研究課題/領域番号 |
22H00405
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
安藤 敏夫 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任教授 (50184320)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
40,170千円 (直接経費: 30,900千円、間接経費: 9,270千円)
2024年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2022年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | 高速AFM / タンパク質 / ダイナミクス / 分子プロセス / バイオイメージング / 低侵襲イメージング / 高速イメージング / 機能動態 |
研究開始時の研究の概要 |
代表者が開発した世界最速の高速AFMは、個々のタンパク質分子の動的な構造とプロセスを直接可視化できる唯一の技術である。高速AFMは世界に普及し、そのバイオ応用研究の成果報告が近年急速に増大している。しかし,機能・構造を乱さずにイメージングできる最高速度は10フレーム/秒(fps)前後であり、この速度では観察できない動的現象と試料系が多く存在する。そこで、装置デバイスの速度性能向上に加え、低侵襲性を向上させる技術を開発することにより、速度性能を更に上げ、標準的なタンパク質分子で100 fpsを実現する。その威力を従来の高速AFMでは困難であった速い動的現象と脆弱なバイオ試料系の観察により実証する。
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研究実績の概要 |
代表者が開発した高速AFMは個々の蛋白質分子の動的な構造とプロセスを毎秒10画像(10 fps)前後の速度で直接可視化できる唯一の顕微鏡である。現在高速AFMは世界中で利用されているが、10 fpsでは観察できない動的現象や試料系が未だ多く存在する。本研究は、代表者が最近開発した新X走査法(OTI)の優れた低侵襲性能を、以前開発したダイナミックPIDフィードバック制御法(D-PID)と組み合わせるなどして、更に向上させ、最終的に100 fpsの実現を目指している。初年度である本年度は、OTIとD-PIDの組み合わせ効果を実証することから開始した。まず、D-PID回路を改造して、閾値を使ったフィードバックゲインの自動調整のパラメータ設定を容易にできるようにした。その結果、比較的脆弱なアクチン線維を対象にした場合、OTI単独では25 fps程度が限界であったが、OTIとD-PIDを組み合わせると、40-50 fpsにまでイメージング速度が向上した。この組み合わせが、フィードバック制御のどのような要素を改善するものであるのかを現在定量的に調べている。100 fpsを目指すには、ハードウェア側の更なる高速化に向けた改良も必須だが、主律速因子である微小カンチレバーの更なる微小化(共振周波数の更なる向上)はメーカーの協力なしには進まない。そこで、2つの戦略で進めた。第一は、メーカーとの共同開発、第二は、質量を見かけ上小さくするM値制御法の開発である。前者は開始したが、未だ成果はない。後者はカンチレバーの超音波励振で試み、共振周波数を2 MHz程度まで上げることができた。但し、超音波の水中伝搬による位相遅れの補償は不安定であるため、光励振用の光学系を作製した。装置開発と並行して、今後試す試料系の調製法を検討した。また、共同研究により、その時々の性能の高速AFMを使って応用研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予想していたOTI法とD-PID法の組み合わせ効果が実際のイメージング実験により確認されたため、100 fps実現への明るい見通しが得られた。また、数学的に検討したM値制御が実際の系で確認されたことも大きな前進である。当初の計画には入っていなかったが、カンチレバーメーカーと共同研究を開始し、更に共振周波数の高いカンチレバーが市場に出る可能性が出てきたことは、更に高速な高速AFMの実現と普及にとって心強い。M値制御は高速AFMを技術開発する研究室で問題なく利用することはできるが、高速AFMの一般ユーザーには調整が面倒であるため利用されない可能性がある。それ故、カンチレバーメーカーの協力が得られたことは大きな前進である。とは言っても、一般ユーザーには叶わない高速性能の達成も代表者に課された重要な課題である。高速AFMの応用研究も進展した。
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今後の研究の推進方策 |
<2年目> (1)OTIとD-PIDの組み合わせによる低侵襲効果のメカニズムの詳細理解。(2)カンチレバーの光励振に基づくM値制御法の確立。(3)比較的脆弱な蛋白質系の場合でも100 fpsに近いイメージング速度が可能であることを実証。(4)技術開発成果の論文準備。(5)共同研究による高速AFMの応用研究を展開。 <3-4年目> 従来の高速AFMではイメージングできなかったタンパク質系と動的現象を実際にイメージング可能であることを実証し、論文にする。開発した技術を普及させるために、高速AFMメーカーに技術移転することも行いたい。共同研究による高速AFMの応用研究を展開。
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