研究課題/領域番号 |
22H00555
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
和田 茂樹 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60512720)
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研究分担者 |
AGOSTINI SYLVAIN 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20700107)
佐藤 雄飛 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 副主任研究員 (50708120)
BENJAMIN HARVEY 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70785542)
大森 裕子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80613497)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2022年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 海洋酸性化 / 藻場 / ブルーカーボン / 光合成 / 分解 / 海藻藻場 / 海草藻場 / サンゴ礁 / 埋没 |
研究開始時の研究の概要 |
研究期間全体では、海藻藻場、海草藻場、サンゴ礁のそれぞれの生態系を対象として、生態系が炭素を吸収・隔離する量を評価する。これらの実験を、高CO2条件に曝された自然の生態系であるCO2シープにおいて実施し、気候変動の進行に対して海が本来持つ緩和機能が海洋酸性化という未曽有の地球環境変化の元でどのように影響を受けるのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
海藻藻場に関して、姫島CO2シープと式根島CO2シープを利用した海藻藻場の将来予測を実施した。光合成や有機物の行方を群集レベルで解析するうえで、操作可能な自然群集を得るために海底に石材のタイルを設置した。石材タイルの上には自然の海藻群集が形成され、それを水槽に移設するなどして群集を対象とした試験を行うことが可能となる。この手法は、群集が極相に達するまでの時間(タイル上の海藻群集が自然の海底に形成された海藻群集と類似するまで)、モニタリングを行うことが必要であり、姫島においては初期遷移群集、式根島においてはほぼ極相状態まで群集組成が変化したことが示された。今後、式根島CO2シープを手始めに、光合成や溶存態有機物の生産量の測定などを実施していく予定である。 もう一つの調査海域としてサンゴ礁を対象とした研究を行った。パラオのニッコー湾という海域は半閉鎖的な湾であり、湾内では有機物の分解に伴うCO2の増加によって疑似的な海洋酸性化状態を示すことが可能である。この海域で、サンゴの代謝や有機物の分解過程の評価を行った。分解過程に関しては、残念ながらコンタミネーションの影響などによって明確な変化を見積もることはできなかったが、サンゴの代謝に関しては海洋酸性化条件下にあるサンゴが高CO2環境に対して耐性を有することが明らかとなった。 これらの国内外の研究サイトを用いたアプローチでは、「自然の海洋酸性化生態系をつなぐ国際共同研究拠点(ICONA)」の協力の元で実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に入っていた、海藻藻場、海草藻場、サンゴ礁のいずれの海域でも調査を行い、高CO2海域特有の生物群集の応答を明らかにしてきた。DOMのコンタミネーションなどの影響もあり、完全に計画通りにいかない内容もあるが、蛍光DOMの特性などを基にした解析が今度行われる予定である。これによって、コンタミネーションの大きな炭素成分以外の有機物動態を解明し、炭素循環に対する高CO2の影響解明に取り組む。海藻藻場に関しても、姫島CO2シープという新たな調査海域を開拓し、タイルを設置して海藻藻場群集の付着基板としたところである。群集の組成は未だ極相に至ってはいないものの、異なる藻類群集がCO2濃度の違いによって現れることは予備的な試験結果からも明らかとなっている。この方法は群集レベルで炭素循環へのかかわりを知る際に有効であり、来年度以降において海藻群集に対する具体的な実験を行うための重要なベースとしての役割を担う。
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今後の研究の推進方策 |
溶存態有機物に対する高CO2の影響評価は、沿岸の炭素循環に対する海洋酸性化の将来予測を可能にするという重要性を持つが、実際にその研究に取り組んだ例はほとんどない。パラオの高CO2海域に位置するサンゴ礁を利用した実験を行ったが、コンタミネーションの影響が強く、明確な将来予測をするにはデータが依然として不足している。溶存態有機物は、海藻類も多量に生産していることが知られており、より容易に生産過程を評価することができると考えられている。そこで、式根島や姫島CO2シープの海底に設置したタイルを利用した研究を行う。タイルの上には自然の海藻群集が加入し、群集を形成する。その群集の組成が自然の海底と同程度になるためには、約1年程度の期間が必要であり、姫島CO2シープにおいてはまだ数カ月のモニタリングの継続が必要である。式根島CO2シープにおいては既に十分な期間を経過したことが示されており、タイルごと群集を回収してCO2濃度を調整した実験系で一定期間飼育することで、溶存態有機物の生産量に対する海洋酸性化の影響を評価することが可能になると期待できる。
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