研究課題/領域番号 |
22H00488
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福本 敏 九州大学, 歯学研究院, 教授 (30264253)
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研究分担者 |
吉崎 恵悟 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10507982)
山田 亜矢 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (40295085)
千葉 雄太 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10821986)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,990千円 (直接経費: 32,300千円、間接経費: 9,690千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
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キーワード | エナメル芽細胞 / 歯の再生 / 歯原性上皮細胞 / 石灰化 / エナメル質 / 歯の発生 |
研究開始時の研究の概要 |
歯の最表層に存在するエナメル質は生体内で最も硬い組織であるが、齲蝕などにより破壊されると再生させることが困難であり、現在は人工物での修復が行われている。一度破壊されたエナメル質を再生させる技術を開発するために、エナメル質の石灰化の分子メカニズムを明らかにすることが本研究の目的である。またiPS細胞などの細胞を用いた歯の再生技術はある程度確立されてきたが、口腔内でのエナメル質再生には細胞を用いない方法で行う必要がある。そこで細胞に依存しないエナメル質再生の基盤技術の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
生体内で最も硬いエナメル質の再生は、硬組織再生の中でも極めて難しい課題あり、一度喪失したエナメル質は再生は不可能であることから、人工物を用いた修復が行われている。先天的なエナメル質形成不全や、齲蝕等による後天的なエナメル質破壊に対し、新たな治療法としてのエナメル質再生技術は、次世代歯科再生療法として期待される。しかしながらエナメル質形成に関わるエナメル芽細胞分化に関しては未だ不明な部分も多く、特に成熟期エナメル芽細胞の機能に関しては、ほとんど解明されていないのが現状である。そこで本研究では、歯の形成過程における歯原性上皮細胞の各種細胞(内外エナメル上皮、中間層細胞、星状網細胞)への分化機構の解明、その中でも内エナメル上皮から分化するエナメル芽細胞の成熟過程における石灰化機構を明らかにし、これらの知見を用いた新たな「エナメル質再生」ならびに「細胞に依存しない硬組織再生」技術の開発を目的としている。 その中で、マウスの臼歯及び切歯の歯胚を用いてscRNAシークエンス解析を行い、特にエナメル芽細胞集団において、より分化の後期に発現する遺伝子群の同定に成功した(具体的な分子名に関しては現時点で非公表)。またこれまで成熟期エナメル芽細胞に発現の認められたGpr111について、エナメル質の形成状況を検討した結果、重度のエナメル質形成不全症を呈することが明らかとなった。EDX解析にて形成されたエナメル質の元素分析を行った結果、CやOの含有量が増加していたことから、エナメル質に有機成分の残存があるために、石灰化不全を呈している可能性が示唆された。さらにGpr111の発現量の変化は、タンパク分解酵素の一つであるKlk4の発現に影響を与えていた。つまりGpr111は細胞外pHの変化に応答し、Klk4の発現を誘導することでエナメルタンパクの分解を促進し、石灰化を誘導している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究成果は、scRNAシークエンス解析により、成熟期エナメル芽細胞に特異的に発現する分子群の網羅的な解析に成功した。またこれまで当研究室で同定していたGpr111に関しては、遺伝子欠損によるエナメル質形成不全症の表現系の解析、Gpr111のpH変化による発現変化、さらにGpr111がKlk4などのタンパク分解酵素の発現を制御し、高度に石灰化するエナメル質の形成過程に一部を担っていることを明らかにすることができた。Gpr111欠損マウスの解析に関しては、すでにFASEB Jの2023年4月号に掲載されることが決定しており、順調な成果につながっていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
成熟期エナメル芽細胞に発現し、ハイドロキシアパタイトの形成過程における水素イオンの代謝に関わるGpr115と、今回機能の一部を明らかにしたGpr111は、そのpH変化に対する応答性や発現時期が少しずれており、類似の構造を持つ2分子がタイミングをずらしながら発現し、ハイドロキシアパタイトの結晶化におけるpHに低下に関しての緩衝能の発揮と、タンパク分解のプロセスを厳密に制御している可能性が考えられた。そこで歯原性上皮細胞株SF2を用いて、細胞外pHを変化させた際の、Gpr111及びGpr115の発現変化、Car6やKlk4の発現タイミングの調整、さらにはエナメル基質の分解能や吸収能についてのin vitro解析を実施する。 次に、成熟期エナメル芽細胞に特異的に発現する遺伝子群のスクリーニングによて想定された分子(約20分子)において、各分子の組織内発現を免疫組織学的に検討する。特にGpr111やGpr115と同様にpHの変動により機能を発揮する分子に着目し、個々の分子の遺伝子改変マウスや過剰発現や発現抑制(siRNA)を行うことで、その機能を明らかにする。
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