研究課題/領域番号 |
22H01964
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
荒川 智紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (00706757)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
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キーワード | 2次元電子系 / 空洞共振器 / 誘電体共振器 / 円偏波マイクロ波 / 複素伝導度 / 円偏波 / マイクロ波 / 量子ホール効果 / スピン軌道相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、層状物質、酸化物界面、トポロジカル物質の表面など、特異な性質をもった2次元電子系が相次いで報告され、輸送現象の微視的な理解と次世代デバイスへの応用は重要なテーマとなっている。しかし、2次元電子系の輸送現象の研究には、主に直流極限での伝導度測定が利用されるため、電子のダイナミクスに関しては理解が進んでいない。 本研究では、ダイナミクスを直接反映する複素伝導度の革新的な測定手法を開発する。この手法は、非接触に複素伝導度の全成分を測定でき、物質系に依存しない測定を可能にする。さらに、この手法を駆使して、2次元電子系の物理定数の新たな評価法の確立・電子ダイナミクスの解明を行い、その有用性を実証する。
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研究実績の概要 |
通常、2次元電子系の輸送現象の研究では、直流極限での伝導度 (縦伝導度とホール伝導度)を測定する。しかし、この静的な手法では、電子のダイナミクスに関する情報が平均化によって消えてしまう。本研究の目的は、マイクロ波領域において複素伝導度の全成分を同時に測定できる非接触な複素伝導度の測定手法を開発することである。特に、空洞共振器と誘電体共振器の二種類の手法を開発し、ほぼすべての2次元電子材料に適応できる手法として確立する。 本研究で開発する独自な測定手法は、円偏波分解のマイクロ波摂動法を利用した方法であり、左右の円偏波モードを独立に測定することで、4自由度の情報(左右の共振周波数と半値幅の変化)が得られる。これらの値は回転座標表示の複素伝導度の成分と1対1で対応しており、全成分の同時測定が可能となる。 本年度は、円偏波モードと励振用回路の結合を制御する技術を確立し、円偏波空洞共振器法を17 GHzまで広帯域した。GaAs/AlGaAs界面に形成された2次元電子系における量子ホール状態での複素伝導度を精密に評価した論文が出版された。誘電体共振器の円偏波モード(TM11n-like)を用いた円偏波制御技術の開発を行った。スピン軌道相互作用の強いlnGaAs系の2次元電子系における複素伝導度の研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
スピン軌道相互作用の強いlnGaAs系の2次元電子系における複素伝導度の温度依存性を精密に評価し、通常のホール測定の結果との比較を行った。その結果、既存の理論では説明できない非自明な有効磁場の存在が明らかになった。この結果は、当初の予想を超えるものである。誘電体共振器の円偏波モード(TM11n-like)を用いた円偏波制御技術の開発では、円偏波電場モードに加えて円偏波磁場モードの励振に成功し、低温においてQ値10万を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、誘電体共振器の円偏波モードを用いた手法に次のような改良を加える。本年度に作製した誘電体共振器のQ値は10万程度であり、まだポテンシャルを引き出し切れていない。この原因は、円偏波モードと励振用回路の結合が強すぎることと遮蔽用に用いている金属による導体損失の寄与が大きいためと考えれる。そこで、共振器の構造を最適化した上で、劈開グラフェンをスタンプ法によってサファイア基板上に転写した試料の複素伝導度の検出を試みる。本年度、InGaAs/InAlAs界面に形成された2次元電子系の複素伝導度を測定し、スピン軌道相互作用に起因すると思われる非自明な結果を得た。この結果の物理的メカニズムを解明するために、周波数依存性の評価を行う。また、並行して理論モデルの構築を行う。
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