存在していることから、本件y区課題は(2)おおむね順調に進展しているという評価が妥当であると考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は最終年度であり、本研究課題の主目的である電子線励起のレーザーで遠紫外線C波の領域での発振を目指して検討を進める。そのためには結晶成長技術の開発により目的となる構造を作成する技術開発や物性的に実現可能なことを検証することが重要となると考え、それらの検討を総合的に判断するための方策をねる予定である。それらの検討をするうえで、2023年度の検討である加熱・加圧水を用いた基板剥離技術、ケミカルメカニカル研磨法を用いたヒロックやピットの低減化技術など複数の手法を検証することによって目標の達成を目指す。 さらに、今後の応用を目指すうえで、電流注入の半導体レーザーを実現することは極めて重要であることからすでに発振を実現しているUV-B領域の半導体レーザーの特性を改善することを検証する。具体的には、活性層中に電子と正孔を閉じ込め利得を得ることができうる割合を表したキャリア注入効率を現状の10%程度から可視領域なみの80%程度まで飛躍的に向上させることを目指す。これらの成果が得られれば世界初の遠紫外線C波の電流注入による半導体レーザーの実現など革新的な成果につながる可能性があると考えており、研究を推進していく予定である。その他、高反射率なミラーや低抵抗オーミックコンタクトの実現など紫外領域の半導体レーザーでは検証が不十分な領域の最適化を進めていくことを行い、最終年度に相応しい学術的な成果を得ることを目標に研究を推進する。
|