研究課題/領域番号 |
22H00572
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
諸富 徹 京都大学, 経済学研究科, 教授 (80303064)
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研究分担者 |
東 愛子 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (10589534)
ZHANG TUO 京都大学, 経済学研究科, 特定助教 (10925407)
小宮山 涼一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60537819)
馬 騰 長崎大学, 総合生産科学研究科(環境科学系), 准教授 (60869957)
中山 琢夫 千葉商科大学, 基盤教育機構, 准教授 (70623883)
杜 依濛 京都大学, 経済学研究科, 特定研究員 (70870096)
杉本 康太 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 講師 (00980492)
安田 陽 京都大学, 経済学研究科, 特任教授 (70268316)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
39,000千円 (直接経費: 30,000千円、間接経費: 9,000千円)
2024年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2023年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
2022年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
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キーワード | 再生可能エネルギー / 再エネ大量導入 / 電力市場 / 電力システム / 市場統合 / 電力需給モデル / 電力市場分析 / 時間前市場 / 再エネ市場統合 / 電力セクターの脱炭素化 / 電力市場の市場支配力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は脱炭素社会の実現を目指して、電気工学と経済学の文理融合研究によって再生 可能エネルギーの大量導入を可能にする電力システムのあり方を、理論的・実証的・国際 比較制度分析によって明らかにする。 本研究は、再エネの大量導入を可能にする電力市場の経済分析に注力し、オリジナルな研究成果を国際発信していく。具体的には、(1)再エネ市場統合、(2)電力市場、(3)電力系統の3本柱を立て、これまで困難とされてきた日本の電力システムにおける再エネ大量導入が可能なことを、工学的・経済学的に立証する。また、公正な競争環境を備えた電力市場の設計こそが、再エネの大量導入を可能にすることを実証的に証明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、【1】再エネ市場統合、【2】電力市場、【3】電力系統の3研究領域について、それぞれを担当する研究班が、日本で再エネ大量導入とその段階的な市場統合が可能であることを示すことを目的とする。【1】では再エネ発電費用の低下とその市場統合を可能にする再エネ支援政策の分析、【3】では、電力システムの基盤たる電力系統の再エネ導入最大容量のシミュレーション分析を行い、これらの知見を統合する形で、【2】再エネを最大限に導入可能な電力市場の姿を明らかにする。以下、各研究班の2022年度の研究実績である。 【1】再エネ市場統合:日本はFITからFIPへの移行期にあるが、本研究ではFIPメカニズムの特徴を検証し、電力市場価格高騰の状況下でのPPAと組み合わせた再エネ市場統合の可能性について分析を進めた。 【2】電力市場:欧州を中心とした電力市場の計量経済分析を行い、電源構成や柔軟性供給源の組み合わせが市場価格にどのように影響を及ぼすか、分析を進めた。とりわけドイツ市場を対象にし、時間前市場のような市場メカニズムの利用拡大が、混雑を緩和するための再給電量の引き下げに貢献できるのかについて、計量的な解析を行った。また日本についても、九州地方における太陽光出力抑制が時間前市場価格に与える影響について、計量分析を行なったほか、日本の電力市場データを使用して、再生可能エネルギーの導入に必要なグリッドの柔軟性と、異なる期間における電力市場の市場支配力に対するその影響を調査した。 【3】電力系統:電力需給モデルの拡張作業を行い,水素など次世代火力に加えて,デマンドレスポンスをマクロ的に考慮し,供給・需要サイドの技術双方を考慮した再エネ導入評価の基盤整備を行った。また、ドイツを対象として電力セクターの脱炭素化政策の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の3つの研究班である、【1】再エネ市場統合、【2】電力市場、【3】電力系統、それぞれについての進捗状況は、下記のようになる。 【1】再エネ市場統合:日本のFIPの特徴を検討することで、再エネ市場統合の道筋を展望し、財政学研究会や本プロジェクト研究会で成果報告を行った。 【2】電力市場:欧州の卸電力市場(前日市場)を中心に計量経済分析を行い、近年の市場価格高騰の影響度を分析した。成果は電気学会、環境経済政策学会などで発表した。とくにドイツ市場を分析対象にし、時間前市場の利用拡大はが混雑を緩和するための再給電量の引き下げへの貢献ついて、計量的な分析を行った成果については、京都大学再エネ講座報告会で発表した。さらに、日本の小売電力市場自由化政策がさまざまな地域の家庭用小売電力価格に及ぼす影響を実証的に分析した。 【3】電力系統:電力需給モデルに革新的技術を新たに考慮するなど改良作業を順調に行い、電気学会等でもデマンドレスポンスによる再エネ導入への影響分析に関して講演を行った。ドイツの電力セクターの脱炭素化政策について文献調査を行い、2023年度の現地調査に向けて準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の研究推進方策を3つの研究班である、【1】再エネ市場統合、【2】電力市場、【3】電力系統、それぞれについて述べるならば、下記のようになる。 【1】再エネ市場統合:ドイツのFIPと日本のFIPを比較することで、ドイツの経験を踏まえて、日本における市場統合プロセスの改善の可能性を探る。 【2】電力市場:欧州の市場分析を時間前市場にまで拡大して分析を行う。また同様の分析を日本の卸電力市場を対象に行う予定である。また、系統混雑のデータを分析に取り入れる。日本市場についても同様な分析を行う予定である。さらに、再生可能エネルギーの大規模導入に向けた電力需要家(低圧、高圧、超高圧など)の電力消費負担の変化に関する実証分析を行う。 【3】電力系統:電力需給モデルによる複数シナリオでの分析、モデルの電力系統ネットワークの拡張や電力貯蔵・変換技術の拡張などを予定している。2023年5月にドイツの現地調査を行い、複数の脱炭素化政策の相互関係を明らかにするとともに、特定電源のフェーズアウトが電力の安定供給に与える影響や対策を探る。
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