研究課題/領域番号 |
22H00334
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
生越 友樹 京都大学, 工学研究科, 教授 (00447682)
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研究分担者 |
加藤 研一 京都大学, 工学研究科, 助教 (10879406)
淺川 雅 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90509605)
大谷 俊介 京都大学, 工学研究科, 助教 (90911503)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,160千円 (直接経費: 33,200千円、間接経費: 9,960千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2022年度: 21,710千円 (直接経費: 16,700千円、間接経費: 5,010千円)
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キーワード | ピラー[5]アレーン / 動的共有結合 / 共有結合性一次元ナノチューブ / 面性キラリティー / 有機ナノチューブ / 共有結合性一次元チューブ |
研究開始時の研究の概要 |
有機分子から構成される筒状構造体「一次元有機ナノチューブ」は、機能性材料として破格のポテンシャルを有している。しかし、結晶の様な明確な構造を有する共有結合性有機ナノチューブを合成することは最難関な課題である。その理由は、有機ナノチューブを共有結合で架橋する際のミスマッチに起因して未架橋部分が出来てしまい、共有結合構築の完全な制御が困難なためである。本研究では、研究代表者らのこれまでの知見を基にした「緻密な分子設計」と「動的共有結合」から、ピラー[n]アレーンを基にした結晶の様な明確な構造を有する共有結合性有機ナノチューブの合成を行う。
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研究実績の概要 |
動的共有結合であるイミン結合を架橋部位として利用した構造の明確な共有結合性有機ナノチューブの合成 面と面がかみ合うように導入したベンジル基のパラ位にアルデヒド基を5個導入した非対称ピラー[5]アレーンと、para-ジアミノベンゼンを架橋剤として混合し反応させることで、ピラー[5]アレーン2分子が連結したチューブ状構造の形成を行った。動的共有結合を利用することで、計10か所の反応がミスマッチなく進行し、ピラー[5]アレーン2分子が連結したチューブ構造を65%の収率で得ることができた。さらに得られたチューブの面性キラリティーを調べたところ、pS-pS、pR-pRのホモキラルなチューブ構造とともに、pS-pRのヘテロキラルなチューブ構造が混在していることが分かった。ゲスト分子を共存させてチューブを形成させることにより、ホモキラルなチューブとヘテロキラルなチューブの生成割合が変化し、ゲスト分子を共存させた時のほうが、ホモキラルなチューブが選択的に得られることを見出した。キラルカラムにより、これらチューブを分離することができた。また架橋剤であるジアミノ化合物の長さを変化させることにより、長さが異なる分子チューブを得ることにも成功した。得られたチューブについて、ゲスト分子を加えたところ、チューブを構成する2つのピラー[5]アレーンの空孔にゲスト分子が1分子取り込まれた後に、もう1つの空孔に取り込まれるといった負のアロステリック効果が見られた。ピラー[5]アレーン空孔へのゲスト分子の取り込みの情報が、もう一方のピラー[5]アレーン空孔へとリンカーを介して伝搬するために、このような負のアロステリック効果が見られたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ミスマッチのない分子チューブが得られたばかりではなく、キラルなチューブの分離にも成功した。さらには、チューブを構成する2分子のピラー[5]アレーンのゲスト取り込みが、負のアロステリック効果を伴いながら起こることを見出すことができた。これらにより、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1年目は動的共有結合を利用することで、高効率にミスマッチのない明確な構造を有する分子チューブを得ることができた。2年目は、より空孔の大きなピラー[6]アレーンを用い分子チューブを合成することで、直径の異なる分子チューブ群を合成する。ピラー[6]アレーンを用いることで分子チューブの直径が大きくなることから、分岐構造を有するキラルなゲスト分子の取り込みの検討を行う。また、ピラー[5]アレーンの分子チューブの末端構造を制御するために、末端を封鎖した構造の分子チューブを合成する。末端を封鎖することで、ゲスト分子は一方向の空孔からのみしか包接が起こらないため、ゲスト分子の取り込み挙動が大きく変化すると期待される。ゲスト分子の鎖長を変えて、ゲスト分子の取り込み能力について調査を行う。 またピラー[5]アレーン2分子を連結した分子チューブが得られたことから、この系を拡張し、より長い分子チューブを合成する。面と面がかみ合うように導入したベンジル基のパラ位にアルデヒド基を10個導入したピラー[5]アレーンと、チューブ形成に最適なC3鎖でアミノ基を10個導入したピラー[5]アレーンを合成する。これら分子を混合し、動的共有結合により構造の明確な共有結合性有機ナノチューブの合成を行う。得られた分子チューブの形状については、TEM測定、AFM測定により観察する。イミン結合の還元により不可逆な結合であるアミン結合へと変換し、堅牢な共有結合性有機ナノチューブへと変換する。
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