研究課題/領域番号 |
22H00364
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
白須 賢 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, グループディレクター (20425630)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
42,510千円 (直接経費: 32,700千円、間接経費: 9,810千円)
2024年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
2023年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2022年度: 15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
|
キーワード | 植物 / 病害抵抗性 |
研究開始時の研究の概要 |
植物が如何にして病原体を認識し免疫システムを活性化させるかを解明することが本課題の目的である。植物や病原体ゲノムにはこれまでの攻防の歴史が刻まれているはずであり、これを解読しながら、遺伝学・生化学を駆使して、植物の重要免疫因子を同定し、その生理学的および生化学的機能を解明することによって、植物-病原体相互作用の全容を明らかにする。特に、植物において病原体との接触点である細胞外(アポプラスト)での攻防を中心に、病原体由来タンパク質を認識する機構を明らかにするとともに、アポプラストでの活性酸素群シグナル伝達の重要因子を同定し、感染時における細胞間コミュニケーションの分子機構を解明する。
|
研究実績の概要 |
比較ゲノム・トランスクリプトーム解析より炭疽病菌に高度に保存された感染時に発現が上昇する遺伝子を多数同定した。これらを、アグロバクテリウムを用いてベンサミアーナタバコで一過的に発現させる機能スクリーニングをした結果、分泌型リボヌクレアーゼ(RNase, SRN1とそのホモログSRN2)が、細胞死を誘導することを発見した。さらに、SRN1とSRN2が、シグナルペプチドおよびリボヌクレアーゼ酵素活性依存的に細胞死および活性酸素発生向上等の免疫反応を誘導することを発見した。この酵素が、グアニンを含む一本鎖RNAを切断し、グアノシン-3’-モノリン酸(Gp)を3’末端に残した。SRN1とSRN2の二重変異体は宿主植物への侵入効率が高まり病原体量が増加した。また、シロイヌナズナにおける免疫阻害剤のターゲットをコードする遺伝子の二重変異体がWTに比べ、トマト斑葉細菌(Pseudomonas syringae pv. tomato)に対しての免疫能が減少していた。さらに、植物免疫シグナルにおけるマスターレギュレーターであるNPR1とこの2重変異体が致死になることも明らかになった。また、PB1CPおよびCARD1については、タグを付けて免疫沈降をおこない、プロテオーム解析により複合体を形成する因子を同定した。PB1CPの複合体因子をコードする遺伝子を欠失したシロイヌナズナの変異体は、トマト斑葉細菌に対する免疫能が変化していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では、炭疽病原菌由来の分泌型RNase (Secreted RNase)であるSRN1とSRN2が宿主に認識されることを見いだしている。その認識はおそらくその酵素生成物であるRNAと予想される。本年度は、SRN2のシグナルペプチドのあとにタグを付けた上で宿主植物であるキュウリあるいはモデル宿主であるベンサミアーナタバコで発現させ、その局在を確認した。また、srn変異体のコロニー形状の表現型, 胞子形状, SRN1発現量を定量した。既知のシグナル因子であるBAK1, SGT1, EDS1 が必要であるかどうかを、ベンサミアーナタバコを用いてサイレンシングして、その表現型を確認した。結果は陰性であった。H75A/H130Aとは異なる活性残基を失活させたSRN2をベンサミアーナタバコあるいはキュウリに発現させ、細胞死あるいは活性酸素の誘導への影響を検証し、タンパク質そのものが認識されているか否かを検証した。H75A/H130Aとは異なる活性残基を失活させたSRN2をベンサミアーナタバコあるいはキュウリに発現させ、細胞死あるいは活性酸素の誘導への影響を検証し、タンパク質そのものが認識されているか否かを検証した。その結果、細胞死活性酸素誘導能が欠失していた。また、植物は病原体認識の際にROSを発生するが、その制御およびシグナル伝達系はいまだに未解明である。本研究室で同定した因子であるPB1CPおよびCARD1については、生化学的および遺伝学的解析を継続しておこなった。具体的には、PB1CPおよびCARD1にタグを付けて免疫沈降をおこない同定した複合体の因子それぞれについて、タグをつけ、その結合の条件を明らかにできている。
|
今後の研究の推進方策 |
新規に同定された因子が、どのように免疫に関与するか、詳細に解析をおこなう。具体的には、変異体の免疫表現型、すなわち、ROS発生活性、MAPキナーゼ活性、免疫関連遺伝子の発現解析(RT-qPCR、RNA-seq)をおこなう。さらに、本研究室が保有する免疫不全、および免疫活性変異体群との二重あるいは多重変異体を作成し、その表現型を同様に解析する。また、シロイヌナズナやベンサミアーナタバコ等の植物内で発現させて、免疫沈降法や蛍光タンパク質をつかってその結合を細胞内で確認すると同時に、細胞内での局在を確認する。同定された因子に関しては、それを持たない他の科の植物において、病害抵抗性を付与するかを検証する。具体的には、同定された因子をクエリにしてデータベースを検索して、系統解析により、異なる植物種のゲノム中に、同定した因子の機能的オルソログをコードされるかを確認する。また、多数の植物ゲノムを用いた因子の大規模系統樹解析をおこない、その進化的意義を検証する。特に、ペプチドを認識するLRR-RLK型のPRRは植物免疫に関与しているファミリーとして12型が知られており、その詳細な解析をおこなう。例えば、種特異的にゲノム上にコピーナンバーが拡大しているサブクレードは種特異的な病原体からのリガンドを認識する能力を得たと考えることが出来ることから、その解析をおこなう。
|