研究課題/領域番号 |
22H01170
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
渡辺 真仁 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (40334346)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | 準結晶 / 近似結晶 / 磁気異方性 / 磁気秩序 / 希土類 / ヘッジホッグ / トポロジカル数 / 20面体 / 非共線・非共面磁気構造 / 動的磁気構造因子 / 非相反磁気励起 / ダイナミクス / 結晶場 |
研究開始時の研究の概要 |
希土類系準結晶と近似結晶の結晶場を理論的に解明し、結晶場基底状態の磁気異方性を明らかにする。磁気異方性の効果を取り入れた有効磁気模型を構築し、20面体の磁気構造およびトポロジカル数を明らかにする。さらに近似結晶、準結晶の磁気構造を解明し、トポロジカルな性質を明らかにする。
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研究実績の概要 |
周期性をもたない結晶構造をもつ準結晶では、周期結晶では許されない5回回転対称性などの特有の回転対称性をもつ。準結晶でどのような電子状態が実現し、物性を発現するかは不明な点も多く、その解明は物質科学研究のフロンティアである。特に準結晶において磁気長距離秩序が実現するか否かはこれまで未解明の重要な問題であった。最近、希土類系準結晶Au65Ga20R15 (R=Tb, Gd)において強磁性長距離秩序が実験により発見され、大きな注目を集めている。 これまで研究代表者により、希土類系準結晶の希土類原子サイトの結晶場による磁気異方性の効果を取り入れた有効磁気模型に基づいて、希土類系準結晶および近似結晶の磁気構造の理論解析が行われた。その結果、希土類原子がその頂点に位置する20面体上で、ヘッジホッグ状態やフェリ磁性状態、渦巻き状態などの様々な非共線・非共面磁気構造が基底状態として実現することが示された。興味深いことに、ヘッジホッグ状態はトポロジカル数+1の有限のトポロジカル不変量で特徴づけられることがわかった。さらに有効磁気模型を20面体準結晶に適用し、一様なヘッジホッグ秩序相を見出した。 本研究では、この準結晶におけるトポロジカル磁気構造である、ヘッジホッグ秩序相におけるダイナミクスを明らかにするため、動的磁気構造因子を計算する理論的枠組みの開発に取り組んだ。この方法を用いて、ヘッジホッグ秩序相における動的励起の性質を理論的に明らかにした。興味深い結果として、ヘッジホッグ相特有のユニークな動的励起構造、および非相反磁気励起が波数-エネルギー平面の広大な領域に出現することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶場基底状態の磁気異方性の効果をとりいれた有効磁気模型を構築し、Cd5.7Yb型の準結晶に適用して、ヘッジホッグ秩序相が安定な基底状態として実現することを確認した。さらに、準結晶の静的および動的磁気構造因子を理論的に計算する枠組みを開発した。この方法を準結晶の有限のトポロジカル数で特徴づけられるヘッジホッグ秩序相に適用し、静的および動的磁気構造因子を解析し、その性質を理論的に明らかにした。全体的に順調に研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、動的磁気構造因子および静的磁気構造因子を計算する理論的枠組みの開発に取り組む。この枠組みを準結晶ならびに近似結晶にも適用して、周期系と準周期系における磁気構造の違い、および共通する性質を理論的に明らかにする。 また、今年度明らかにした、準結晶のヘッジホッグ秩序相の静的および動的磁気構造因子を実験研究者に提示し、今後の中性子散乱実験による静的および動的磁気構造の観測に向けて、実験研究者と連携して研究を推進していく。
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