研究課題/領域番号 |
22H00474
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分54:生体情報内科学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
島野 仁 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20251241)
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研究分担者 |
大野 博 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20847909)
関谷 元博 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50420245)
宮本 崇史 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50740346)
松坂 賢 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70400679)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
2024年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2023年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2022年度: 18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
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キーワード | 脂質代謝 / 脂肪酸 / 代謝制御 / 脂質 / 脂肪肝炎 / エネルギーセンサー / 転写因子 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、小胞体膜の脂質環境に応じてSREBP-1の切断を制御する新規プロテアーゼRHBDL4と、脂肪酸CoAと結合してエネルギー代謝を制御する転写共因子CtBP2を見出した。本研究では、Elovl6による脂肪酸鎖長を軸とした脂質分子種の多様性の生理的・病態生理的意義を普遍的に理解するとともに、RHBDL4およびCtBP2による脂肪酸の質の感知機構と代謝恒常性維持機構を臓器横断的に分子レベルで明らかにし、生活習慣病に対する臓器脂質環境およびその感知・応答機構の制御に立脚した新規治療法開発の分子基盤を確立することを目的とする。
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研究実績の概要 |
脂質は多様性に富む生体分子であり、量のみならずその質的バランスの破綻が生活習慣病をはじめとする様々な疾患の病態基盤を成すことが次第に明らかになってきた。申請者らは、転写因子SREBP-1による内因性脂質合成制御機構や脂肪酸伸長酵素Elovl6による脂肪酸組成制御が、肥満、脂肪肝、2型糖尿病、動脈硬化、がんなど様々な病態形成に関わることを明らかにしてきた。最近我々は、小胞体膜の脂質環境に応じてSREBP-1の切断を制御する新規プロテアーゼRHBDL4と、脂肪酸CoAと結合してエネルギー代謝を制御する転写共因子CtBP2を見出した。 本研究では、脂肪酸伸長酵素Elovl6が制御する脂質多様性の全容とその生理的・病態生理的意義を肝臓および脳で解明するとともに、RHBDL4およびCtBP2の脂肪酸センサーとしての機能を解明し、脂肪酸多様性による生体恒常性維持とその破綻による疾患発症メカニズムを明らかにすることを目的とする。脂肪酸の鎖長や不飽和度とその位置の違いによって生み出される脂質多様性の変化は、セントラルドグマとは異なる作用軸でその作動環境をチューニングすることにより広範囲に渡る生理作用に影響しており、その破綻が様々な病態や疾患リスクにつながると考えられる。我々が独自に見出したElovl6、RHBDL4およびCtBP2の機能を解明することは、脂質多様性破綻による病態形成の「場」とその制御に関わる先駆け研究となる。今後高齢化の加速が予想される中、未だ有効な治療法がない生活習慣病や神経変性疾患などに対する新規治療オプションとして、広範な臨床応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NASHおよび神経変性疾患におけるElovl6の意義の解明と新規治療法 開発 1-1. NASHにおけるElovl6の役割の解明と新規治療法開発 :Elovl6欠損はミトコンドリア固有のリン脂質であるカルジオリピンの脂肪酸組成を変化させ、脂肪肝におけるミトコンドリアの形態・機能異常の改善を観察した。脂肪酸組成の変動と、ミトコンドリア機能障害の構造と機能両面からの病態変動が相関していることを確認し、ミトコンドリアの脂質の病的変化が原因であることが示唆された。 また病的脂質リモデリング酵素ALCAT1が病態に関与しており治療標的になることを示した。さらにミトコンドリアのスーパーオキサイド量、膜電位、ミトコンドリアスーパーコンプレックスの構成変化も伴っていることも観察した。 現在ERとのコンタクトサイトMAMOやLipid Dropletとの構造変化や関連タンパクをproteomicsで解析してメカニズムの解明をめざしている。1-2. Elovl6の阻害による神経変性疾患の病態改善効果の解明 :Elovl6の阻害がゴーシェ病モデルマウスの劇的改善をGBA阻害剤CBEによる薬剤モデルに加え脳特異的GBA欠損マウスとの交配でも観察した。改善は症状、フェノタイプに加え、マイクログリアやアストロサイトの活性化マーカーあるいは脳内炎症や神経細胞死関連遺伝子を抑制し、中枢神経症状や病理を劇的に改善することを確認した。1-3. Elovl6を標的としたアンチセンス核酸の開発は高度の抑制と肝障害の軽微なヒトマウス共通ASO配列を見出した。 2.脂肪酸不飽和度を感知する新規SREBP-1プロテアーゼRHBDL4の機能解析は、PNAS Nexusに発表した3.NADH/脂肪酸CoAを感知する転写共因子CtBP2の膵ベータ細胞保護作用、インスリンへの機能解析についてはCell Reportに発表した。
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今後の研究の推進方策 |
1.NASHおよび神経変性疾患におけるElovl6の意義の解明と新規治療法開発1-1. NASHにおけるElovl6の役割の解明と新規治療法開発:我々の開発したヒトNASH様病態マウスモデルを用い、全身または肝細胞におけるElovl6の欠損がNASH、肝線維化、そして肝がんを抑制することを検証する。リピドミクスおよびscRNA-seqを行い、病態制御脂質を特定その機序を解明する。Single cell解析あるいは細胞特異的KOで、肝細胞、クッパー細胞、星細胞それぞれのElovl6の関与を差別化する。1-2. Elovl6の阻害による神経変性疾患の病態改善効果の解明:脳の病理解析、リピドミクスおよびscRNA-seq解析を実施し、Elovl6阻害による脳の脂質プロファイルの変化と病態との関連を解明し、神経変性疾患の新規治療標的を特定する。その他の疾患モデルに延伸し普遍的神経変性疾患治療法とする。1-3. Elovl6を標的としたアンチセンス核酸の開発:Elovl6を標的とする創薬に向けて、ヒトおよびマウスのElovl6に対する阻害効果の高いアンチセンス核酸を得て、まずは肝臓、脳におけるElovl6阻害効率を評価する。 2.脂肪酸不飽和度を感知する新規SREBP-1プロテアーゼRHBDL4のリポゾーム機能解析:脂肪酸の違いによる小胞体膜脂質環境の変化がRHBDL4によるSREBP-1の切断活性化に及ぼす影響を解析。蛍光顕微鏡を用いたlive cell imagingや光褪色後蛍光回復法を行い、小胞体膜の形態や流動性を捉える。リポゾームを用いたアッセイ系を確立し分子シミュレーション解析する。 3.脂肪酸CoAによって制御される転写共因子CtBP2の機能解析 3-1.特異的KOを用い視床下部CtBP2の食欲機能、酸化ストレス、redox state, 老化への影響の解析
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