研究課題/領域番号 |
22H01926
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28050:ナノマイクロシステム関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
筒井 真楠 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50546596)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
|
キーワード | ナノポア / 1細胞解析 / 1分子検出 / イオン電流 / 電気泳動 / マルチオミクス / ナノ流体 / 単分子 / 1細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、FET型ナノポアによる1粒子泳動ダイナミクス解析・制御法を応用・発展させ、タンパク質やDNAの表面電荷選択的1分子検出法を創成する。そして当該手法を、集積ナノポアを用いた1生体粒子破砕技術と融合させることで、1細胞内物質の網羅的1分子検出・識別を実現する。本研究の達成により、局所電場が付与されたナノ制限空間における1分子泳動ダイナミクスの基礎科学を構築すると共に、オンチップ1生体粒子マルチオミクス分析に資する革新的ナノポア技術を創出することで、生命科学研究分野の発展に寄与する。
|
研究実績の概要 |
サラウンドゲート電極をナノポアに集積したFET型ナノポアを用いて、DNAとタンパク質の1分子泳動制御を実施した。実験では、まず両面が厚さ50 nmの窒化シリコン膜で被覆されたシリコンウエハの片面に、フォトリソグラフィーと金属スパッタにより、引き出し電極を形成した。続いて、ウェットエッチング処理によりシリコン層を除去し、窒化シリコンメンブレンを形成した。その後、電子線リソグラフィにより直径150 nm~100 nmの円を描画した、現像後のレジスト層をマスクとして用いることで、反応性イオンエッチングによりナノポアを開口させた。そして、電子線描画法により今度はゲート電極パターンをナノポア周囲に描画し、白金層をスパッタしたのち、有機溶媒中でリフトオフした。最後に、メンブレン上面から化学蒸着法により厚さ20 nmの二酸化ケイ素層を蒸着した。こうして作製したFET型ナノポアを用いて、様々な長さのDNAや牛血清アルブミン等のタンパク質分子の1分子検出を実施した。ゲート電圧に加える電圧により、ナノポア内に生じる電気浸透流の流速が変化し、これにより当該分子の泳動速度を精密に制御することが可能であることを確認した。さらに、電解質溶液の誘電率によるDNAの1分子イオン電流信号増強法を創成することにも成功した。この新規手法は、ナノポアに注入する生理食塩水にエタノールやグリセロールを混合するだけでの、非常に簡便かつ効果的な手法であり、誘電率だけでなく粘性も変えれば、分子の泳動速度の低減も図ることができるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、FET型ナノポアを用いたDNAとタンパク質の1分子泳動制御法の創成に成功した。また、ナノポアの上下で電解質溶液の誘電率が異なる状況を作ることで、DNAの1分子イオン電流信号が大幅に増強できることを新たに発見した。これにより、イオン電流計測によるDNAやタンパク質の1分子識別精度の飛躍的な向上が見込まれ、次年度以降に実施する集積ナノポアを用いたマルチオミクス計測でより多くの種類の分子が識別可能になる見通しを立てることができた。これは想定上の成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進捗しており、大きな障害となるような新たな課題も出てきていない。このため、今後の研究も当初の計画通り進める予定である。
|