研究課題/領域番号 |
22H00588
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
関谷 毅 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80372407)
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研究分担者 |
植村 隆文 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (30448097)
鶴田 修一 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (70876789)
荒木 徹平 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (10749518)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,770千円 (直接経費: 32,900千円、間接経費: 9,870千円)
2024年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
2023年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2022年度: 17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
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キーワード | フレキシブルエレクトロニクス / 生体計測デバイス / 生体計測 / バイオエレクトロニクス / 生体適合性材料 |
研究開始時の研究の概要 |
本提案では、高い生体適合性有する高分子材料を母材とし、これに光および電気的性能を付与することで、究極的な生体適合性と光・電気的機能を両立させた新しいエレクトロニクス界面材料を実現する。この材料を、薄膜・小型の生体電位計測システムの柔軟電極表面に搭載することで、長時間生体内へ埋め込み可能なエレクトロニクスシステムを実現する。将来的には、長時間脳内で連続計測を可能にすることで、高度な脳活動を理解し、認知症などの脳関連疾患の解明と医療、創薬に資する基盤技術を確立する。
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研究実績の概要 |
本提案では、本研究グループが世界に先駆けて実現してきた「生体適合性有機材料」と「ナノ導電材料」の融合から成る柔軟電子/光材料技術を用いて“生体密着・生体融合可能で、長期間にわたり光と電気により生体組織へ相互作用が可能な生体界面材料「Interactive Bioadhesive」”を実現する取り組みである。具体的には、生体組織上にて長期間安定的に密着性を保ちつつ、光や電気による神経刺激機能と微弱生体計測機能を有し、最後は体内に吸収される新規の生体界面材料の研究開発である。この生体デバイスを実現することで、生体拒絶反応を抑え、長期間にわたり生体内に留置できる光・電子デバイスの応用が可能になる。新しい生体埋め込み型医療機器や生体計測機器の開発に貢献する取り組みである。生体組織特有の体液や個体差の影響を受けることのない生体界面材料を、ナノ材料学的、構造学的、生体組織学的視点から3年計画で実現していく取り組みである。令和4年、5年を通して、高い生体適合性を有する高分子材料を主材としたInteractive Bio-Adhesiveとマイクロニードル型細径電極を含む複数種類の柔軟性のある生体計測電極を組み合わせることで、光学特性および電気特性においても優れた生体電極を実現することができた。特に、生体の電気特性を高精度に行う上での基準となる接触インピーダンスにおいて、目標値であった100Ω/□よりさらに低いインピーダンスが実現できた。本取り組みの成果は、世界最高峰のマテリアル学術論文誌Advanced Materials誌に2度掲載された。そのうち一つは、表紙にも採択されるなど多くの注目を集めることができた。今後は、生体内で長期間安定的に生体信号を計測可能であることを実際の生体にて実証する取り組みと、体内へ融合されて無害化されてる取り組みを行っていき、本研究開発の最終目標を実現する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画の一年目(令和4年度)は、生体組織界面材料であるInteractive Bio-Adhesive層の作製と光・電気特性評価、生体適合性評価を行い、目標通りの電気的、光学的、機械的特性を得ることができた。そこで二年目(令和5年度)は、このInteractive Bio-Adhesiveを搭載したマイクロニードルゲル電極の試作と評価に取り組んできた。特に、生体組織を損傷することなく、生体情報を高い品質で獲得する形状として、マイクロニードル型、細径繊維型、フィルム型など様々なゲル電極の作製を行った。形状と共に、生体適合性のあるゲル材料として実績のあるアクリルアミドゲル、ポリヘマゲルに加えて、九州大学田中賢教授との共同研究において抗血栓性材料PMCXAを用いた。この材料を導電性が高いAgナノワイヤーやAu、Pt等の貴金属薄膜電極と組み合わせ、乾燥させることで生体適合性と導電性を兼ね備えた柔軟な生体電極を作製した。
微細な神経や細胞の情報を直接的に獲得するために、生体電極の微細化が重要な課題となっていた。特に、10マイクロメートル寸法の細胞に直接的にアプローチする必要があるが、本研究では主に印刷、鋳型、レーザー加工、自己組織化形成の各種技術を用いてこの取り組みを進めた。現在までに、30マイクロメートルまでの形状を安定的に形成できることを確認した。一方で、このような微細な形状においては、本研究の目標を実現する上では支障がないが、電気的特性、光特性、生体適合性が低下することが新たに見出されているため改善を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年目(令和4,5年度)の研究開発を当初の予定通り進めることができた。特に高い抗血栓性を有する生体適合性高分子を融合させることにより、高い生体適合性を保有しながらも、従来の生体電極と比べて一桁近い信号・ノイズ比の高い生体電極であることが確認され、電気的・光学的・機械的な優位性も実証することができた。この成果を基盤として最終年度となる令和6年度には、実際に生体内へ長期に分かり適用して、その有用性を検証する取り組みを進める。 ここでは研究計画段階では「小型霊長類マーモセットの脳および体内への完全埋め込みによる性能検証」を目標に掲げ計画してきたが、大阪大学医学部脳神経外科との緊密な連携により、本デバイスの有用性をより頻度高く検証するうえで適した大型動物種(ミニ豚、家畜豚)を用いることができる見通しが立った。そこで本年度は、まず初めにこの大型動物種を用いて体内完全埋め込み型脳計測・刺激システムに、新型の柔軟ニードル電極を搭載し、完全埋め込みを実施する。皮質脳波ECoGと脳深部局所脳波LFPの連続計測および、生体内での光学的計測の同時実施により、新型生体組織界面材料とその柔軟電極の有用性を実証する。完全埋め込み実験を、年度のなるべく早期に実施し、体内での連続使用を行うことで、その有用性を検証するとともに、材料や電極構造の最終調整を重ねる予定である。最終的には、本提案で目標とした6か月を超える生体内埋め込み時の脳活動を計測に取り組む。また、生体電極の光学的特性、特に透明性を活かした活用として光刺激などの実験を進めていく。最終年度の取り組みを通して、多様な生体組織表面に依存しない生体接着界面材料を実現する。
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