研究課題/領域番号 |
22H00595
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
杉本 昌弘 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 教授 (30458963)
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研究分担者 |
酒井 康行 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00235128)
廣安 知之 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (20298144)
西川 昌輝 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (40843149)
田中 稔 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 細胞療法開発研究室長 (80321909)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
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キーワード | 生体医工学関連 / 生体医工学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では肝硬変を対象とし,(1)肝臓内の多様な細胞の分子間・細胞間の相互作用や物理的な特性変化を再現する数理モデルの開発,(2)ヒトの肝硬変を再現する動物モデルの確立,(3)動物実験では不可能な観測や介入実験を可能とする生理学的微小細胞培養系の開発を行う. 多様な実験系から導かれる数理モデルの多面的な検証と,数理モデルから得られる仮説の実験による検証を繰り返し行い,病態形成の仕組みの理解に迫る.この三位一体の取り組みにてデータ駆動型サイエンスを具現化し、システム生物学の方法論の確立と個々の成果の両面で学術的成果を創出する.
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研究実績の概要 |
本研究は肝臓の慢性化をテーマとして既知のメカニズムをボトムアップ的に結合していき数理モデル化を行うことである。このような数理モデルの考え方として、観測できる全情報からデータマイニング的に解析する方法や、特定の表現型を予測できるような機械学習的な考え方もある。一方、本研究では例えば代謝Pathwayに注目した場合、各代謝反応の速度式を定義し、モデル化の対象とする全ての経路をこの反応式を結合するという方針でモデル化を進める。従来からこのようなモデル化の類似研究はあるが、大きな課題はモデルの中のパラメータを決定することが難しく、モデルの妥当性の検証が難しいことであった。そこで、本研究ではこれを培養細胞レベルと動物実験レベルで検証を繰返しながらモデルの評価試験を繰り返し信頼性のあるモデルを構築し、検証後のモデルで新たな仮説を数理モデルで立てて実験で検証するデータ駆動型の研究を実践することにある。また、肝臓の慢性化は1細胞内の分子メカニズムだけでは説明がつかなく、肝臓全体での細胞の相互作用やコラーゲンの蓄積、またはサイトカインの分散など、空間的・物理的な要因も大きく影響してくる。そこで、まずは肝細胞を用いた培養細胞実験にて肝臓の局在(空間的な場所)によって異なる代謝能を再現し、異なる薬剤応答のときの代謝物を網羅的に測定することから始めた。同時に局在ごとに異なる代謝を再現した数理モデルの開発、更には細胞間のインタラクションを考慮したモデルの開発を同時にすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肝臓の門脈近くと静脈近くで酸素濃度が異なることで、解糖系と糖代謝のどちらが有意に機能するかが分かっている。このため、酸素濃度の異なる培養系で、薬剤としてアセトアミノフェンを添加した時の代謝物を取得し、メタボローム解析によって網羅的な代謝物測定を実施した。この時、キャピラリー・電気泳動質量分析装(CE-MS)を用いたが、エネルギー・核酸・アミノ酸代謝等は十分代謝物が検出できるものの、一部アセトアミノフェンの代謝に関しては試薬が手に入らず、物質の質量などから物質の推測をするなど、測定やデータ処理に関する修正が必要となり、遅れが発生した。また、既存の研究でガスクロマトグラフィー・質量分析装置で誘導体化によって測定していた物質との比較を試みようと、試薬の購入などとCE-MSでの測定を試みるなども発生し、元々の予定よりも遅れが発生した。また、モデル化に関しては、ピッツバーグ大学で開発されたSparkライブラリを用いて、細胞をエージェントとして相互作用を実装できる仕組みを利用し、1つ論文の執筆まではたどり着いた。しかし、1細胞=1エージェントで、このエージェントに肝臓内の局在ごとにことなる代謝能などの特徴を持たせることができず、プログラムの修正に試行錯誤したが、結局断念することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
数理モデルとしてピッツバーグ大学のSparkライブラリには限界があり、今後はエージェントモデルのライブラリそのものから開発する方針に切り替える。特に1細胞の中の代謝のモデルはPython言語を用いた実装を行っている。一方SparkライブラリはJava言語であり、GUIによって操作される仕組みあるためにモデルの妥当性の検証や仮想的な実験で境界条件を変えて多数のシミュレーションをするなどに向いていない。最大の問題は肝細胞の局在ごとに異なる特徴の実装ができないことであり、本研究の本来の目的である、分子レベルと細胞レベルの両方を同時に考慮したマルチスケールモデルのためにはライブラリからの再構築が必要であると考え、自ら開発する方針とした。また、動物実験による肝臓の慢性化の比較では、慢性化が一方的に進む不可逆的な系のみでの比較を実施することができた。しかし、慢性化する薬剤によっては可逆的に症状が戻っていき、コラーゲンが減って行く現象も報告されている。この実験データも収集し、単一モデルで投与する薬剤の影響によって可逆性・不可逆性のどちらも再現できるモデルの構築を進める。
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