研究課題/領域番号 |
22H00452
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大野 博司 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50233226)
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研究分担者 |
加藤 完 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 専門技術員 (20632946)
伊藤 崇 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 客員研究員 (20823561)
宮内 栄治 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (60634706)
下川 周子 国立感染症研究所, 寄生動物部, 室長 (60708569)
中西 裕美子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 客員研究員 (10614274)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,380千円 (直接経費: 32,600千円、間接経費: 9,780千円)
2024年度: 13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2023年度: 13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2022年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
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キーワード | 宿主ー腸内細菌叢相互作用 / 統合オミクス解析 / 自己免疫疾患 / アレルギー / 糖尿病 / 腸内細菌叢 / メタボローム / 小児アレルギー / エンドリシン / 喘息 / プロピオン酸 / GPR41 / 2型糖尿病 / トランス脂肪酸 / 腸管バリア / 多発性硬化症 |
研究開始時の研究の概要 |
腸内細菌叢は宿主の生理や病理に多大な影響を及ぼすと考えられるがその詳細は未だ明らかではない。研究代表者は「統合オミクス」解析手法を世界に先駆けて提唱・実証することで、長年にわたり宿主-腸内細菌相互作用が宿主の生理・病理に及ぼす影響の分子機構について世界をリードするユニークな研究成果を挙げてきた。本研究提案では、それをさらに発展させる目的で、腸内細菌叢の病理的意義について、i) 小児食物アレルギーおよび気管支喘息、ii) 膵嚢胞性腫瘍、iii) 2型糖尿病・耐糖能異常、iv) 多発性硬化症、v) 1型糖尿病の各疾患における、腸内細菌叢が病態の形成や制御・抑制に腸内細菌やその代謝物が果たす役割の分子機構を解明する。
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研究実績の概要 |
i)新生児コホートで収集した1週、1ヶ月、1歳時便の解析から、1週の便がその後のアトピー性皮膚炎の罹患と最もよく相関する可能性が示唆され、その代謝物候補として水酸化脂肪酸を同定した。 ii)新生児コホート研究から、生後1ヶ月便におけるプロピオン酸濃度が低いと5才時における気管支喘息を発症しやすいことを見出した。マウス気道炎症モデルにおいても、授乳期のプロピオン酸投与が、成長後のイエダニアレルゲンによる気道炎症や、気道炎症に関与する好酸球の気道への遊走を有意に抑制することを明らかにした。さらに、プロピオン酸受容体のひとつであるGPR41欠損マウスでの解析から、GPR41がこの気道炎症抑制に関与すること、GPR41は免疫細胞の中でも好酸球に特異的に強く発現しており、プロピオン酸投与により好酸球において自然免疫受容体であるTLR2、TLR8、TLR9遺伝子の発現増強が起こることから、これらTLRの気道炎症制御への関与が示唆された。 iii)ヒトで耐糖能異常と正に相関する細菌として同定したDorea属菌特異的に作用する可能性のあるエンドリシン2種について、大腸菌発現系による精製を行った。 iv)不飽和トランス脂肪酸であるエライジン酸は食用油に含まれ、摂取されたエライジン酸が体内に吸収されることで動脈硬化や心血管疾患、コレステロール代謝や脂肪肝の発症に関与することが報告されている。我々は、糖尿病発症増悪に寄与する腸内細菌Fusimonas intestiniが、脂肪食中の不飽和シス脂肪酸であるオレイン酸からエライジン酸を賛成し、エライジン酸が腸管局所で腸管上皮細胞のタイトジャンクション遺伝子発現を抑制することで腸管バリア破綻から慢性炎症、肥満・糖尿病を来すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト出生コホートから、生後1週便における腸内細菌由来の水酸化脂肪酸がその後のアトピー性皮膚炎の発症抑制に関与する可能性を見出したこと、また生後1ヶ月の便中プロピオン酸の低下が、その後の気管支喘息の素因となる可能性を示し、さらに気管支炎症の発症に寄与する好酸球上に発現するGPR41がプロピオン酸に反応してToll様受容体の発現増強が起こることが気道炎症に保護的に働く可能性を示唆した。 2型糖尿病に関しては、糖尿病発症増悪に寄与するFusimonas intestiniが、食物摂取された脂肪酸から不飽和トランス脂肪酸であるエライジン酸を産生することで腸管バリア傷害を来たし、全身の軽度慢性炎症を誘導することで肥満や耐糖能異常の増悪に寄与するというメカニズムを明らかにした。 このように、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
i)新生児コホート解析から生後1週の便中の水酸化脂肪酸の増加がその後のアトピー性皮膚炎の発症を抑える可能性が示唆された。そこで、マウスアトピーモデルにおいて、離乳前の子マウスに水酸化脂肪酸を投与し、成長後のアトピー発症に及ぼす影響を検討する。 ii)同じく新生児コホート研究とイエダニ抗原によるマウス気道炎症モデルから、授乳期の腸内プロピオン酸が好酸球の機能修飾により成長後の気道炎症抑制に繋がることを示唆する結果を得た。そこで、授乳直後及び成長後の腸管並びに肺組織の1細胞網羅的エピゲノム制御や遺伝子発現制御を授乳期のプロピオン酸投与の有無で比較することで、プロピオン酸が気道炎症抑制に繋がる好酸球を含む免疫細胞のエピゲノムフットプリントの蓄積・持続を引き起こしている可能性を検証する。 iii)大腸菌発現系により精製した2種のDorea属菌特異的に作用する可能性のあるエンドリシンの、Dorea属菌に対する抗菌作用を検証する。 iv)エライジン酸を産生する腸内細菌はFusimonas intstini以外にも存在することを見出している。そこで、腸管内で産生されたエライジン酸を除去することが肥満や糖尿病の発症予防・制御に繋がると考え、エライジン酸包摂体を用いたマウス腸内の遊離エライジン酸除去法の確立を目指す。
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