• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

液-液相分離による「ねむり」制御の分子基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H00411
研究種目

基盤研究(A)

配分区分補助金
応募区分一般
審査区分 中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
研究機関北海道大学

研究代表者

野田 展生  北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (40396297)

研究分担者 戸田 浩史  筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (80862010)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
42,380千円 (直接経費: 32,600千円、間接経費: 9,780千円)
2024年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2023年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2022年度: 15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
キーワードねむり / 抗菌活性 / 液-液相分離 / ショウジョウバエ / 天然変性タンパク質 / 液-液相相分離 / NMR
研究開始時の研究の概要

睡眠は神経系を持つすべての動物に保存された現象であり、生命機能維持に不可欠であるが、その分子制御機構および本質的な機能は謎に包まれている。ショウジョウバエで同定された新規の睡眠誘因タンパク質‘Nemuri’は、睡眠制御の鍵を握ると考えられるが、その分子機能は全く不明である。Nemuriは天然変性タンパク質であることから、睡眠制御への液-液相分離の関与が強く示唆された。そこで本研究では、生化学、構造生物学、分子遺伝学、行動遺伝学を駆使して、Nemuriが持つ睡眠誘因活性と、相分離能力との関連を明らかにすることで、相分離という新規概念による睡眠制御機構の解明を目指す。

研究実績の概要

睡眠は神経系を持つすべての動物に保存された必須の生命現象であり、生命体の機能維持に不可欠であるが、その分子制御機構および本質的な機能は謎に包まれている。ショウジョウバエの行動遺伝学したのちスクリーニングから、新規の睡眠誘因活性を持つタンパク質‘Nemuri’が報告され、睡眠制御の鍵を握ると考えられるが、その分子機能は全く不明である。そこで本研究では、生化学、構造生物学、行動遺伝学等を用いてNemuriの性状と相分離能力の分子基盤を明らかにするとともに、それが睡眠誘因活性の発現にどう関係するのかを明らかにする。
昨年度、Nemuriが天然変性タンパク質であることをNMRで確認したが、今年度はNemuriがショウジョウバエS2細胞でどのように挙動するのかを解析した。NemuriはN末端に分泌シグナルを持ち、細胞外へと分泌されるが、その際分泌シグナルの切断に加え、C末端側で切断を受け、アルギニンリッチなペプチドとなることがわかった。GUVを用いた解析の結果、Nemuri全長では膜結合や膜透過がほとんど観察されなかったのに対し、Nemuri断片は膜に強く結合し、さらに膜透過することがわかった。Nemuriはハエが感染症を罹った際に誘導され、睡眠誘引とともに抗菌活性を示すことが知られている。Nemuriの抗菌活性を調べた結果、全長や分泌シグナル切断体はほとんど活性を示さなかったのに対し、Nemuri断片は既知の抗菌薬と同程度の活性を示した。蛍光標識したNemuri断片を大腸菌に振りかけ、ライブイメージングを行った結果、大腸菌の細胞膜に結合後、速やかに細胞質へと移行し、リボソームやRNAが集ることが知られる細胞質両端に球状に集積した。さらにFRAP解析を行った結果、Nemuri断片は極めて高い流動性を示したことから、大腸菌内で相分離液滴を形成していることが強く示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

天然変性タンパク質であるNemuriが、S2細胞において分泌される際にC末端側で切断されること、その結果形成されたNemuri断片は高い細胞膜透過性と抗菌活性を持つことが明らかとなった。Nemuri断片は大腸菌内でリボソーム集積部位に液滴状構造を形成したことから、翻訳阻害により抗菌活性を示す可能性が示唆された。一方Nemuri断片が形成されなくなる変異を導入したNemuriをハエの脳神経系に発現させても睡眠誘引活性が保持されたことから、Nemuri断片の産生は睡眠誘引には必須でないこともわかった。Nemuriは睡眠誘引と抗菌活性という全く異なる2つの活性を持つことが最大の特徴であるが、断片化によりその2つの活性を分担している可能性が初めて明らかとなった。またリボソームとの相互作用が示唆されたことから、抗菌活性に加え睡眠誘引でもリボソームとの相互作用が関係している可能性が浮上し、睡眠誘引活性解明のための足掛かりができたと考えている。

今後の研究の推進方策

大腸菌内で形成されるNemuri断片液滴について、その物理化学的挙動を詳細に解析するとともに、リボソームとの相互作用様式を解析する。In vitroでNemuri断片液滴を形成させ、リボソームとの相互作用を調べるとともに、それが翻訳活性に与える影響を明らかにする。ショウジョウバエS2細胞内でのNemuriの挙動を詳細に解析し、ハエのリボソームに対するNemuriの相互作用および翻訳活性に与える影響、さらにはそれが睡眠誘引に与える影響を解析する。

報告書

(3件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 審査結果の所見   実績報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)

  • [国際共同研究] ペンシルベニア大学(米国)

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] High-Performance Genetically Encoded Green Fluorescent Biosensors for Intracellular <scp>l</scp>-Lactate2024

    • 著者名/発表者名
      Hario Saaya、Le Giang N. T.、Sugimoto Hikaru、Takahashi-Yamashiro Kei、Nishinami Suguru、Toda Hirofumi、Li Selene、Marvin Jonathan S.、Kuroda Shinya、Drobizhev Mikhail、Terai Takuya、Nasu Yusuke、Campbell Robert E.
    • 雑誌名

      ACS Central Science

      巻: 10 号: 2 ページ: 402-416

    • DOI

      10.1021/acscentsci.3c01250

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Lactate biosensors for spectrally and spatially multiplexed fluorescence imaging2023

    • 著者名/発表者名
      Nasu Yusuke、et al.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 号: 1 ページ: 6598-6598

    • DOI

      10.1038/s41467-023-42230-5

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Immobilization of lipid nanorods onto two-dimensional crystals of protein tamavidin 2 for high-speed atomic force microscopy2023

    • 著者名/発表者名
      Noshiro Daisuke、Noda Nobuo N.
    • 雑誌名

      STAR Protocols

      巻: 4 号: 4 ページ: 102633-102633

    • DOI

      10.1016/j.xpro.2023.102633

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ストレスによって誘因される睡眠の分子メカニズム ~新規睡眠誘引因子“Nemuri” の作用機序の解明~2023

    • 著者名/発表者名
      戸田 浩史
    • 学会等名
      第23回 日本蛋白質科学年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ストレスによって誘因される睡眠の分子メカニズム ~新規睡眠誘引因子“Nemuri” の作用機序の解明~2023

    • 著者名/発表者名
      戸田 浩史
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 睡眠誘因因子「Nemuri」の物性の理解へ向けて2022

    • 著者名/発表者名
      戸田 浩史
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi