研究課題/領域番号 |
22H00581
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西山 伸宏 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (10372385)
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研究分担者 |
三浦 裕 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40557980)
野本 貴大 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00734732)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2024年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2023年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
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キーワード | DDS / ナノメディシン / 高分子ミセル / バイオ医薬品 |
研究開始時の研究の概要 |
研究では、新たな創薬モダリティとして期待されているタンパク質、ウイルス、エクソソーム、Cas9タンパク質gRNA複合体(RNP)に対して、高分子ミセルのコア、シェル設計を行い、汎用的かつ革新的なナノキャリア設計理論を確立する。高分子ミセルは、疾患モデルによる検証を行い、ワクチン、ウイルス療法、in vivoゲノム編集等における革新的ツールとしての有用性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、新たな創薬モダリティとして期待されているタンパク質、ウイルス、エクソソーム、Cas9タンパク質gRNA複合体(RNP)に対して、高分子ミセルのコア、シェル設計を行い、汎用的かつ革新的なナノキャリア設計理論を確立することを目指して研究開発を行なっている。当該年度は、コア設計に関しては、タンニン酸を利用した三元系高分子ミセルによって、RNPの固形がん選択的なデリバリーとin vivoゲノム編集に基づき、細胞周期に関連するPLK1遺伝子のノックアウトによる抗腫瘍効果を確認することができた。また、td-Tomatoマウスを用いたゲノム編集の特異性の評価の評価も進めており、R6年度に論文発表を行いたいと考えている。抗原タンパク質(OVA)のデリバリーに関しては、これまでに確認されている抗腫瘍効果のメカニズムに関連して、H2kb SIINFEKLを利用した解析に基づきリンパ節および脾臓における樹状細胞上にクラスI経路によって抗原ペプチドが提示されていることを確認した。現在、T細胞の解析を進めている。一方、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)のデリバリーに関しては、構成ポリマーの化学構造、組成の最適化を行い、中和抗体の回避効果を明らかにした。R6年度は、中和抗体産生に対する抑制効果の検討も進める予定である。一方、シェル設計に関しては、pH応答性ベタインポリマーをシェルとするプラスミドDNA搭載高分子ミセルを構築、固形がんに対する選択的な遺伝子導入と可溶性VEGF受容体の遺伝子導入による抗腫瘍効果を確認し、その成果をJ. Control. Release誌に発表した。現在は、本システムをmRNAのデリバリーに応用する研究を進めている。以上のように、R5年度においては当初計画通りに研究が進み、関連分野に大きなインパクトを与える研究成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
R5年度は、当初計画に従って順調に研究を進めることができた。コア設計に関しては、タンニン酸を利用した三元系高分子ミセルによって、RNP、抗原タンパク質、AAVのデリバリーに関する研究を進め、in vivoにおける治療効果に加えて、そのメカニズムの解析も順調に進めることができた。R6年度にこれらの成果の一部を論文発表できるものと見込んでいる。とりわけ、AAVのデリバリーにおいてin vivoで中和抗体による失活を回避できたことは関連分野にインパクトを与える成果であると考えている。また、詳細を明らかにすることはできないが、三元系ミセルの課題(安定性の向上など)を解決した新たなプラットフォームの構築にも成功し、特許出願を行うことができたことは当初計画を上回る研究成果である。一方、シェル設計に関しては、pH応答性ベタインポリマーをシェルとするプラスミドDNA搭載高分子ミセルの研究成果を論文発表することができた。本システムは従来のDDSにおけるPEGの課題(PEGジレンマ)を克服できる新規シェル技術としてバイオ医薬品の実用化に貢献することが期待され、現在はmRNAのデリバリーへと展開している。以上のように、コア、シェル設計のどちらに関しても、当初計画通りに研究が進展し、期待以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
RNPデリバリーに関して、td-Tomatoマウスを用いたゲノム編集の特異性の評価を進める一方で、in vivoゲノム編集による抗腫瘍効果を複数のがん遺伝子を標的として確認を行い、論文化を進める。抗原タンパク質内包ミセルのがんワクチンへの応用に関しては、フローサイトメトリーを利用したリンパ球の解析を進めることで、細胞傷害性T細胞の活性化を実証し、論文化を進める。AAVデリバリーに関しては、passive immunityモデルを用いた中和抗体の回避効果に加えて、AAVのマウスへの投与による中和抗体産生に対する抑制効果を検討する。さらに、最適化したAAV内包ミセルに関して、GalNAc等の肝臓標的化リガンドを導入し、血友病等の治療に向けた研究を推進する。一方、pH応答性ベタインポリマーをシェルとする高分子ミセルに関しては、mRNAを搭載した高分子ミセルを構築し、in vivoでの有用性を明らかにしつつ、疾患モデル治療へと展開する。
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