研究課題/領域番号 |
22H00596
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
中西 淳 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, グループリーダー (60360608)
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研究分担者 |
上木 岳士 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, 主任研究員 (00557415)
宇都 甲一郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, 主幹研究員 (30597034)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
2024年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2023年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2022年度: 19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
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キーワード | メカノバイオロジー / 液々界面 / 細胞接着 / ナノ薄膜 / バイオイナート / ぬれ |
研究開始時の研究の概要 |
細胞培養は,全ての細胞研究やバイオ産業に共通する基幹技術であるが,プラスチックシャーレなどの硬い基材の表面に細胞を付着させて生育・増殖させるのが一般的である。本研究では,水と二相分離する疎水性液体との界面で細胞を安定に培養する上で必要となる下層液体と界面の力学的特徴を明らかにするための新しい材料の開発に取り組む。
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研究実績の概要 |
申請者は一般に細胞培養に用いられる固体基材の代わりに,水と二相分離する疎水性液体の界面で細胞培養を行う技術の開発に取り組んでいる。本研究では,液々界面に付着する細胞のメカノバイオロジーを探究するために,界面にバイオイナートな界面活性剤を被覆した階層型材料を開発することで,単独~集団状態の細胞の接着・培養に必要とされる液体足場の力学刺激を特定しつつ,液体の特徴を活かした画期的な培養システム開拓のための学術・技術基盤を築くことを目指している。今年度は,前年度確立したリン脂質修飾によりバイオイナート化した水-パーフルオロカーボン(PFC)界面上における細胞接着のメカノバイオロジーの探求を行った。 細胞接着時のアクチン細胞骨格の動態を解析するために,Lifeact-GFPを恒常発現したイヌ尿細管上皮由来MDCK細胞を用いた。一方,液々界面側にはRGDペプチドおよびローダミン修飾したリン脂質を混合させておくことで,細胞は界面に接着ができ,且つその変化を蛍光観察できるようにした。PFC層にFC-40とFC-70を用いた場合,細胞は界面張力が大きい前者においてはよく伸展・接着したのに対し,後者の上では球形の形状を維持した。これは張力が小さい界面では細胞の牽引力が緩和しているためと予想され,固体・ゲル基質と同様にMolecular Clutchが適用できることが示唆された。これに対して,TGF刺激により牽引力を増大したMDCK細胞においては,細胞が伸展する前に界面が一時的に下側に変形し,その後に歪みが回復するという興味深い現象が観察された。これは軟らかい界面におけるぬれ現象(アダプティブウェッティング)に類似しており,バイオイナート化でタンパク吸着を抑え,界面を非常に軟らかくすることで細胞の粘性的特徴が現れたという興味深い結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度開発に成功したバイオイナート液々界面上においてバルク液体を変化させることで,界面張力を変化させ,それが細胞の接着挙動を大きく変化させることを見出し,細胞の牽引力に応じて,固体・ゲル界面と似た現象および異なる現象をつきとめ,本研究の目指すバイオイナート階層型材料を用いて細胞力覚が探究できることを確認することができた。次年度以降、見出した現象の理論的検証と,さらなる応用展開を進める事で,本研究開発研究の妥当性と本材料の有用性がより担保されることになる。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度に確認した興味深いアダプティブウェッティングに対する理論的な検証や力学的解析を進めるとともに,液々界面における細胞集団の力覚を探究するための方法論作りに着手する。具体的には,申請者が長年進めてきた,光分解性分子を用いた界面の光機能化および細胞パターニング方法の開発に着手し,液々界面において規格化された細胞集団の挙動を調べる道筋をつける。
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