研究課題/領域番号 |
22H00593
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山吉 麻子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (70380532)
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研究分担者 |
徳田 崇 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (50314539)
駒野 淳 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (60356251)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2024年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2023年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2022年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | ゲノム編集 / 核酸医薬 / 光操作 / 光架橋性核酸 / レトロウイルス感染症 / ウイルス感染症 / ソラレン / HTLV-1 / 光応答性核酸 |
研究開始時の研究の概要 |
独自に開発した光架橋性核酸医薬(Light-Scissors)を駆使することで、光をトリガーとした新しいレトロウイルス遺伝子の不活性化法の開発を目指す。Light-Scissorsは標的遺伝子に対して配列特異的に架橋反応を誘導するため、DNAの複製過程が阻害されることに伴って二重鎖切断が誘起され、欠損変異等が導入されると期待される。様々な新規光架橋性核酸を合成し、そのゲノム編集活性を培養細胞系でスクリーニングする。さらに in vivo 光照射デバイスの開発にも注力し、in vivo での光ゲノム編集技術によるプロウイルス遺伝子の不活性化効果についても検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、独自に設計した光架橋性核酸医薬(Light-Scissors)を用い、ゲノム二重鎖DNAの配列特異的な切断(DSB)を誘導する手法を開発し、この新しい光ゲノム編集技術をレトロウイルス遺伝子の不活性化法へと展開する。今年度は主に下記3項目について検討を行った。 1. Light-Scissorsの分子構造の最適化(山吉):ウリジンの5位にプロパルギルリンカーを介してソラレンを導入した新規ヌクレオシドを合成し、これを含むLight-Scissorsの光架橋特性を評価したところ、標的遺伝子に対し効率よく架橋することが見出された。また一方で、あらゆる人工核酸の5'末端にソラレンを導入することが可能な、ソラレン誘導体活性化エステルの開発にも成功し、研究成果が学術雑誌(ChemMedChem)に受理された。同誌のCover Feature に選出され、特別号ChemBioTalentsの掲載も決定した。 2. Light-Scissors のゲノム編集効率の評価(モデル細胞系)(駒野、山吉):Light-Scissors を用いたゲノム編集効率を評価する実験系として、宿主細胞からのプロウィルスゲノムの除去効率を迅速に評価できるアッセイ系を構築した。ゲノム編集が起こり遺伝子配列が改変されると、ルシフェラーゼの発光がホタル由来→オワンクラゲ由来の発光へと変化する系の構築に成功し、正常に動作することを確認した。 3. in vivo展開を可能とする光照射装置の開発(徳田、山吉):Light-Scissorsと標的遺伝子との架橋反応はUV光照射時にしか起こらないため、継続的に光照射を行う必要がある。そこでLED形状のUV光照射装置を開発し、体内に埋入してin vivo光照射を試みた。臓器を傷つけることを防ぐため、LEDの周囲を樹脂でコートした楕円形デバイスを開発し、動作確認にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回、本研究計画実施期間の初年度に当たるが、新たな分子構造を持つ Light-Scissors の開発に成功し、その成果を論文発表や特許申請へ繋げることに成功した。また、ゲノム編集の迅速評価系の構築や in vivo 光照射デバイスの開発にも成功し、その進捗状況は期待以上であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、主に下記4項目について重点的に推進する。 1 Light-Scissorsの分子設計の最適化(山吉):昨年度はあらゆる人工核酸に光架橋性を付与できる化合物の開発にも成功した。この化合物を用い、次世代ゲノム編集ツールとして期待されているペプチド核酸に光架橋性を付与し、標的遺伝子との結合親和性や光架橋能を網羅的に評価し分子設計の最適化をはかる。ペプチド核酸として標的遺伝子に対し三重鎖を形成するもの、また鎖侵入により標的遺伝子を解離させ一方に結合するものなど、複数の結合形態を可能とするPNAならびにその誘導体を検討する。 2 Light-Scissors のゲノム編集効率の評価(駒野、山吉):HTLV-1プロウイルス遺伝子に対して結合する三重鎖形成核酸にソラレンを導入したLight-Scissors を合成し、プロウイルスゲノム除去効率の評価、光照射によるその時空間的制御について検討する。 HTLV-1遺伝子の様々な部位を標的化することを想定し、対応する標的遺伝子をもつルシフェラーゼ迅速アッセイ系の構築を行う。 3 in vivo展開を可能とする光照射装置の開発(徳田、山吉):昨年度に引き続き、ポリイミドフレキシブル基板およびLEDチップを組み合わせ、新しい体内埋入型光照射装置を開発する。昨年度開発したデバイスについては、光照射毒性、光照射による光源の温度変化など毒性を与えうる要因について最適化を行う。また、昨年度は楕円形デバイスの開発に成功したが、腹膜播種などの系を対象にすることを想定し、より広範囲で光照射を可能とする柔軟な平面型光刺激デバイスの設計にも着手する。
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