研究課題/領域番号 |
22H00507
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 賢二郎 東北大学, 工学研究科, 教授 (40282678)
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研究分担者 |
小高 猛司 名城大学, 理工学部, 教授 (00252271)
中島 研吾 東京大学, 情報基盤センター, 教授 (20376528)
森口 周二 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (20447527)
野村 怜佳 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (50900320)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2024年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2022年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
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キーワード | 土砂災害 / 数値シミュレーション / MPM / ハイパフォーマンスコンピューティング / バーチャリゼーション |
研究開始時の研究の概要 |
水・空気混じり土砂の固体の変形と土砂・空気混じり水の流動現象の双方向遷移過程をシームレスに表現し、地盤構造物の大変形・崩壊/流動・堆積といったマルチステージ現象を追跡可能な陰解法MPMに基づく高精度・高効率シミュレーション手法を開発し、地盤・土砂災害の実寸かつ実時間スケールでの高精細バーチャリゼーションを実現する。MPMの離散化方程式と不飽和土の混合体理論との一体化を図り、安定的な陰解法アルゴリズムを構築したうえで、長時間に及ぶ実大規模の土砂災害を十分な解像度かつ現実的な計算時間内で再現し、可視化技術を適用することで土砂災害において何がどのように起こるのかを精密な仮想現実として具現化する。
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研究実績の概要 |
■ 項目A:水・空気混じり土の材料挙動の表現と検証計算: 水・空気混じり土(不飽和土)の非弾性変形と土砂・空気混じり水(高密度・高粘性流体)の流動現象を表現可能な構成則を組み合わせた材料モデルを構築した。具体的には、静水圧依存型の一般的な土の弾塑性構成則と密度に依存して粘性が変化する非線形Newton則を組み合わせた構成則を提案し、項目Bの陰解法MPMに実装した。 ■ 項目B:不飽和土の陰解法MPM(IMPM)の開発: 地盤構造物の大変形・崩壊/流動・堆積といったマルチステージ現象を追跡可能な陰解法MPMに基づく高精度・高効率シミュレーション手法の開発に取り組んだ。水・土2相混合体(飽和土)に対して水と土で同一の粒子を割り当てるシングルレイヤー法を採用してMPM陰解法MPMのプロトタイプを構築し、ベンチマーク計算を通して適用性を検証した。 ■ 項目C:ミニチュアスケールでのモデル実験による精度検証: ミニチュア水槽内に模擬河川堤防を作製して行われたパイピングによる浸透崩壊の実験について、項目A・Bで構築した材料モデルと陰解法MPMによる数値シミュレーションを行い、その破壊形態について検証を行った。 ■ 項目D:高精細バーチャリゼーション: 大規模数値シミュレーションによるバーチャリゼーションに先立って、上記の項目Aの材料モデルを実装し、項目Bで開発予定のプロトタイプの並列化とチューニングを行った。元となるコードは、既に領域分割に基づくMPI並列が可能なものであり、水・土 2 相混合体(飽和土)からなる地盤構造物の崩壊解析の実績があったため、当該年度は、まずその元プログラムにハイブリッドMPI/OpenMP並列技術、および領域分割を粒子の動きに応じて変化させる動的負荷分散手法を導入するとともに、その並列化効率の最大化・最適化に注力し、計算速度の向上を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
名城大学において実施予定であった実験は、費用面での不足もあり、当該年度には装置の設計のみで終わった。項目A・Bで構築した材料モデルと陰解法MPMによる数値シミュレーション手法の検証には、当該年度以前に名城大学で行われていたミニチュア水槽内の模擬河川堤防のパイピングによる浸透崩壊データ、および前基盤研究(A)「 地盤の支える機能から流れる性質までの統合表現による数値シミュレーション研究代表者」(2019-2021)で行った斜面の浸透崩壊実験のデータを用いた。このように、実験は当初の予定よりは遅れているが、十分とは言えないながらも検証という目的は達成は出来ている。 また、MPMで追跡する粒子は、変形や流動に伴って計算格子として用いられるバックグラウンドメッシュ内を移動するため、動的負荷分散技術の適用が必須であるが、東京大学・中島教授の指導のもとで実装を進めてきたものの、当初の予定の8割程度の進捗である。しかしながら、2次元問題に対する動的負荷分散プログラムは陽解法MPMに実装することができ、今後3次元への拡張は直接的であるため比較的容易であろうと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
水・空気混じり土の材料挙動を表現するモデルと解析手法の更なる高度化を進める。既往研究を参考にしながら、間隙率と土と水の存在比率から不飽和土を表現するための飽和度を算出し、サクションによる強度変化を考慮する。 また、前年度に開発した陰解法MPMのプロトタイプについて、ベンチマーク計算を通してどちらの方法が陰解法に適しているのかを見極める。そして、固体単相の解析を対象に開発した陰解法EBS-MPMを、選択した方法を適用して2相混合体(飽和土)の解析ができるよう拡張し、その精度・安定性を検証する。 並行して、降雨による水分供給を受けて崩壊する模擬山岳斜面のモデル実験について検討する。ここで、同じ物性、同じ解析手法で現象の再現性を検証できるよう斜面勾配は複数設定できるように工夫する。各実験では、適切にマーカーなどを配置して小さな運動や変状が捉えられるよう高画質で録画するとともに、各マーカーの運動速度を記録するための装置を手配する。ただし、ミニチュアスケールでのモデル実験とはいえ予定していたより費用がかさむことが判明した。しかしながら、全体の予算が決まっており、実験の費用を予定以上にはかけられないため、計画していたミニチュア水槽の規模を小さくしたり、実験種別数、実験回数を減らしたりして次年度の検証データとする。 開発したMPMプログラムコードの並列化とチューニングを引き続き行う。特に、3次元問題への適用が遅れているため、次年度の優先課題として取り組む。一方、2相混体体(飽和土)の解析のために開発予定の陰解法EBS-MPMについては、固相単体の解析に開発した元プログラムが連立一次方程式ソルバーに直接法を用いていることもあり、並列化処理に課題があるが、流体と固体部分の解析を完全に別モデルにすることで異なる領域分割を適用することで解決できないか検討してみる。
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