研究開始時の研究の概要 |
体内時計のリズムを再活性化することによって病気は治るのか? その突破口の一つとして、私共は本年、加齢によって減衰した眼局所の酵素活性リズムを再活性化することによって、これまで原因不明の蒸発亢進型ドライアイ症を治療できることを見出した(Sasaki et al., Nat Aging, 2022)。これを足掛かりに、本研究では、生体リズムを基盤とした「時間医薬科学の創成」を目指す。時間をコントロールして病気を治すを合言葉にこれまでの疾患概念や創薬の在り方に新たな視座をもたらすのみならず、具体的なunmet medical needsに対する新しい治療薬・治療法を提案するための基礎研究を展開する。
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研究実績の概要 |
私共は本年、加齢によって減衰した眼局所の酵素活性リズムを再活性化することによって、これまで原因不明の蒸発亢進性ドライアイを治療できることを見出した(Sasaki et al., Nat Aging 2022)。これを足掛かりに、本研究では、生体リズムを基盤にした時間医薬科学の創成を目指す研究を行った。具体的には、当初の計画に従って、体内時計の中枢を標的としたG蛋白質共役受容体シグナルに基づく中枢リズム調整薬の開発研究を行い、体内時計の光依存的な位相調節にはオーファン受容体Gpr176と神経ペプチドNmuおよびNmsの両者の協調的な働きが必要であること(Yamaguchi et al., Biol Pharm Bull 45:1172-117, 2022)、光刺激によって誘導される低分子量Gタンパク質Gemを介したネガティブフィードバックが働き、過剰な光位相変化を防いでいることを明らかにするとともに(Matsuo et al., Cell Rep 39:110844, 2022)、皮膚の概日時計機構に着目し、時計遺伝子によってコントロールされるケモカインCXCL14が皮膚の抗菌免疫応答の強さの日内変動を生み出していることを明らかにした(Tsujihana et al., Proc Natl Acad Sci USA 119:e2116027119, 2022)。このように当初の目標達成に向けて研究を推し進めることができたといえる(土居ら, 実験医学 40, 2168-2171, 2022)。
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