研究課題/領域番号 |
22H00498
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
井澤 淳 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20582349)
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研究分担者 |
大高 洋平 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00317257)
今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123)
上原 信太郎 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (30725130)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,380千円 (直接経費: 32,600千円、間接経費: 9,780千円)
2024年度: 12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
2023年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
2022年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
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キーワード | 運動学習 / リハビリテーション / 強化学習 / 身体性 / 計算論的神経科学 / メタ学習 / 脳卒中 / 小脳 / 運動前野 |
研究開始時の研究の概要 |
過去の経験や環境変動,報酬情報などの多様な条件によって運動学習スピードが受動的に変化することが示されている.このような「学習の仕方に対する能動的学習」=「メタ身体運動学習」を実現する脳内基盤を解明し,個人の学習スピードを予測し適切に調節する基盤を確立することは,学習効果向上の理解と支援技術の開発に繋がるため身体教育に対する貢献が期待できる.メタ身体運動学習が①小脳=「運動適応」②高次運動野=「学習パフォーマンスの認知」③大脳基底核=「強化メタ学習」の3部位の連携によって行われるという作業仮説を設定し,メタ身体運動学習の脳内責任部位と広域計算ネットワークを明らかにする.
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研究実績の概要 |
当初の目標としていたメタ学習タスクの効果を検証するためのシミュレーションを実施しました。このシミュレーションは、視覚運動回転タスクを拡張し、運動修正学習のメカニズムを探るための基盤となりました。具体的には、運動方向と視覚カーソル間に誤差を与え、この誤差に基づいて行動修正を促す学習プロセスをシミュレートしました。これにより、学習効果の残効を測定し、長期的なスコア向上に寄与する要因の解析が可能となりました。また、人間被験者を対象にした検証実験も行い、メタ学習タスクの実際の効果を評価しました。これには、学習者に対して行われたスコア評価が含まれ、これが長期学習のモチベーション向上にどのように影響するかを観察しました。 TMS実験では、小脳に対する経頭蓋磁気刺激を用いて運動野の抑制効果を測定しました。この実験から得られたデータは、小脳と運動野がメタ学習プロセスにおいてどのように機能するかを解明するための重要な手がかりを提供しました。この初期データは、小脳と運動野のメタ学習における役割の同定に不可欠です。 脳卒中患者に関する患者データの蓄積とその解析を行うことで、リハビリテーション訓練の効果を評価するための基盤データが構築されました。これにより、リハビリテーション訓練前の運動学習率とメタ学習能力の評価、そしてその低下が機能回復にどのように関与するかを解明するための準備が整いました。 最後に、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いた実験の準備を進め、メタ学習タスク中の脳活動の詳細な解析を行う準備が整いました。これにより、メタ学習の計算論的および生理学的基盤をさらに詳細に解明することが期待されます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画に従い、シミュレーション、ヒト実験、TMS実験、患者データの蓄積、およびfMRI実験の準備を進めました。これらの成果から、研究は全体として順調に進展しています。具体的には、メタ学習に関するシミュレーションで視覚運動回転タスクを基に運動修正学習のメカニズムを確立し、学習効果の残効を明らかにしました。また、ヒト実験を通じてメタ学習タスクの効果を評価し、被験者の行動変化と長期影響を解析しました。 TMS実験では小脳に対する刺激を用いて運動野の抑制効果を測定し、小脳と運動野のメタ学習プロセスにおける機能を解明しました。脳卒中患者に関するデータ蓄積も進め、リハビリテーション訓練効果の基盤を構築しました。これにより、訓練前の運動学習率とメタ学習能力の評価が可能となり、機能回復に関わる要因を明らかにする準備が整いました。 また、fMRI実験の準備が進行中で、メタ学習タスク中の脳活動の解析準備が整いつつあります。
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今後の研究の推進方策 |
データ計測に関して順調に実験数を重ねており、実験の蓄積によって当初の目標が達成できるみこみです。特に、シミュレーションとヒト実験については計画通り進行し、目標を達成しました。すでに論文化を終了しており、この計算論の中心に、脳神経基盤に関する研究を進めることになります。 具体的には、TMS実験においては、小脳だけではなく運動前野の役割にも注目し、脳全体が、メタ学習のなかでどのような計算ネットワークを構築するのかを明らかにしていく予定です。この際、fMRI実験と被験者をシェアするなどの工夫によって、脳構造画像に基づいた精度の高い効率的な刺激実験を進めていく予定です。 患者データに関しては、順調に被験者数を蓄積しており、今後は被験者数を増やすことと、各患者の脳損傷部位の特性とメタ学習効率との関係を中心に解析をしていくことになります。 fMRI実験に関しては、現在実験機器開発や、実験パラダイムの精査を行っているところであり、予備実験の段階ではありますが、計算論的モデルに基づいたBOLDデータの予測に基づいたパラダイムの最適化を行っており、モデルの開発の終了によって今後の研究が加速していく予定です。 今後はさらなる研究の加速化を目指し、各チーム間の協力体制を整備し、頻繁な情報交換に基づいて、研究推進を確実なものにしていく計画です。
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