研究課題/領域番号 |
22H00543
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等) (2024) 国立情報学研究所 (2022-2023) |
研究代表者 |
佐藤 健 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), データサイエンス共同利用基盤施設, 特任教授 (00271635)
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研究分担者 |
小塚 荘一郎 学習院大学, 法学部, 教授 (30242085)
太田 勝造 明治大学, 法学部, 専任教授 (40152136)
渡邊 真由 東京工業大学, リーダーシップ教育院, 特任准教授 (40881462)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
32,370千円 (直接経費: 24,900千円、間接経費: 7,470千円)
2024年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2023年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2022年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | ODR / 人工知能 / 論理プログラミング / PROLEG / AI / 交渉 / 法とAI |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、基盤S「裁判過程における人工知能による高次推論支援」で開発している争点整理システム(対象:弁護士・裁判官のような法曹向け)をインタラクティブなオンライン紛争解決(Online Dispute Resolution(ODR)) システムの各フェース(診断、交渉、調停、評価)に援用することにより、人工知能技術を用いた効率的な一般人向けのODR システムを構築する。研究代表者(情報学者)と研究分担者(法学者)との学際的な共同研究として、単に技術的な解決法ではなく、法的にも妥当なシステムの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度は、佐藤は、技術的な側面では、ODRの使用対象者として想定される一般人に対するインタラクションについての研究を行った。このため、消費者契約法に関連するトラブルについて、弁護士との共同研究により、消費者契約法の問題を類型化し、どの問題類型に当てはまるかを法律言語ではない一般人にもわかりやすい質問に弁護士が直して、メニュー形式で選択させ、類型が決定したら、それに関連する消費者契約法の要件事実より、どの事実が必要なのかを示すブロック図を示し、そのブロックにユーザが具体的事実を入れることにより、裁判結果をシミュレートするプロトタイプシステムを開発した。このことはPROLEGが世界で認知されている法知識表現言語であることを示している。渡邊は、2022年3月にODRに関する基本方針が法務省より公表されたことを受け、今後、日本におけるODRの社会実装も進展していくと予想し、2022年度は、諸外国で先行するODRの政策的議論に加えて、具体的なサービスの内容に関する調査研究を行なった。小塚は、リーガルテックサービスが弁護士法72条に違反するのではないかという問題提起がなされたことを受け、弁護士法が守ろうとする法実務のあり方とリーガルテックによる法実務の変革との関係について研究を行った。太田は、ODRにおいて調停者や仲裁人が行う法的判断(リーガル・マインド)について研究を進め,専門雑誌等にその成果を公表した.ODRにはAIの活用が進められており,AIの活用が紛争解決に与える影響について,実証的な実験計画法で研究し,AIによる裁判への人々の態度・評価,裁判にAI支援システムが導入された場合とされていない場合とで人々の裁判の公正評価がどう影響するか等について興味深い成果を上げ,専門雑誌等で公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の予定は、人工知能技術を使ったODRにおけるインタラクションシステムおよびODRに関する法的問題を洗い出すことであったが、おおむねこのことについては達成している。佐藤は、人工知能技術をベースにしたPROLEGという法知識言語上にインタラクションシステムを構築している。渡邊は、前項でも述べたODRに関する基本方針の影響もあり、主に諸外国におけるODRの動向等に関する執筆及び講演依頼が多くあった。業績として示した学会発表等以外にも、小規模な研究会等で講演をする機会があったが、質疑応答等からもODRに対する関心の高さが窺えた。小塚は、弁護士法の制度趣旨の分析等を順調に進めることができた。なお、規制改革推進会議において上記の問題が取り上げられ、政府(法務省)においても検討を行っていると伝えられることから、論文として研究成果を公表することはあえて差し控え、政策対応の進展を注視している。太田は、経験的法社会学研究の手法(社会調査,ランダム化比較試験など)を活用して課題設定とデータ収集,最近のデータ・アナリシスの主流であるベイズ推定による統計分析を進め,さまざまな成果を発表し,国内外に情報発信をすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
佐藤は、プロトタイプシステムをより高度化して、単に裁判結果をシミュレートするだけではなく、その疑似裁判結果を用いてどのように和解を導いていくかについて、当事者間の和解過程についての論理的定式化を行う予定である。渡邊は、諸外国におけるODRの動向に関する調査研究を今後も続けることに加えて、社会実装フェーズに向けて、各省庁等と連携をしてより議論を進展させる必要があると考えており、意見交換等の機会を設ける予定である。小塚は、政府において弁護士法72条とリーガルテックの関係について一定の見解が示された段階で、それが日本の法実務に対してどのような影響をもたらすかについて考察し、論文としてまとめたい。太田は、研究成果を取りまとめ,日本法社会学会,法と心理学会,法と経済学会,法とコンピュータ学会,弁護士会セミナー,米国Law & Society Association,欧州Research Committee for Sociology of Law,Asian Law and Society Associationなどで発表し,もって研究成果の国内外への情報発信を精力的に進めてゆく。
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