研究課題/領域番号 |
22H00487
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
天野 敦雄 大阪大学, 大学院歯学研究科, 特任教授 (50193024)
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研究分担者 |
久保庭 雅恵 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (00303983)
中村 恵理子 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (00755069)
竹内 洋輝 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (40572186)
坂中 哲人 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (90815557)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
2024年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2023年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2022年度: 18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
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キーワード | P. gingivalis / 生理活性メタボライト / メタボローム解析 / バイオフィルム / エピジェネティクス解析 / 細胞内定着 / 細胞内輸送 / 上皮バリア / ポリアミン / 歯周病 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、3次元歯周組織モデル、先天性疾患責任遺伝子をノックアウト・ヒト歯肉上皮細胞株、エピジェネティクス解析を用いて、①上皮バリアを突破したP. gingivalisの歯周組織内での生存の成否を制御する分子基盤の同定、②細胞内のP. gingivalis が細胞を傷害する機序の解明、および③先天性疾患における上皮バリアの破綻機序の解析、を実施する。
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研究実績の概要 |
1. 歯肉上皮細胞層の上皮バリア機能 歯肉上皮細胞層は上皮バリアとして歯周組織を守っている。これまでに歯周病菌Porphyromonas gingivalis が歯肉上皮細胞のタイト・ジャンクション(TJ)関連タンパク質を選択的に分解し、歯周組織内への異物透過性を亢進させることを報告した。令和4年度は、歯周病を随伴する症候群の内、Cohen syndrome の責任遺伝子VPS13B をノックダウンまたはノックアウトした歯肉上皮細胞を作成し、TJ関連タンパク質の局在および遺伝子発現を共焦点顕微鏡およびリアルタイムPCR法で観察した。その結果、VPS13B 遺伝子を減少または欠失させた細胞では、特定のTJ関連タンパク質の細胞膜での局在が減少する一方、同タンパク質の遺伝子発現には変化がないことが示された。この結果は、Cohen syndromeの責任遺伝子がTJ関連タンパク質の細胞内輸送に影響を与え、歯周バリアの抵抗力を低下させる可能性を示している。 2.歯肉上皮細胞層の遺伝子発現と翻訳後修飾 これまでに、ヒト歯肉上皮細胞の解糖系の酵素の遺伝子発現がP. gingivalis感染の影響を受けること、ピルビン酸の下流の代謝産物であるアセチルCoAや乳酸が関与する翻訳後修飾にP. gingivalis感染を及ぼす可能性を示した。令和4年度は、解糖系近傍の酵素群の発現状態とリン酸化状態を、抗体アレイによって得られたデータを用いて検討した。その結果、アセチルCoAカルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸キナーゼの発現量やリン酸化修飾に変動が生じ、その活性が調節されている一方、ピルビン酸デヒドロゲナーゼの発現状態には変化がないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 歯肉上皮細胞層の上皮バリア機能 短期目標は、歯周病を随伴する症候群の責任遺伝子をノックダウンまたはノックアウトさせた歯肉上皮細胞を作成し、上皮バリア機能への影響を担うTJ関連タンパク質への影響を形態学的に観察することであった。本研究計画の1年目に、Cohen syndromeの責任遺伝子をノックアウトまたはノックアウトさせた歯肉上皮細胞モデルを作成し、TJ関連タンパク質の局在を、免疫組織蛍光染色を用い観察する方法を確立することができた。令和4年度の目標は疾患モデル細胞の機能異常の解析のために必要であり、順調な進捗を得た。 2.歯肉上皮細胞層の遺伝子発現と翻訳後修飾 P. gingivalis感染によって生じるヒト歯肉上皮細胞の解糖系の代謝変動について、そのメカニズムを詳細に検討し、新たな知見を得た。これは、翻訳後修飾のうち、アセチル化の官能基を提供する化合物であるアセチルCoA、およびラクチル化の官能基を提供する化合物であるラクチルCoAの産生経路へのP. gingivalis感染の影響を理解する上で重要な知見である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 歯肉上皮細胞層の上皮バリア機能 これまでの研究により、歯周病の宿主要因の新たな解析対象のひとつが歯肉バリア機能である可能性が示された。また、歯周病を随伴する症候群の責任遺伝子が歯肉上皮細胞のメンブレントラフィックに関与する可能性も明らかになった。今後は、上記症候群の疾患モデル細胞の機能異常を、細胞内の小胞輸送の観点から形態学的に解析する。 2.歯肉上皮細胞層の遺伝子発現と翻訳後修飾 今年度は、精製ヒストンタンパク質を試料とし、P. gingivalis感染によって変動が生じる可能性が高いラクチル化、アセチル化、シトルリン化を特異的に検出する抗体を用いてウエスタンブロッティングを行い、顕著な変化のあった翻訳後修飾を検出する。次に、P. gingivalis感染により変化があった翻訳後修飾について、ターゲット修飾抗体を用いた免疫沈降法を実施する。免疫沈降法によって得られたタンパク質画分をSDS-PAGEにて展開し、コントロールとの比較により、ターゲット修飾を受けているヒストンタンパク質を同定する。ターゲット修飾を受けているヒストンタンパク質の中で、非感染細胞に比して感染細胞で検出量が顕著に変動しているバンドを分析対象バンドとしてゲルから切り出し、MS/MSイオンサーチにより翻訳後修飾部位同定と修飾ペプチドの定量を実施する。
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