研究課題/領域番号 |
22H01939
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下澤 雅明 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (40736162)
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研究分担者 |
井澤 公一 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (90302637)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
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キーワード | 磁気顕微鏡 / スピン流 / 走査型SQUID顕微鏡 / 走査型TMR素子顕微鏡 / 軌道ホール効果 |
研究開始時の研究の概要 |
スピン自由度を活用するスピントロニクスでは、スピン流に関連する新しい物理現象が発見され、省エネデバイスとして応用が期待されている。また電子には、スピン自由度と似て非なる軌道自由度も存在しており、軌道ホール効果などの軌道流を利用したオービトロニクスへの展開が見込まれている。本研究の目的は、多種多様な試料に適用できる高感度の磁気顕微鏡を用いることで、スピンホール効果/軌道ホール効果などの起源であるスピン流/軌道流が試料端に蓄積しているかどうかを直接評価できるようにすることである。
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研究実績の概要 |
本年度は、これまでに独自に開発した走査型SQUID・TMR素子顕微鏡の低温セルを改良・改造して、電流/熱流下でも精密に局所磁気測定が可能なシステムの構築に取り組んだ。 具体的には、低温セルの骨格にマコール素材を用いた円筒構造を導入することで、(1)環境振動の影響を受けにくくなると共に、(2)動作部分(ピエゾ素子)との熱膨張の親和性が良くなり、低温でも安定して試料表面を観察できるように改良した。このセルの大部分は、マコールを利用しているので、(3)金属特有の「電流遮蔽効果」や「外部への熱損失」が抑制され、電流/熱流を印加できるような設計にもなっている。 これらの改良点は、従来の磁気顕微鏡で浮き彫りになった問題点を反映したものである。 (1について)従来は走査範囲を拡大するため、セルには板状の支柱を利用したが、この構造だと振動に弱く、試料との距離に敏感なSQUID顕微鏡の画像が乱れる問題があった。新しい低温セルでは、板状構造と比較して2次元平面からの揺らぎに対して安定な円筒構造を採用した。 (2について)支柱を板状から円筒状に変更することで、走査範囲の減少という致命的な問題が発生してしまう。特に低温では、熱膨張によって試料台とSQUID台の相対位置が変化しまい、狙った位置で局所磁気測定ができない問題が頻発していた。そのため、低温セル全体で熱膨張率の温度依存性が揃うように配慮する必要があることが分かった。 (3について)金沢工大との共同研究で、周囲が金属で覆われている状況のもとで、交流電流が作り出す磁場を超高感度のSQUIDで精密測定したところ、印加した電流の周波数によって磁気信号が変化しており、金属特有の遮蔽効果が観測された。一般的に、数10 Hz以下の低周波領域では問題にならなかった遮蔽効果も、高精度の走査型SQUID顕微鏡で測定する場合には、考慮しないといけないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記(研究実績の概要)で報告した通り、電流/熱流下でも精密に局所磁気測定が可能な走査型SQUID・TMR素子顕微鏡システムの構築に取り組んだ。本年度は、低温セルの改良に取り組み、後1ヶ月ほどで正常運転に移ることができると考えている。新しい低温セルを作製する必要が生じてしまったことは予定外であったが、それ以降の研究進捗状況は比較的順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作製した測定システムを用いて、熱流が作り出すスピン蓄積の観測に挑戦する。さらに可能であれば、軌道流や磁気トロイダルドメインの直接観察にも取り組む。
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