研究課題/領域番号 |
22H00485
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分56:生体機能および感覚に関する外科学およびその関連分野
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小川 毅彦 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (50254222)
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研究分担者 |
鈴木 貴紘 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 客員主管研究員 (00553661)
佐藤 卓也 横浜市立大学, 医学部, 講師 (70599505)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2023年度: 16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 精子形成 / 器官培養 / ヒト組織 / 男性不妊症 |
研究開始時の研究の概要 |
試験管内において精子を産生する技術は、精子形成メカニズムの解明や精子形成障害の病態解明に応用でき、小児がんサバイバーに凍結保存精巣組織からの精子産生と産児にもつながる希望を与える。申請者は、2011年にマウス精巣組織を用いて試験管内精子形成法を開発し、精子幹細胞から精子を産生することに世界で初めて成功した。しかし、その後10年間、ヒト試験管内精子形成に進展はなかった。その理由として、ヒト精巣組織に生じる高度の線維化がある。また試験管内精子形成に有効な因子群の同定が遅れ、培養液の改良が進まなかったことも大きい。本研究ではこれらの課題を解決し、試験管内ヒト精子形成法の完成を目指す。
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研究実績の概要 |
試験管内ヒト精子形成法の完成を目指して研究を開始して2年が経過した。まず培養精巣組織に生じる創傷治癒現象である高度の線維化(硬丸化)の制御を目指して、各種、薬剤(抗線維化薬、抗炎症薬、抗酸化剤、等)を培養液に加えてヒト精巣組織を培養し、硬丸化を抑制する薬剤・試薬を探索してきたが、一定程度ではあるが硬丸化を抑制できる培養液を開発することができてきた。また精子形成誘導を促進する因子の候補を幾つか検討している。そのような実験の中で、カニクイザル精巣組織を用いた培養で成果がでてきている。特に、3.8歳齢のカニクイザルの場合、精巣は陰嚢内に下降しておらず、組織学的にはちょうど精子形成が始まり、精巣内のごく一部では減数分裂の像が観察されるようになる。その精巣組織を用いた培養実験により、培養6週間後と8週間後に明瞭な減数分裂像(特にパキテン期)を観察することができた。ほとんどの精細管内に比較的多くの精原細胞も観察され、継続的な精子形成が進行していると考えられた。他の研究室からの報告では、減数分裂像の出現は見られず、培養期間と共に精原細胞も減少していくことが知られているので、上記の所見は期待できる新所見である。 これらの実験は凍結保存した精巣組織を用いて行っているが、凍結方法が組織中の細胞のviability に影響していることから、凍結方法の見直しを行った。保存液の種類は培養結果にも影響することが分かったので、その後は適切な保存液で凍結保存するようにしている。その結果、安定した成果が得られるようになった。引き続き、様々な角度から培養条件を検討し、半数体産生を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硬丸化現象の制御が予想以上に困難であり、その完全な解決には至っていない。ただし、培養液組成の工夫で、硬丸現象をある程度制御できることが分かってきた。そのことと符合するように、培養結果にも新知見が得られてきた。精子形成が始まっていない3.8歳齢カニクイザルの精巣組織を培養し、減数分裂中期(パキテン期)まで精子形成を誘導することに成功した。これは世界初の成果である。半数体(精子細胞)産生に至れば、顕微授精実験も可能になることから、それが一つの目標であるが、引き続き培養条件の改良を続けていく。
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今後の研究の推進方策 |
硬丸化の制御がある程度は可能になったが、長期間の培養においては硬丸化は少しずつ進行する。硬丸化を完全に制御できる方法の探索を継続する。未成熟カニクイザル精巣組織を用いた実験を継続するとともに、マーモセット精巣を用いた培養実験も開始し、ヒトへの応用の基盤とする。
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