研究課題/領域番号 |
22H00582
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
齋藤 直人 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (80283258)
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研究分担者 |
植村 健 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 教授 (00372368)
西村 直之 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 教授(特定雇用) (10644940)
羽二生 久夫 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (30252050)
青木 薫 信州大学, 学術研究院保健学系, 准教授 (30467170)
中村 真紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00568925)
湯田坂 雅子 名城大学, 理工学研究科, 特任教授 (70159226)
塚原 完 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (00529943)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
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キーワード | カーボンナノ粒子 / 生体反応 / 生体材料 / 生体安全性 |
研究開始時の研究の概要 |
カーボンナノ粒子を生体材料に応用する研究は、現在国際的な競争分野になっているが未だに実用化されていない。その理由は様々なカーボンナノ粒子が共通して、微視的・巨視的に特異な生体反応を示すことによる。臨床応用のためには、これらのカーボンナノ粒子が共通に示す特異な生体反応を解明することが必須であり、視点を大きく変えたアイデアと技術でこの難題に挑戦する。これらの現象をメカニズムから抜本的に解決できれば、それを活用し制御することにより革新的な生体材料を創製することが可能になる。またエビデンスに基づいた生体安全性評価技術を構築して、世界初のカーボンナノ粒子を応用した生体材料の実用化を達成することができる。
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研究実績の概要 |
カーボンナノ粒子(CNP)の医療応用に必要である独特な生体反応を解明することを目的とした3つのカテゴリーの12項目にわたる課題を継続して行った。 微視的研究として①ナノフェライト粒子(NFP)を調製し、低濃度暴露した細胞内取り込み量と散乱光強度、および移動速度の相関性を調べた。②MARCO以外の骨芽細胞でのCNPレセプターの探索を行い、発現していないクローンを特定した。③カーボンナノホーン(CNH)にリン酸カルシウム(CaP)を介して破骨細胞抑制薬(BP)を担持させたCNH複合体作製時にCa、Pイオンの仕込み濃度を変化させ、得られた複合体中のCaP量の細胞生存率への影響を評価した。④骨芽細胞で見られたCNPによる細胞外小胞の回収をその培養液からポリマー法で行った。 巨視的研究として⑤撮影済みのリンパ管腔内を流れるCNPの粒子画像流速測定の結果について評価した。⑥NFPの物性評価と細胞内取り込みを評価した。⑦ナノマテリアルの取り込まれた細胞外小胞の回収を目的としたNFPの細胞内の取り込みを調べたところ、CNHと異なる取り込み機序であることが明らかとなった。⑧CNP皮下暴露マウスの脾臓組織の腫瘤について検討を行った。 実用化研究として⑨CNH複合体を投与した癌骨転移モデルの術後4週μCT評価によるラットの骨構造を検討し、CNH複合体の有効性が認められたと結論づけた。⑩神経機能性脂質の血液脳関門(BBB)の透過性を評価し、分子種によって透過性に明らかに違いがあった。⑪Rolf B1.T嗅細胞を購入し、CNPの細胞内取り込みを評価したところ、細胞内に取り込まれ細胞増殖性にも影響を与えることが明らかとなった。⑫CNH複合体の骨関連細胞の生体応答性評価として破骨細胞の細胞増殖性への影響を調べたところ、有意な低下が認められた。骨芽細胞の再現性はウシ胎児血清が原因の一つであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CNPを医療応用するために明らかにしなければいけない12項目の生体反応を大きく3つのカテゴリーに分けて研究を行っており、それぞれの項目で研究は進捗している。各カテゴリーで評価すると、微視的研究では①で前年にナノピンセットによるOne-in-One法の限界から新たな試みとして強磁性体であるNFPを用いたOne-in-One法の検証を行った。自作したNFPを用いた医療応用のための基礎的知見をNanomaterials誌に発表などをしている。巨視的研究では上記のNFPを用いてCNHとの結合体を作り、体内動態や細胞外小胞の回収を目指しており、新たな技術開発が進められている。そして、実用化研究としてはCNHと結合させる予定である機能性リゾリン脂質であるリゾフォスファチジルコリン(LPC)、リゾフォスファチジルエタノールアミン(LPE)、リゾフォスファチジルイノシトール(LPI)のBBBの透過性を評価し、LPC>LPI>LPEであったことをBiochem Biophys Res Commun.誌に発表などしている。 その一方でCNPを対象としたone-on-one法のために全く新しいピペット技術を考案した。この技術は、電気浸透と電気泳動を活用して直径数10nmの粒子をピペットに入れ、細胞表面を自動で感知して付着させ、培養細胞を共焦点顕微鏡で撮像しながら、1細胞丸ごとや細胞内の特定の部位や領域を直接サンプリングする技術である。これらの技術は新規性が高く、高額な機器を必要とするため、独立したプロジェクトとしてCREST研究に提案したが、採択には至らなかった。この技術をone-on-one法に利用するにはこの機器が必要であるため、CNPを対象としたone-on-one法は別の方法を検討する必要があり、全体としての進捗区分は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
3つのカテゴリーに分けた12項目の研究テーマをそれぞれ継続して行っていくが、①ピンセット方式でのナノマテリアルのone-on-one法は難しいことから別のアプローチを検討する。まずは1つのナノ粒子と1細胞の反応を見る系の構築を目的としてCNPよりも安価に自作でき、物理化学的に1粒子をコントロールし易く、検出もし易い強磁性体であるナノフェライト粒子(NFP)をCNPと並行して研究対象とすることにする。さらに別の方法としてピペット法が可能であるかを検討する予定である。②CNPの取り込みに関与する骨芽細胞でのレセプターを同定する。③BPと実質的に結合するCaPについての条件をより詳細に検討する。④骨芽細胞で見られたCNP含有細胞外小胞の回収を試みる。⑤リンパ管内を移動するCNPの粒子画像流速の検討を行う。⑥①で検討する強磁性体であるNFPの物性評価と体内動態観察に利用できるかを検討する。⑦CNHを内包化した骨芽細胞の細胞外小胞はポリマー法での回収はあまりうまくいっていないように感じている。この原因を明らかにした上で対策を検討する。⑧皮下組織にCNPを暴露したrasH2 マウスの評価を行う。⑨癌骨転移モデルラットを使ったCNH複合体の組織評価を行う。⑩リゾリン脂質単独でのBBBの透過性を評価する。⑪ナノマテリアルの脳内移行の機序として考えられる嗅神経経由を検討するため、嗅神経細胞を購入し、CNPとの関係を調べる。⑫CNH複合体の骨関連細胞・組織の反応としては優先して破骨細胞での評価を行う。並行して骨芽細胞での骨形成能評価で再現性が得られる測定条件の検討を行う。再現性が得られる条件ができ次第、骨芽細胞を使った評価も行い、動物実験もスタートする。
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