研究課題/領域番号 |
22H00544
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大武 美保子 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, チームリーダー (10361544)
|
研究分担者 |
小磯 花絵 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, 教授 (30312200)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
41,990千円 (直接経費: 32,300千円、間接経費: 9,690千円)
2024年度: 14,820千円 (直接経費: 11,400千円、間接経費: 3,420千円)
2023年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
2022年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
|
キーワード | 高齢者 / 日常会話 / コーパス / 言語能力 / 認知機能 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、高齢者の日常会話から、認知機能や心理状態、脳活動状態を推定するために、通常の会話データに加え、異なるモダリティのデータと紐づくコーパスを開発することである。本研究では、会話により認知機能維持に寄与する言語能力の生涯発達を支援する技術を開発するため、その技術を用いて実施される会話を含む一連の活動が、参加者の認知機能と言語能力に与える影響を評価する言語解析手法を言語理論に基づいて提案し、実証実験を通じて得られたエビデンスをコーパスとして整備する。認知症患者数が世界的に増える中、高齢者の認知症発症と認知機能低下を防ぐという喫緊の社会課題に対し、学術的基盤を整備する意義がある。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、研究項目1,2,3について研究を進めた。 1言語理論に基づく言語解析手順、脱文脈化アノテーション手法の確立:子供の発達の特徴をとらえる指標として提案された修辞ユニット分析という分析手法を、高齢者談話に適用し、高齢者の認知機能の維持に効果を資する言語能力を反映しうる、言語特徴量の指標として、脱文脈化指数が挙げられる。修辞ユニット分析は、選択体系機能言語理論における談話分析手法の一つで、発話の場である「今・ここ・わたし」の時空と発話内容の時空との距離を、脱文脈化指数として指標化することができる。既収集データに対してアノテーションを行いながら、具体的な文例に即したアノテーションルールを整備した。 2 会話において表出される高齢者の時間的志向と記憶機能の関係の解明:会話において表出される高齢者の時間的志向が記憶機能と相関することを明らかにした。時間的志向とは、個人がどの時間(現在、過去、未来など)に重きを置くかの傾向を意味する。本研究では、高齢者のグループ会話の発話を、時間の観点から分類し、特に、遠隔記憶と近時記憶との対比を念頭に、「過去」「最近」の分類に着目し、それらで特徴付けられる発話の量と記憶検査スコアとの関連を調べた。その結果、論理的記憶検査のスコアが高い人ほど、すなわち、最近聞いた話をよく憶えている人ほど、「過去の体験と知識を混ぜた発話」および「最近の知識」で特徴付けられる文を多く発する傾向が見られることを明らかにした。 3 脳波データから認知機能低下の有無を判別する技術の開発:異なるモダリティのデータの間の関係を調べるため、会話データを取得した被験者の脳波データの特徴を抽出することを目指し、認知機能が低下した高齢者と、認知機能が保たれている高齢者の、認知課題遂行中の脳波データや、課題遂行データから、認知機能の低下の有無を高精度に判別する技術を開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では、認知機能と相関する会話特徴量として、脱文脈化指数が挙げられるとの仮説に基づいて、アノテーション手法を開発することを主な目標として挙げていた。 この他、会話において表出される高齢者の時間的志向が、記憶機能と相関することを明らかにし、当初計画を超える成果が得られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
確立したアノテーション手法に基づいて、アノテーションを実施すると共に、異なるモダリティのデータを新規に取得する計画である。
|