研究課題/領域番号 |
22H00386
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
太田 耕平 九州大学, 農学研究院, 教授 (10585764)
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研究分担者 |
荻野 由紀子 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00404343)
馬場 崇 九州大学, 医学研究院, 准教授 (40435524)
Chakraborty Tapas 九州大学, 農学研究院, 助教 (70715440)
Mohapatra Sipra 九州大学, 農学研究院, 学術研究員 (80715441)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,510千円 (直接経費: 32,700千円、間接経費: 9,810千円)
2024年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2023年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2022年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
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キーワード | 魚類生殖腺 / 性的可塑性 / 1細胞解析 / 空間的遺伝子発現解析 / 性転換 / 魚類 / 生殖幹細胞 / シングルセル解析 / 1細胞解析 |
研究開始時の研究の概要 |
魚類の性を自在に統御するには、それぞれの種が有する性的可塑性の特徴を細胞レベルで理解する必要がある。本研究では、性転換モデル系に空間的遺伝子発現解析を初めて導入し、生殖腺の性転換の起点になる未分化体細胞の位置情報をもとに生殖幹細胞との相互作用を分子レベルで明らかにする。同時に、各種シングルセル解析と培養系を駆使して研究を進め、“卵形成と精子形成の切り換え”の制御機構を解明する。さらに、雌雄異体魚との比較を行い、将来、全ての魚類において個体、生殖腺、および細胞の性を自在に統御するために必要な“性的可塑性の共通原理”に関する情報を得る。
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研究実績の概要 |
これまでの性転換モデル魚(ホシササノハベラ)を用いた研究結果から、生殖腺の性転換の際に速やかに未分化体細胞の分化が起こり、それに続いて起こる生殖幹細胞との相互作用によって卵形成と精子形成が切り換わることが予想されている。本年度は、生殖腺組織における高深度の空間的遺伝子発現解析のために、PIC(Photo-Isolation Chemistry)法に基づく解析法を構築して解析を進めた。また、小細胞集団からのRNA-seq解析およびシングルセル解析を行った結果、生殖幹細胞を含む細胞集団においてはoct4発現に特徴付けられる細胞が多数を占め、性転換開始に伴いnanogやvasaを発現する細胞群が顕著に増加した。すなわち、生殖幹細胞とそれより分化する細胞の初期の挙動を示していると考えられた。一方、未分化体細胞ではoct4 とsox9の発現に特徴付けられる細胞群が存在し、卵巣時にfoxl2を発現する細胞群も認められた。また、興味深いことに性転換開始に伴いdmrt1を発現する細胞群が出現した。すなわち、性転換魚の生殖腺において未分化体細胞の存在が明示されるとともに、この細胞を起点として顆粒膜細胞からセルトリ細胞への分化への切換えが起こると示唆された。 一方、雌雄異体の小型モデル魚であるメダカを用いて性ステロイド処理による人為的性転換を誘導し、生殖幹細胞の挙動と遺伝子発現機構を解析した結果、性転換の初期に生殖幹細胞のoct4発現が上昇し、その後に低下した。また、oct4の核局在化シグナル(NLS)上流のイントロン領域において、年齢、性、性ステロイド処理に依存したoct4の特徴的なDNAメチル化パターンが見出された。さらに、メダカoct4の機能を時期特異的に阻害した結果、人為的性転換が抑制され、oct4が生殖腺の性的可塑性を制御する主要な因子であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、性転換モデル魚を研究材料として、シングルセル解析と空間的遺伝子発現解析の統合による性的可塑性の分子・細胞機構についての解析を進めており、生殖幹細胞と未分化体細胞の性転換初期の挙動やそれに関わる遺伝子発現機構が明らかになるなど、順調に研究が進展している。また、雌雄異体の小型モデル魚であるメダカにおいても、生殖幹細胞で特徴的に発現するoct4が生殖腺の性的可塑性を制御する主要な因子であることが示されるなど、魚類生殖腺の性的可塑性の分子・細胞機構に関わる重要な成果が得られている。さらに、海産モデル魚のカタクチイワシを用いた解析も進めており、研究はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
性転換魚モデルであるホシササノハベラを材料として、引き続き、空間的遺伝子発現解析とシングルセル解析との統合を進め、単一細胞レベルでの解像度で生殖腺組織における卵形成と精子形成との間の転換のメカニズムを明らかにする。生殖腺組織の形態・位置情報に紐付いた単一細胞レベルでの遺伝子発現プロファイルをCLC genomics workbenchや各種解析パイプラインを用いて比較し、生殖腺の転換時に速やかに変化する小細胞集団の局在と形態の特定を進める。さらに、生殖幹細胞、未分化体細胞、及び小細胞集団について、性転換誘導後に特徴的に変化する遺伝子のリストから、“卵/精子形成の切り換え”に関わると予想される因子を培養実験系などにより解析する。生殖幹細胞の単独培養系、未分化体細胞との共培養系(接触培養や非接触培養)、及び器官培養系を用いる。RNAi、遺伝子導入、ゲノム編集等による各遺伝子の機能欠失/獲得実験や各種阻害剤を利用し、鍵因子とその作用機序を特定する。さらに、未分化体細胞の分化を上位で制御する機構とその分子基盤を解析する。分泌因子に関しては、性ステロイドや生殖腺全体の網羅的遺伝子発現解析において特徴的な挙動を示した因子を候補として解析を進める。 一方、雌雄異体の海産モデル魚であるカタクチイワシと小型モデル魚のメダカにおいても同様に解析を進めるとともに、メダカのノックアウト実験系などを駆使して、性転換魚の解析で候補となった鍵因子の機能解析を進める。
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