研究課題/領域番号 |
22H01766
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
片瀬 貴義 東京工業大学, 元素戦略MDX研究センター, 准教授 (90648388)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
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キーワード | 熱電変換材料 / 熱伝導 / フォノン |
研究開始時の研究の概要 |
無毒で資源量が豊富な元素で構成される酸化物熱電変換材料の高性能化には、熱伝導率の大幅な低減が不可欠である。本研究では、複合アニオン化により、酸化物の熱伝導率を大きく低減させる新手法を確立し、400oC以下の中温域で、従来よりも10倍以上高い熱電変換性能を実現する。第一原理計算と実験を融合させたアプローチにより、複合アニオン化による酸化物の熱伝導率低減機構まで解明する。複合アニオン化による低熱伝導率酸化物の学理を構築し、高性能酸化物熱電変換材料の網羅的探索へ発展させる。
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研究実績の概要 |
初年度は、水素置換SrTiO3(SrTiO3-xHx)エピタキシャル薄膜およびバルク多結晶体を合成し、熱電特性の評価および第一原理フォノン計算による熱伝導解析を行った。モデル試料としてSrTiO3-xHx単結晶薄膜を作製し、水素濃度に対する熱電特性の相関を調べた。水素濃度(キャリア濃度)の増加に伴って電気伝導度が増加し、3x1020cm-3において出力因子の最大値20μW/cmK2が得られた。また水素濃度の増加に伴って格子熱伝導率(κL)が3.2W/mKまで減少し、SrTiO3単結晶の12W/mKに対して大きく減少することが確認された。その結果、室温における熱電変換効率ZTは0.14まで到達することが分かった。SrTiO3-xHxのバルク合成については、高温での焼結時に水素が脱離するために、緻密な焼結体の作製が難しかった。放電プラズマ焼結法(SPS)において、水素が脱離しないように金属箔で密閉する工夫を施すことで、高濃度に水素を含有するSrTiO3-xHx焼結体(x=0.057~0.216)を作製することに成功した。また、VASPとALAMODEコードを用いた第一原理非調和フォノン計算により、SrTiO3とSrTiO3-xHx(x = 0.25)のフォノン輸送解析を行った。計算から得られたSrTiO3のκLは室温で8.2W/mKであり、水素置換によってSrTiO3-xHxのκLが2.8W/mKまで減少することが確認され、実験結果と整合した。一般に固溶体では置換元素との質量差によってフォノン散乱が増強されるが、酸素と水素の質量差は16倍もあるにも関わらず、質量差によるκLへの影響は殆どないことが分かった。一方で、Ti-O結合に比べてTi-H結合が非常に弱いために、Ti-O6八面体が局所的に歪み、フォノン散乱が増強されてκLが低減されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り、エピタキシャル薄膜の作製と熱電特性評価を進めることができている上に、独自の焼結手法を開発することによって緻密なバルク作製にも成功した。第一原理フォノン計算による解析を併用して加速的に研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
H濃度xを制御したSrTiO3-xHxバルク焼結体の熱電特性評価および熱伝導・キャリア輸送特性の解析を行う。第一原理計算を併用して水素置換により低熱伝導率と高出力因子を両立可能な新材料探索を進める。
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