研究課題/領域番号 |
22H00385
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
長崎 慶三 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (00222175)
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研究分担者 |
前田 広道 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (20437734)
花崎 和弘 高知大学, 医学部附属病院, 特任教授 (30240790)
岡崎 友輔 京都大学, 化学研究所, 助教 (40823745)
高橋 迪子 高知大学, 医学部, 特任助教 (40868189)
緒方 博之 京都大学, 化学研究所, 教授 (70291432)
吉田 天士 京都大学, 農学研究科, 教授 (80305490)
和田 啓 宮崎大学, 医学部, 教授 (80379304)
遠藤 寿 京都大学, 化学研究所, 准教授 (80795055)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 赤潮プランクトン / ウイルス / 糖鎖認識機構 / 巨大蛋白質 / 長鎖反復配列 / 赤潮 / 二本鎖DNAウイルスHaV / 特異的感染性 / 感受性 / クローン多様性 / 生え戻り現象 / 高度アミノ酸反復領域 / 長鎖反復アミノ酸長鎖配列 / 糖鎖 / 宿主特異性 |
研究開始時の研究の概要 |
微細藻の大量増殖による海域の着色現象(=赤潮)がどのように終息するかは、あまりよくわかっていない。本研究では、赤潮個体群中でウイルスがどのように出現し、いかなる戦略で感染を遂げるか、それに対して宿主側がどのような遺伝子発現戦略で防御するかを、室内培養系と現場赤潮環境の両方で解明する。赤潮対ウイルスの生態的な関係性を可視現象レベルから分子レベルにわたり精査することで、小中高校の教科書にも書き加える必要があると認められるような赤潮生態学・ウイルス学的知見を発信する。
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研究実績の概要 |
二本鎖DNAウイルスHaVは赤潮原因藻ヘテロシグマに感染する。これまでに、HaVの宿主範囲ならびに宿主のウイルス感受性パターンはクローンごとに異なることが明らかとなっているが、両者間の複雑な関係性を裏打ちする機構は不明である。 今年度は、死滅区ごとの力価の比較、ウイルスクローン内における感染性の変化の抽出、ならびに生え戻り現象に関する精査を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。①一つのウイルス懸濁液の力価測定に際し、異なる宿主株を用いるとMPN値には4オーダー以上の大きな差がみられた。この理由として、単一粒子からスタートしたクローンのHaV株でも、産生された粒子間で宿主への結合能が異なる可能性が疑われた。②同一クローンの感染特異性が植え継ぎの過程で変化する場合がみられた。③感染死滅が起こる宿主株(R0)-ウイルス株の組合せでも、ウイルス接種後に生残した少数の細胞が増殖する(生え戻る)ケースがあることが見出された。④「生え戻り現象」について精査を行った結果、生え戻った細胞(R1)は接種されたウイルス株に対し抵抗性を保持していた。⑤ただしR1は、R0の時点で非感受性だったウイルス株に対して感受性を示した。すなわち宿主のウイルス感受性パターンの反転現象が観察された。 これらのことから、クローン化された培養であっても、ウイルス感受性パターンは変化しうるものと考えられた。従来まで想像されていたよりも、宿主のウイルス感受性を支持する要素は可塑的なのかもしれない。 一方、HaVの巨大蛋白質VP492遺伝子の高度アミノ酸反復領域を比較した結果、異なる由来の株間でもきわめて保存性が高いことが明らかとなった。この分子が宿主特異性の決定に関わっているとしたら、発現後のモディフィケーションが関わっている可能性も考えられる。今後の精査が待たれるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は高知県産のヘテロシグマ株およびHaV株の単離・無菌化を行い、今後の室内実験に必要な生物材料の整備を行った。その結果、ヘテロシグマ60株以上およびHaV20株以上の採取と培養構築に成功した。 クロスアッセイの結果、従来の「溶藻/非溶藻」という従来の2元的評価がきわめて曖昧である可能性を抽出した。同じウイルス懸濁液を異なる宿主株を用いて測定した際の力価が10E0~10E-7の範囲で異なったという事は、同じウイルスクローン集団中においてそれを構成するウイルス粒子が多様であり、クローンであれば無条件に均一であるという従来の考え方に一石を投ずる結果といえる。これまでの研究では、HaVクローン株が示す宿主特異性は均一不変であると考えられてきたが、これについても「不変ではなく可塑的である」可能性が抽出され、生態系におけるウイルスの役割を考えるうえでさらに俯瞰的な精査が求められたといえる。以上の通り、数々の興味深い疑問点を抽出するに足るデータが蓄積できたという点を評価したい。今後は各現象を裏打ちする分子メカニズムの解析のため、他研究機関との合理的連携による戦略展開が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究推進方策としては、①高知県浦ノ内湾以外のフィールドからもヘテロシグマ株およびHaV株を作出し各種実験に供すること、②さらにバラエティの高いクロスアッセイを行い宿主側の死滅様態が特徴的な組合せを抽出すること、③一つの宿主クローンの感染特異性が植え継ぎ過程で変化するという現象を数値化したデータを集めること、④ウイルス接種により感染圧を調節しつつ、一つの宿主クローンがどの程度多様な感受性を示すかを測定すること、⑤宿主のウイルス感受性パターンの反転現象について再現性の検証を行うとともに反転の生ずる機作を明らかにすること、などが挙げられる。⑤については、同一クローン内における遺伝子発現様態変化の追跡実験をデザインする必要がある。
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