研究課題/領域番号 |
22H00355
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西山 真 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00208240)
|
研究分担者 |
吉田 彩子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90633686)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
42,770千円 (直接経費: 32,900千円、間接経費: 9,870千円)
2024年度: 12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
2023年度: 12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2022年度: 17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
|
キーワード | アミノ基キャリアタンパク質 / 放線菌 / 二次代謝産物生合成 / 反応機構 / 構造生物学 / アミノキャリアタンパク質 / 結晶構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
アミノ基キャリアタンパク質、AmCPは我々が見いだした新規キャリアタンパク質である。その後、AmCPを利用した生合成システムが好熱菌、放線菌に加えて様々な微生物に広く分布し、微生物の物質生産システムとして重要な位置を占めるとともに、天然化合物の多様性の拡張に大きく寄与していることが明らかになってきている。本研究では、まだ未解明な点も多いAmCP生合成システムを構成する個々の反応を最先端の方法を駆使して解析する。同生合成システムには新規反応、新規骨格形成を行う酵素が多く含まれていることから、それらの結晶構造解析を行うことにより、構造多様性創出機構の一端を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
放線菌が生産するVazabitide Aの生合成において最も重要な反応の1つはアジリジン環の形成反応である。我々は、機能未知タンパク質Vzb10/Vzb11複合体がN-acetyl-sulfo DADHを基質として、アジリジン環を含むN-acetyl aziridolineと命名した新規アミノ酸を生成することを突き止めた。X線結晶構造解析によりVzb10/11複合体のホモログタンパク質の構造並びに基質結合型構造を決定した結果、基質のアジリジン環を構成するアミノ基の窒素とC5炭素、C6炭素およびスルホ基を構成する酸素原子が同一平面上に位置し、SN2様反応により、硫酸基の脱離を伴って、アジリジンが生成することが明らかになった。Vazabitide AとFicellomycinは構造類似化合物だが、両者の化学構造はアザビシクロ環含有アミノ酸の5位、及び6位の立体化学が互いに異なることが明らかになった。Ficellomycinの生合成に関わり6位のアミノ基の立体を決定するアミノ基転移酵素について結晶化などを通して、sulfo DADHの糖部分が180度回転して結合することにより、6位の立体化学の違いを生み出すことを明らかにした。一方、N-N結合を持つユニットを結合したユニークな構造を持つs56-p1のN-N結合形成を担うと推測されるSpb40のCupinドメインの結晶化に成功した。また、AmCPを含む幾つかの遺伝子クラスターについては、転写因子を高発現することで産生される新規化合物の化学構造並びに生合成機構を解明しつつある。抗菌物質として知られるMaleimycinがAmCPを介して生合成されること、そしてその過程に新規な反応が関わっていることが示唆されている。その生合成過程にAHXOと名付けた新規アミノ酸が関わることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでAmCPを介して生合成される二次代謝産物の構造多様性を創出に関わる幾つかの新規酵素について、その構造と機能を解明することに成功し、それらの一部は既に国際誌に論文として発表している。以上のことを鑑みるに、研究はおおむね順調に進展していると考えている。それでもまだAmCPを介した生合成システムの多様性は大きく、多くの未知化合物の生合成に変わっていることが明らかになりつつある。それについても、研究を行っているが、まだ生合成経路や酵素の機能が解明されていないものもあるため、本年度以降で引き続き研究を続けて解明してきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
放線菌が生産するVazabitide AやFicellomycin、Azinomycin Bはアザビシクロ[3.1.0]ヘキサン環(アザビシクロ環)を有するアミノ酸を含むジペプチドである。我々は、これら3つの化合物がどれも(2,6)-diamino-(5,7)-dihydroxy-heptanoic acid (DADH)を前駆体として合成されることを明らかにしてきた。その過程でVazabitide Aの前駆体として生合成されるDADHが2S,6R,5RのDADHであるのに対し、FicellomycinやAzinomycin Bの前駆体は、5位、及び6位の立体化学がS体と異なることを見出した。アミノ基転移酵素による6位の立体創出機構を明らかにした昨年度の研究に続き、本年度は5位の立体選択性の違いをもたらすと考えられるトランスケトラーゼにフォーカスした研究を行う。一方、アザビシクロ環水酸基にN-N結合を持つユニットを結合したユニークな構造を持つs56-p1において、N-N結合形成を担うと推測されるSpb40のCupinドメインの結晶化に成功したことから、その構造決定を行う。抗菌物質として知られるMaleimycinがAmCPを介して生合成され、その生合成過程にAHXOと名付けた新規アミノ酸が関わることが明らかになったことをうけて、さらにその全貌を明らかにするための研究を行う。幾つかの新規酵素のついてはその結晶構造を決定し、反応機構を解明する。また、次々に見つかっているAmCPの遺伝子を含むを新規生合成遺伝子クラスターがどのような化合物の産生に関わるかを解明し、その化学構造並びに生合成機構を解析する。
|