研究課題/領域番号 |
22H00499
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
西保 岳 筑波大学, 体育系, 教授 (90237751)
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研究分担者 |
高橋 英幸 筑波大学, 体育系, 教授 (00292540)
藤井 直人 筑波大学, 体育系, 助教 (00796451)
本田 靖 筑波大学, 体育系, 名誉教授 (20165616)
辻 文 県立広島大学, 公私立大学の部局等(広島キャンパス), 准教授 (40707212)
樽味 孝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 上級主任研究員 (40825858)
松井 崇 筑波大学, 体育系, 助教 (80725549)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2022年度: 16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
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キーワード | 熱中症 / 換気亢進 / 運動 / 高体温誘発性換気亢進 / 暑熱環境 / β-アラニン / 高体温誘発性換気亢進反応 / 暑熱 / 炭酸水素ナトリウム |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、暑熱下運動時の熱中症について、換気反応を加味した新しい発症メカニズムとして「高体温誘発性換気亢進」を提唱し、この新説の基盤となる研究で世界をリードしている。近年、自発的な呼吸コントロールや運動前炭酸水素ナトリウム摂取などによる呼吸制御によって、この高体温誘発性換気亢進を抑制できることが、我々の研究から明らかとなった。次の飛躍的な展開として、この高体温誘発性換気亢進の抑制が、暑熱下運動パフォーマンスや運動中・後の生理・認知判断機能に及ぼす影響やその奏功メカニズムを、従来の環境・運動生理学的視点に認知脳科学的・栄養生化学的視点を加えて多角的に検討する。
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研究実績の概要 |
3つの実験を行った。 1)β-アラニン摂取が暑熱下中強度運動時の高体温誘発性換気亢進反応に及ぼす影響を検討した。対象者は(18名)で、β-アラニン (n = 9) もしくはプラセボ (n = 9) を2週間 (6.4 g/日) 摂取する前後で、暑熱下 (35°C/50%RH) 中強度 (50%最高酸素摂取量) 一定負荷運動を行った。また、中強度運動に続いて高強度 (75%最高酸素摂取量) 一定負荷運動を疲労困憊まで行い、パフォーマンス (運動継続時間) を評価した。その結果、β-アラニン摂取によって暑熱下中強度運動時における換気亢進の深部体温閾値および傾きは変化せず、同一深部体温時の換気量も低下しなかった。しかし、中強度運動時のRPEや呼吸努力度は、β-アラニン摂取後に摂取前よりも低値を示した。また、高強度運動時において、β-アラニン摂取後は摂取前よりも換気量が抑制され、運動継続時間が延長した。 2)暑熱下中強度運動中のカフェイン摂取が、①高体温誘発性換気亢進反応と脳血流量低下反応に及ぼす影響、②その後の高強度運動の継続時間に及ぼす影響に関して検討した。対象者(13名)は、暑熱下 (気温35℃、湿度50%) 中強度 (55%最高酸素摂取量) 一定負荷運動を30分間行った。運動開始4-5分目にブドウ糖 (プラセボ) もしくはカフェインを摂取した。運動開始30分目からは高強度 (90%最高酸素摂取量) 運動を疲労困憊まで行い、パフォーマンスを評価した。その結果、中強度運動時には、運動中のカフェイン摂取は、高体温誘発性換気亢進反応および脳血流量低下反応をプラセボ条件よりも増大しなかった。また、カフェイン摂取は中強度運動に続く高強度運動の継続時間を延長した。 3)換気亢進反応が脳温に及ぼす影響について、予備検証により、磁気共鳴イメージング (MRI) により脳温を評価することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の3つの成果が得られたため。 1)β-アラニン摂取は暑熱下中強度運動時における高体温誘発性換気亢進反応を抑制しないが、知覚 (運動や呼吸のきつさ) 増加を抑制する方策となる可能性、また、暑熱下持久的運動時のラストスパート (高強度運動時) 局面における換気亢進やパフォーマンス低下を抑制する方策となる可能性が示唆された。
2)暑熱下持久的運動時において運動中のカフェイン摂取は、高体温誘発性換気亢進反応やそれに伴う脳血流量低下反応を増大させることなく、パフォーマンスを向上させる戦略として有効である可能性が示唆された。
3)換気亢進反応が脳温に及ぼす影響について、予備検証により、磁気共鳴イメージング (MRI) により脳温を評価することに成功し、今後、MRIを用いての安静加温実験の準備がととのった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、①常体温時および高体温時の換気亢進反応、②安静時および運動時の換気亢進反応、③栄養戦略による高体温誘発性換気亢進反応の変化、などが脳温に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、以下の3つの課題を検討する。 研究課題1: 運動前のアイススラリー摂取が、暑熱下運動時の換気・脳血流応答および運動パフォーマンスにおよぼす影響を検証する。 研究課題2: 運動前に加え運動中のアイススラリー摂取が、暑熱下運動時の換気・脳血流応答および運動パフォーマンスにおよぼす影響を検証する。 研究課題3:換気亢進に伴う呼吸性アルカローシスが脳温に及ぼす影響を検証する。
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